NHK『映像の世紀』のテーマソング「パリは燃えているか」で知られる加古隆さんが恩師オリヴィエ・メシアンに教わったパリ国立高等音楽・舞踊学校コンセルヴァトワールの仲間たちを訪ね歩く番組を観ていた。それは貴重な映像とエピソード。自分の大好きだったピエール・ブーレーズもメシアン先生の生徒だったと驚かされたり、素晴らしい番組だったよと、仲の良い、世界的にもオンド・マルトノ奏者として有名な原田節(はらだたかし)くんにさっそく感想を送った。
「あっ、それ観たかったなぁ。加古さんは先輩だけど、みんな当時の仲間たちです。じゃ、この本の紹介はしていましたか?」と一冊の本を紹介された。それが本著『オリヴィエ・メシアンの教室 作曲家は何を教え、弟子たちは何を学んだのか』(ジャン・ボワヴァン 著 平野貴俊 訳 小鍛冶邦隆 日本語版監修)。原田くんが尽力し、後輩たちに訳させた(?)貴重な書籍で加古さんのエピソードも多く出てくるというので、「いや、残念ながら紹介はされていなかったよ」と応えると、とても残念がっていた。
話は変わって、NHK大河ドラマで最高視聴率を誇った『独眼竜政宗』のテーマソングをオンド・マルトノで弾いていた原田節くんは、子どものころから音楽の道へ進みたくて仕方がないのにどの家庭も同じように親に許されず、では親の要求を呑めば自分の道へ進んでいいかと確約を取り、慶応義塾大学を卒業後、見事、パリでコンセルヴァトワールへ入学、加古さんと同じメシアン先生の下で学ぶことになるのだからすごい男である。
自分たちも友人のさるInterFMの仲間で作った『Oh! Boy』という番組を聴いているときに、まださほど近しい距離になかった原田くんが、パーソナリティーを務める番組の中で、ビートルズの「All My Loving」がかかった。その曲の紹介の時に、彼が、“ポールの歌にジョンの三連のギターが愛おしく寄り添い…”という表現をしたのである。これには驚いたというより、かつてこんな表現をする音楽関係者がいただろうかと胸が震えるほどの感動を覚え、急速に彼との距離が縮まっていったのである。
その後、群馬交響楽団とオンド・マルトノで絶品の音響効果で知られる“すみだトリフォニーホール”でやるといえば駆け付け、先日はよりによって、そのメシアン先生作曲の組曲をやるというので聴きに行き、頭からつま先まで立ち直れないほどの衝撃に打ちのめされたのだった。
最近、谷川俊太郎さんの息子さんの谷川賢作くんらとピアノ・デュエットで活躍したりもしているが、これはぜひとも、頭脳警察/アーバンギャルドのおおくぼけいともこの本を知った喜びを共有したいと思い、昼寝の枕にどうぞと誕生日に送らせてもらった。今度、おおくぼけい、原田節、谷川賢作も含め、懇親会と言わず、なんか鍵盤叩きなイベントで出会えればいいなと妄想してしまう今日この頃だ。