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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】古閑 裕×吉村秀樹×加茂啓太郎×吉田昌弘×西村 等(2005年7月号)- センチメンタル過剰なomoide座談会

センチメンタル過剰なomoide座談会

2005.07.01

「『プールサイド』は僕らのオリジナルよりいい」(吉村)

──『OMOIDE IN MY HEAD 2 ~記録シリーズ1~』のほうには、ブッチャーズと共に回ったツアー“ハラコロ”(『HARAKIRI KOCORONO』)からの音源('00年11月21日、長野JUNK BOX)も8曲収められていますね。

11_hisako.jpg西村:俺のブッキング・ノートには、幻となった“ハラコロ”のツアー・スケジュールの詳細がずっと残ってますからね。

吉田:『NUM-無常の旅』の後に予定していたんだけど、解散が決まってできなくなったんですね。'99年から毎年11月にやって、4回目は幻。

西村:BEAの森(裕史)さんに「これいつやるんですか?」っていつか訊いてやろうと思って(笑)。

──“ハラコロ”ツアーをやろうと最初に声を掛けたのはどっちだったんですか?

吉村:向井だよ。ツアー・タイトルを決めたのもそうだし。“KOCORONO”は判るけど、なぜ“HARAKIRI”なのか? っていうのが僕はずっと謎だったんですよ。

西村:SHELTERで観客席後方にビールケースを敷き詰めたのは?

吉田:あれは3年目。最後の“ハラコロ”ですね。後ろのほうのお客さんが見えづらいだろうと配慮した吉村さんのアイデアで。

西村:大変だったんですよ、あれ(苦笑)。あれ以降、あんなことやってないですから(笑)。

吉村:1年に1回くらいはSHELTERで新しい試みをやろうって言ってたんですよ。西村は当日になるまで本気にしてなくて、その日に僕が「何故ない?」って問い質して、それでようやく酒屋に走ったんです(笑)。お客さんが前のほうへ行くか、ビールケースのほうを陣取るか、どっちに行くか迷ってるのを見るのが面 白かったですね(笑)。ライヴハウスだと女の子って背伸びして観てるでしょ? 他のホールとかなら別にいいんだろうけど、“狭い空間のなかで違う見方はないものなのか?”っていう試みをやりたかったんですよね。

──SHELTERでの“ハラコロ”は特に、チケットも入手困難でしたからね。

吉村:店の周りにチケットを持ってないお客さんがたむろしててね。「吉村さん、どうにか入れませんか?」って言われて見るに見かねて、そのなかの男を捕まえて「この人たちにコーヒー奢れ」って、その時の全所持金2,000円を渡しましたよ(笑)。

──“ハラコロ”で一緒に回った時のナンバーガールのライヴはどうでしたか?

吉村:僕らメンバー全員が揃って人のライヴを観ることはまずないんですよ。それがあの時は、自然と3人とも観てましたからね。

吉田:ブッチャーズとツアーをやるたびに、メンバーは「ブッチャーズにはかなわないな」って言ってましたよ。「もっと頑張って存在感が出るようにならないと、ブッチャーズにはまだまだ及ばない」っていうような。「ブッチャーズの後にやるなんて考えられませんよ」っていう感じでしたよね。

吉村:途中から順番が変更になったんだよね。「別 に交互でもいいんじゃないか?」ってことになって。ナンバーガールも僕たちと一緒に回る頃には凄く勢いがあったし、お客さんも勢いがあったから、そういうところでは僕らもかなり気合いを入れてましたよ。

両バンドとも凄く気合いが入ってたから、本当にいいツアーだったと思いますよ。ナンバーガール・サイドから言うと、ブッチャーズの後にライヴをやるのは凄くやりづらかったんです(笑)。ブッチャーズの音圧と存在感にナンバーガールのお客さんも思い切り当てられちゃって。

吉村:凄く印象的なツアーでしたね、僕のなかでは。自分の調子が悪かったのは1回くらいで、その時に向井から「全部後に出たらどうですか?」って意見を受けたんですよ。

──『OMOIDE IN MY HEAD 2 ~記録シリーズ1~』のラストには、ブッチャーズの「プールサイド」のカヴァー('01年6月24日、日比谷野外音楽堂『騒やかな群像』)が象徴的に収められていますね。

吉田:野音のライヴも凄く良かったし、「プールサイド」の演奏もいいので入れたいなと思っていて。「プールサイド」は実際のライヴでも後半に演奏されることが多かったし、エクストラ・ボーナス的な感じで最後に収めました。

加茂:ナンバーガールのカヴァーは同じコードですか?

吉村:キーが違うんじゃないかな。カポをしてるはずだから。向井はきっと、あのサビ前のコードが好きなんですよ。僕は向井が一人で「プールサイド」を唄ってるMTRの存在を知ってますよ(笑)。

吉田:いつから「プールサイド」をライヴでやり始めたのかはっきり覚えてないんですけど、リハの時に向井君から「『プールサイド』をやろうと思って…」と突然言われて。「エッ? 『プールサイド』? 何のこと?」って答えたら、「『プールサイド』は『プールサイド』ですよ」って返されて(笑)。“そんな曲、ナンバーガールにあったかな?”なんて一瞬思ったんです(笑)。

加茂:ラモーンズの「I Wanna Be Your Boyfriend」やビーチ・ボーイズの「Do You Wanna Dance?」、フーの「So Sad About Us」なんかもカヴァーしていたけど、日本のバンドの曲をカヴァーするのは初めてでしたからね。

吉田:イースタンユース経由で森田童子の「たとえば僕が死んだら」を向井君が個人的にカヴァーしていたことはありましたけど、基本的に“ヘタなカヴァーはやらない”っていうバンドだったので、ブッチャーズをカヴァーすると聞いた時はかなり本気度の高いカヴァーをやるつもりなんだなと思ったんですよ。改めて聴くと、本当にいい曲ですよね。メロディ・メーカーとしての吉村秀樹の凄さがよく判りますよね。

──カヴァーされたご本人としてはどうですか?

吉村:感激しましたよ、普通に。“僕らのよりいいんじゃない?”って思いました(笑)。それは本当に思ってる。

吉田:当時、何人かの関係者から「あれ、ナンバーガールの新曲ですか? 凄くいい曲ですね」って言われましたから(笑)。

加茂:サウンドも歌詞の世界観も、あそこまで違和感のないカヴァーも珍しいですよね。向井君が如何にブッチャーズから影響を受けているかはあの1曲に象徴されてると思いますよ。ブッチャーズとナンバーガールが出会うべくして出会った、凄く象徴的な曲ですよね。紛うことなき名演ですね。

──そう言えば、『SAPPUKEI』収録の「ABSTRACT TRUTH」に“禅問答/吉村秀樹”という歌詞がありますが、ご当人はこの曲を聴いた時にどう思ったんですか?(笑)

吉村:ご当人はですね、何も知らされてなかったんです。CDを聴いてしばらくして「……俺じゃん!」って(笑)。メンバーの誰も、それまでに何も教えてくれなかったんですよ(笑)。

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