オンド・マルトノという楽器をご存じだろうか。簡単に言えばいわゆる鍵盤型電子楽器ということになるのだが、1914年、吹き荒れた第一次世界大戦時、フランスの通信技師だったモーリス・マルトノが真空管の振動原理に興味を持ち、1928年、パリのオペラ座で披露演奏会が行なわれたのがオンド・マルトノの世界デビューだった。
そんなオンド・マルトノの世界的奏者の友人・ハラダ タカシくんが、久しぶりにソロ・コンサートを演るというので駆けつけた北沢タウンホール。このときのオンド・マルトノ八重奏の映像を観させてもらったのも貴重な体験だったのだが、オンド=音波とモーリス・マルトノをつけて、オンド・マルトノと名付けられたこの楽器と出会い、取り憑かれてしまった原田節~ハラダ タカシくん。世の御多分に洩れず、音楽の道へ進むのを親から反対され、では親の要求を満たせば良いかということで、慶応を卒業したのち、フランスのコンセルヴァトワールでオンド・マルトノ科首席卒業、故オリヴィエ・メシアン作曲の「トゥーラン・ガリーラ交響曲」のソリストとして活躍、そしてその後は世界的なオンド・マルトノ奏者として書ききれないこともあるので、検索でもしてもらいたい。繰り広げた演奏会の数々ほか、それは素晴しい歴史を積み上げていったハラダくんなのであった。
ひょんなことで知り合いとなり、いまでは大事な友人の一人でもあるそんなハラダくんが、このコロナ禍の中で久しぶりにソロ・コンサートを催すということなので、それは何をおいてもと駆けつけさせてもらったこの『ハラダ タカシ オンド・マルトノ 宇宙(そら)からの響き』なのであった。
そして先日、『オリヴィエ・メシアンの教室 〜作曲家は何を教え、弟子たちは何を学んだのか〜』という分厚い本を昼寝用の枕にどうぞとプレゼントさせてもらった頭脳警察のキーボードでもある おおくぼけい にもぜひこのオンド・マルトノを体験してもらおうと、オフィシャルスタッフ数人と駆けつけた北沢タウンホール。まずはオンド・マルトノとは何か? という講義をたっぷり聞かせてもらい、それはそれは貴重な1時間を経て、ロビーでファミリープラン(元セカンド)のジロウとか、『波紋の上の球体』でギターを弾いてもらった金子太郎らとも出会い、このタロウジロウの南極兄弟とも久しぶりだったもので休憩時間もあっという間に過ぎてしまい、会場入りを急かされる始末だった。