少し目を閉じて、ゆっくり瞼を開いたら、あたしは32歳になっていた。
それくらいの時の速さで20代をかけぬけてしまったのだ。
20代の頃、あたしは一体何をしていたんだろう…
いつの間にかみんな大切な人と出会い、恋に落ちて、結ばれて
二人の子どもを授かり、家族が増えて、家を買って、
あたしは今でも一人で、なかなか体の関係が切れない男と今日も会い
別れてからインスタントラーメンを六畳のアパートで食べ、誰にもバレないように静かに涙を流す。
なんでこんな人生なんだろうって思う。
なんであたしだけ誰にも選ばれない人生なんだろうって。
みんなどうやって幸せになってるの?
誰にも選ばれないあたしはこのまま一人で生きていくのだろうか…
そう思うと一気に不安が襲ってくる。
一年前、阿佐ケ谷の七夕祭りが終わった次の日に祭りに行き損ねたあたしたちは祭りの終わったパールセンターを散歩した。
祭りの時にパールセンターの天井に吊るされていたハリボテは、片付けきれなくて地面に寝転がっていた。
それを見て「来年は一緒に七夕祭り行こうね。」って笑顔で言った
自分がすごく馬鹿に思える。 すごく馬鹿な大人だった。
今さら先の見えない恋なんてする暇はない。
なのにどうして好きになったら、簡単に諦めることができないんだろう。
多分、彼はもうあたしとの約束を忘れてしまってるだろう。
何も進めないまま、何も終われないまま、あなたとの二度目の夏がくる。