渋谷区にある小さなバー ありふれた恋人同士の「別れ話」をあたし達はしている。
女って怖い。自分でもそう思う。
あんなに祐介を好きだったあたしはどこに行ってしまったんだろう。
一ヶ月前、たった一度抱きしめられた男にまんまとハマって、その恋がどうにかなるかなんて分からないというのにあの日から祐介とは別れようと決めていた。
嘘をつくのが苦手だから浮気なんてものはできない。
別れ話をちゃんとしたいからお酒もほどほどにしてるのに、元カレは別れという現実から逃げるようにガブガブと酒を体に入れていく。もう元カレと言ってしまえ
別れ話を受け入れてもらえずに終電を逃し、もう午前3時。
彼女にフラレた男はこんなにも滑稽なのものだろうか。
何度も何度も首をかしげ、アルコールで目を重たくさせ呂律さえまわらない。
やっと言った言葉が…
「別れるなら謝れよ。俺に謝れ!!俺はこんなに好きだったのに!!」
は?
言葉を聞いてマジで別れようと決めた。
「どうもすいませんでした。」
感情のない顔で頭を下げた。なにひとつ心のこもってない謝罪。
付き合ってたときあんだけ浮気したのはどこのどいつだよ。
こっちが別れようと言ったら、俺に謝れよとか言えちゃう精神にドン引き。
10秒間ほど頭を下げつづけた。こんなんでいいならいくらでも謝るわ。
結局、謝ったのに許してもらえそうになかったので、無理矢理でも切り上げることにした。
「じゃあ。あたし帰るね。」
「え、、、待って。。」
「もう別れたんだから。じゃあね。」
あんなに好きだった男に、最後は目も合わせずにバーを出た。
明治通りに出てタクシーを探す。
渋谷の午前3時はたくさんの車が交差しあっていて、誰もが愛するひとのもとへ向かっているように見えた。
急がなきゃ…
あたしも愛する人が待っている場所へ。