やはり、オーティス・レディングは良いです。どんな曲も素晴らしい、声、歌い方、雰囲気、上半身でリズムをとるあの踊り、情緒あふれる曲もあれば、踊って歌って楽しい曲もある、なにはともあれ、オーティスは最高です。
「ドック・オブ・ベイ」〈(Sittin' on)The Dock of the Bay〉なんて、とんでもない名曲で、これは誰もが認めるところだと思います。世界各国で、この曲をカバーしている人がたくさんいるということからも名曲極まりないというのがうかがえます。わたしの場合、日本だと、やはり原田芳雄さんの「ドック・オブ・ベイ」が印象的です。子どものころは、原田さんの歌だと思っていたくらいです。
「ドック・オブ・ベイ」は歌詞も最高です。おっさんが、ただただ海を眺め、己のことを回想しているだけの歌詞ですが、心にぐさりと刺さってきます。毎回、聴き終わると、小説を読んだような気持ちになります。自分は、まがりなりにも小説なんぞを書いているのですが、「ドック・オブ・ベイ」のような小説(歌詞ではない)を書いてみたい思うのです。海を眺めてるおっさんが、過去を回想して「たいして良いことなんてなかったけど、いまも大して良くねえべ」といった感じの小説です。きっと売れないでしょう。読みたい人なんていないでしょう。でも書いてみたい。
最近も、我が家は、オーティスにまみれています。三歳の息子が、オーティスの「I Can't Turn You Loose」のはじまりの部分を鼻唄で「テーテテッテ、テテテテテーテテテッテ」とやっているのです。「I Can't Turn You Loose」は、邦題だと「お前をはなさい」で、この曲、日本だと、『ものまね王座決定戦』のオープニングなどでも使われていたので、その印象のほうが大きいかもしれません。他にも高校野球などの応援でブラスバンド部がやっていることもあります。しかし息子の場合は、以前も書きましたが、狂ったように映画の『ブルース・ブラザーズ』を観ておりまして、その影響です。『ブルース・ブラザーズ』の場合は、カーチェイスのときやライブが始まる前に流れてきます。ちなみに、『ブルース・ブラザーズ』でギターを弾いているのは、スティーヴ・クロッパーで、オーティスと一緒に「ドック・オブ・ベイ」を作った人です。
『ブルース・ブラザーズ』のバージョンはインストなので、先日、「このテーテテッテ(I Can't Turn You Loose)には、歌もあるんだよ」と教えてオーティスのアルバム『ライブ・イン・ヨーロッパ』から「I Can't Turn You Loose」を聴かせました。すると大変気に入ったようで、また、激しく、朝から晩まで「テーテテッテ、テテテテテーテテテッテ」とやっています。この前は目を覚ました瞬間から、「テーテテッテ、テテテテテーテテテッテ」と歌っていましたので、重症です。
俄然、オーティスに興味を持った息子が、いろいろ訊いてくるので、オーティスの歌う姿のYouTubeを見せ、飛行機事故で亡くなったことを教えたのですが、彼の中では、まだオーティスは生きているようで、ずっと「オーティスはどこにいるの?」と訊いてくるので、「風呂屋にでもいるんじゃないか」と適当に答えたら、「お風呂屋に行く!」となりまして、先日、オーティスを探しに、息子とお風呂家へ行きました。
息子は、裸のおっさんを見て「あの人はオーティスかも」とずっとオーティスを探していましたが、いませんでした。似たようなおっさんはいましたが、完璧ではなかった。わたしも、日本の風呂屋で、オーティスを発見できたら、最高だな、などと思っていました。
結局、オーティスを見つけることはできませんでしたが、風呂屋の帰りも、二人で、「テーテテッテ、テテテテテーテテテッテ」とやって、メチャクチャな英語で「I Can't Turn You Loose」を歌いながら、家に帰ってきたのです。