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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ロマンポルシェ。(2004年9月号)- ロマンポルシェ。は死体カメラマンみたいなもの。

ロマンポルシェ。は死体カメラマンみたいなもの。テレビは報道しないけど、殺された死体が現実に山ほどいるという。

2004.09.01

尾崎豊のレコードは憎悪の対象でしかない

──以前、掟さんは、ロマンポルシェ。は80's ニューウェーヴの暗黒面 を継承していると言ってましたよね。それで思うのが、ロマンポルシェ。ってニューウェーヴの暗黒面 だけじゃなくて、社会のダークサイドを表現しているような気がするんです。
 
掟:これは言っちゃいけないことかもしれないけど、氣志團とか素直にうらやましくてしょうがないんですよ。俺とは通 ってきた青春が違うから。メインストリームの青春をいけなかったから、恥だと思うことが決定的に違うんですよね。紡木たくのマンガや尾崎豊のレコードみたいな、青春の苦悩や人間愛が根底にある表現に当時から憎悪の炎を燃やしていたわけだし。それで当然のように根本敬先生のマンガを読み、空手バカボンのソノシートを聴いて、「やっぱりこっちの道だな」と勇気づけられてきた青春裏通 り住人だったんですよ。あちら側に行けなかったという気持ちはあるし、今後もあちら側に行けないことは間違いない。ロマンポルシェ。が爆発的に売れることなんて青春の質が違う以上、絶対ありえない。
 
──先日、JOJO広重さんが自分のレーベル(アルケミーレコード)から作品をリリースする基準として「今の社会に満足している人はお断り」と言ってたんですが、ロックのアンダーグラウンドってそういうもんかもなと思うんです。
 
掟:弱い者を救済するための歌だらけの世界ってことですよね。ああ、よくわかります。これは昔から言ってることですけど、弱い者のためには歌わないようにしてるんです。質の低い慰めでも弱った人間にはすぐ必要とされちゃうから。それをやるのは男として志が低いなと思う。弱い者を慰める音楽っていっぱいあるけど、俺はそういった種類のものは甲本ヒロトさんがいればあとはいらないと思ってる。あの人の言葉だけは慰めのキメが細かいから。むしろ俺は、人間の気持ちがわからない者のために、同じく人間の気持ちがわからない俺が、賛同するでもなく、そちら側にいるよとだけ表明したい。まあ非常に押しつけがましいことをやっているんですね。
 
──8曲目の「ガラスの30代」で、結婚したいアイドルのニャンニャン写 真がBUBKAに載ったことに絶望する30代独身男の悲劇が歌われていますが、こんな状況を歌にできるのって掟さんぐらいだと思うんです。例えるなら、報道カメラマンが現場の写 真を撮ったような。
 
掟:一方的な愛情でしか他人と接することができない人の側に立って、残酷な事実を切り取っているだけですよ。死体カメラマンみたいなもんです。テレビは報道しないけど、殺された死体が現実に山ほどいるという事実を低い温度で切り取っているだけ。写 真には写らない美しさ? ドブネズミみたいなもんですかね(笑)。
 
──結局ブルー・ハーツじゃないですか!
 
掟:弱い者のために何かを歌ってくれる人がちゃんといてくれてよかったなと思いますけど、その裏側で、人の心の弱さを持っていないが故に蔑まれる者たちに向かって歪んだラブソングという金玉 をなすりつけたい。まあ余計なお世話ですね。でも愛情ってね、押しつけるものですから。俺が思う韓国人的な美しい愛情表現、「俺が愛してやるからお前も愛せよ」っていう愛情のゴリ押しですよね。そんなようなものを目指しています。まぁ、誰にも必要とされないですけどね(笑)。
 
──共感する人もいると思いますが。
 
掟:いやいや、ロマンポルシェ。のCDや本が「窓際のトットちゃん」みたいに売れて、トットちゃん基金みたいにポルシェ基金を作ってアジアの恵まれない子供達にワクチンを送るぐらい儲かって始めて共感を得てるってことだから全然ダメですよ。でも、恵まれない子供達にワクチンは送れないけど、日本にくすぶる、BUBKAのアイドルニャンニャン写 真に憤っているような若者達への発奮材料として、ちょっとしたカンフル剤になるものぐらいは作っているかなとは思います。まあ、一瞬でも氣志團みたいなポジションに行けるかもしれないと思った自分が間違っていた。梶原一騎先生も言ってましたが「おのれの星を知れ」ということですよ。最近やっと自分の頭上の星が見えて迷いがなくなったところです。俺はくだらないこと以外やらねぇぞ、と。
 
──まあ、そんなロマンポルシェ。も今度ロフトでワンマン・ライブをやるわけですが。
 
掟:これはほんとに事務所に一番ナメられてるなと思うところですが、今までロマンポルシェ。のレコ発ライブって全部ロマンポルシェ。が前座だったんですよ! 信じられねぇ! 未だに恨んでますよ! まあ、今回実質上初のレコ発ワンマンですから、なんかおもしろいことやらないとお客さん呼べないですよねえ。何しようかな? 来た人全員に金の延べ棒を配るとか、そのぐらいのことしないとダメかなぁ……。
 
──完全に原価割れじゃないですか(笑)。
 
掟:そうか……じゃあ、金の延べ棒は無理だから、俺の大事な金の如意棒をプレゼントしましょうか? 入場時に一人ひとシゴキできるっていうのどうでしょう!? ダメ? ダメですよねえ……。
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