Rooftop ルーフトップ

COLUMN

トップコラム戌井昭人の想い出の音楽番外地第八十一回「土曜日の夜、キラキラした街への憧れが詰まったEPOの「DOWN TOWN」」

十一回「土曜日の夜、キラキラした街への憧れが詰まったEPOの「DOWN TOWN」」

第八十一回「土曜日の夜、キラキラした街への憧れが詰まったEPOの「DOWN TOWN」」

2022.02.14

想い出の音楽番外地 戌井昭人
 
downtown_epo.jpeg
 
 最近、“シティ・ポップ”という言葉をやたら耳にします。どうも巷では“シティ・ポップ”が流行っているみたいです。「もう何年も前からだよ」「今さら遅い」と言われるかもしれませんが、わたしは、若い頃よりもアンテナを張っていないし、流行の受信力が大変弱くなっているにもかかわらず、“シティ・ポップ”がやたらと耳に入ってくるので、やはり相当流行っているのでしょう。「だからけっこう前からだよ!」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、衰えたアンテナの身上ゆえ、勘弁してください。
 
 とにかく「流行ってんでしょ“シティ・ポップ”!」、だからといって、どのようなものが流行っているのかよくわかりませんが、最近のバンドも素敵な“シティ・ポップ”を奏でているようで、これから、いろいろ掘り起こしてみたいと思います。
 
 でもって、わたしの中の“シティ・ポップ”といえば、EPOの「DOWN TOWN」に決定しております。これは、シュガー・ベイブの曲ですが、やはりEPOの「DOWN TOWN」でありまして、いま聴いても、心臓にズキンと突き刺さってくるのです。もちろん、シュガー・ベイブも最高だし、他にもいろんな人がカバーをしていて、土岐麻子のもワクワク当時を蘇らせるようで素敵だし、クレイジーケンバンドのも格好いいのです。でもやっぱりEPOに行ってしまうのは、『ひょうきん族』の影響です。『ひょうきん族』といっても若い人は知らないかもしれません。これは土曜日の夜8時にやっていた、お笑いテレビ番組でした。ビートたけしの「たけちゃんマン」と言えばわかるかもしれません。
 
 ちなみに、たけちゃんマンのテーマソング、「今日は吉原・堀之内、中洲・すすきの・ニューヨーク!」を唄っていたら、「どこでそんな場所覚えたの!」と大人に驚かれたことがあります。しかし、そのような場所を、そういう場所だと知るのは、それから何年も後のことになります。
 
 それで、EPOの「DOWN TOWN」は、『ひょうきん族』のエンディングに流れる曲で、「土曜日の夜は賑やか」「ダウンタウンへ繰り出そう」という歌詞もあり、当時小学生だったわたしは、大人は、『ひょうきん族』が終わってからダウンタウン(街)に繰り出して、遊ぶのだ、良いなぁ、早く大人になって酒を飲めるようになりたい、そして土曜の夜は遊びまわってやりたいと思っていたのです。つまり、週末の夜、キラキラした街への憧れがこの曲に詰まっているのです。しかし20代になり、酒を飲めるようになってからは、この歌のようなキラキラした街で酒を飲むことはなく、しょんべん臭い横丁で、酒を飲む人間になっていました。だから当時は、この曲のことはすっかり忘れていました。
 
 しかし、今になって、この曲を聴くと、やはり土曜の夜はキラキラ遊んでみたいと思えてくるのです。実際に遊びに行ってもまったくキラキラしないので困ってますが。とくに昨今、薄気味悪くて薄暗い街に、この曲が爆音で流れ、みんなキラキラと遊べる日が戻ってくることを願っているのです。そして、“シティ・ポップ”が流行りまくって、陰鬱なコロナをどこかに転がしてくれ! と思っています。でも、もうすでに流行りまくっているのか? “シティ・ポップ”。
 
戌井昭人(いぬいあきと)1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。
このアーティストの関連記事

EPO「DOWN TOWN」

COLUMN LIST連載コラム一覧

  • PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
  • おじさんの眼
  • ロフトレーベルインフォメーション
  • イノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』
  • ISHIYA 異次元の常識
  • 鈴木邦男(文筆家・元一水会顧問)の右顧左眄
  • レズ風俗キャストゆうの 「寝る前に、すこし話そうよ」
  • 月刊牧村
  • 「LOFTと私」五辺宏明
  • 絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
  • おくはらしおり(阿佐ヶ谷ロフトA)のホントシオリ
  • 石丸元章「半径168センチの大問題」
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の歴史のふし穴
  • 煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜
  •  朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」
  • 今野亜美のスナック亜美
  • 山脇唯「2SEE MORE」
  • 大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」
  • 能町みね子 新中野の森 アーティストプロジェクト
  • 能町みね子 中野の森BAND
  • アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生
  • 戌井昭人の想い出の音楽番外地
  • さめざめの恋愛ドキュメンタリー
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の ああ夢城
  • 吉田 豪の雑談天国(ニューエストモデル風)
  • ゲッターズ飯田のピンチをチャンスに変えるヒント
  • 最終少女ひかさ 但野正和の ローリングロンリーレビュー
  • 吉村智樹まちめぐ‼
  • いざゆかんとす関西版
  • エンドケイプの室外機マニア
  • 日高 央(ヒダカトオル)のモアベタ〜よ〜
  • ザッツ団地エンターテイメン棟
  • 劔樹人&森下くるみの「センチメンタル「非」交差点」
  • 三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン
  • ポーラーサークル~未知なる漫画家オムニバス羽生生純×古泉智浩×タイム涼介×枡野浩一
  • the cabs 高橋國光「アブサロム、または、ぼくの失敗における」
  • “ふぇのたす”ちひろ's cooking studio
  • JOJO広重の『人生非常階段』〜今月のあなたの運勢〜
  • マリアンヌ東雲 悦楽酒場
  • 大谷雅恵 人生いつでも初体験
  • ジュリエットやまだのイケメンショッキング
  • ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門
  • 岡留安則 “沖縄からの『書くミサイル』”「噂の真相」極東番外地編
  • 高須基仁 メディア論『裏目を読んで半目張る』
  • 田中 優 環境はエンタメだ!
  • 雨宮処凛 一生バンギャル宣言!
  • 大久保佳代子 ガールズトーーーク!!!!!
  • DO THE HOPPY!!!!!
ロフトチャンネル
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻