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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】54-71 (2003年8月号)- 現段階でのバンドの完成型を描出した蠱惑的作品

現段階でのバンドの完成型を描出した蠱惑的作品

2003.08.01

21世紀最大の謎かもしれない4人組・54-71が、メジャー契約するとは前世紀には思いもしなかったが、この夏には順調に2作目『true men of non-doing』をリリースする。7月、久し振りに54-71のライヴを見たら、随分芸風が変わっていて驚いたのだった。元々の芸風も言葉で説明するのが難しいので、それがどう変わったかを説明するのは更に難しいのだが、ワビサビ的緊張感は保ちながら、けれん味が増したと言っておこう。その要因が何かとメンバーに会いに行ってみれば、昨年11月に、ヴォーカル佐藤が交通 事故に遭い活動休止していたのだが、4月にはシカゴで新作『true men of non-doing』を録音、そのまま初のアメリカ・ツアーを行い、自信を深めてきた模様。いろんな意味で転機なのかとも思いつつ、全然転機じゃない気もする。いったいこの4人はどこへ向かっているのか、見ようとすればマンダラのように引き込まれるのみ。それにしても、前作はスティーヴ・アルビニのスタジオを使い、今回はジョン・マッケンタイアのスタジオを使っているにもかかわらず、エンジニアは前作に続きボブ・ウェストンを起用。スティーヴ・アルビニが率いるシュラックのベーシストでもあるボブと、54-71は相性がいいようだ。どんな音にしたいのか、というかどんな音にしたくないのか、という消去法で音を構築していくと、こういうことになるらしい。さてその新作『true men of non-doing』。曲間の信号音さえカットするストイックな音世界と、その上を漂う佐藤のヴォーカルが、あらぬ ところへ誘うような蠱惑的作品である。探るほど深みにはまりそうだが、これに込められた秘密を、ヴォーカル佐藤とベース川口の2人に解き明かしてもらおう。(取材・文●今井智子)

“こういう音になる”って見えちゃうのは面 白くない

01_1.jpg──佐藤さん、事故に遭って入院されてたそうで。

佐藤:入院、1週間ぐらいですけど。

川口:クルマがスピンして、フロントガラスが外れちゃって、そこから飛び出しちゃったんですよ。

佐藤:クラーク・ケントだったからダメだったんですね。

──えっ? スーパーマンだったんですか?

佐藤:いや、だからクラーク・ケントだったからダメなんですよ。

──あ、変身前だった、と(笑)。でもお元気な様子で何よりです。普段からライヴで身体を動かしているから、直りが早いのでは?

佐藤:むしろ遅い(笑)。でも休んだおかげで、体重が10キロ増えました。

──全然見えませんね。

川口:まだ痩せ過ぎですよねぇ。

──それだけ普段ハードに動いていた、ってことですねぇ。

佐藤:話を、いい方向じゃなくて、悪いほうに行きましょうよ(笑)。

──そう言わずに(笑)。で、元気になられて、レコーディングでシカゴへ。療養がてらって感じですか。

佐藤:ツアーもやったんで、全然療養にならなかったですね。

──前回に続きシカゴで録音したのは?

川口:音がいいんですよね。それだけです。

──自分達の求める音が録れる?

川口:ていうか、生音をちゃんと録ってくれる。(音を)いじることを考えてない人達だから(笑)。

──ボブ・ウェストンは、そこで鳴っている音を、そのまま録ってくれる、と?

川口:そうそう。前回も、彼に「どうして日本人なのにアルビニにしなかった?」って言われて。「予想のできる音になるのがイヤなんだよね」って話をして。そしたら、「ふーん、彼もいいよ」って(笑)。

佐藤:「ここは彼のスタジオだからね」ってスタジオのマネージャーみたいな人が言ってました。つまりアルビニのマネージャーでもあるらしいんですけど。

──シカゴ音響派のもとで、そういう音を作りたいとかいうワケじゃなかったんですか。

川口:最初は、レコード会社のほうで勝手に「スティーヴ・アルビニを押さえた」って言うから、「なんてことすんだよ!」って(笑)。で、どうせシカゴに行ってやるなら、ボブにしてくれって頼んだ。

佐藤:成り行き半分ですから。

──今回も、ジョン・マッケンタイアのスタジオなのに、彼は使わない(笑)。

川口:やってて、こういう音になるって見えちゃうのは面白くない。でも俺らは両方調子っぱずれだからね。ジョン・マッケンタイアじゃないし、アルビニじゃないし(笑)。

──誰もがやってるような音にはしたくないということなんでしょうけど、録る時に音は見えてるんですか。

川口:音までは見えてないですよ。曲は見えてても。だいたいこういう風にしたいというのはあるけど。それが、ジョン・マッケンタイアとかは、想像できちゃうから。

──新作を聴くと、今まで以上に音の分離がすごいというか、ベースの下にベードラがあって、上にドラムが乾いて鳴ってる…。

川口:それを目指してるんです。だから、前作も良かったんだけど……。音域をそのまま、入れ替えなしでCDにしたかった。頭の中で鳴っている通 りにしたかった。

──イメージをそのまま音で表したいというこだわりが、こういう音になり曲になる?

川口:そう…でしょうね、たぶん。自分達の思うロックとは、こうあるべき、という……。ギターのうるさいロックはもう聴き飽きたんですよ(笑)。ドラムって一番、音象を聴かせたい楽器じゃない? 立体的だし。なのにベースドラムがちゃんと聞こえないってのは、どういうことなんだ、と。

──このバンドを始めるに当たって、“うるさいギターが鳴ってるんじゃないバンド”っていうのが当初からあったんですか。

川口:今のメンバーになってから、そうですね。別に音出さなくてもいいじゃん、一杯出さなくても、って。

──一瞬、念写みたいなものかと思った(笑)。

川口:宗教みたいですね(笑)。「聞こえねぇのかバカヤロー!」とか(笑)。

佐藤:空中に浮いてるかもしれません(笑)。

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