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トップコラムおじさんの眼第237回「ROCK CAFE LOFT 開店奮戦記~今までにこんなロック喫茶はなかった。是非一度遊びに来てほしい〜」

37回「ROCK CAFE LOFT 開店奮戦記~今までにこんなロック喫茶はなかった。是非一度遊びに来てほしい〜」

第237回「ROCK CAFE LOFT 開店奮戦記~今までにこんなロック喫茶はなかった。是非一度遊びに来てほしい〜」

2018.04.03

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ただいまオープンイベント真っ盛り

 シュミレーションもマーケティングも全くしないまま、ただ私の直感だけが頼りの企画だった。これが商売として成功するかどうかは全く考えないままだ。47年前に「ジャズスナックロフト」1号店が京王線の烏山に誕生したわけだが、その時代の貧しい青年たちはジャズやロックを聴きたくても、高いレコード盤(輸入盤は2,000円以上した。当時、大学卒の初任給は4万円ぐらい)をなかなか買うこともできず、ましてや四畳半と裸電球、煎餅布団の部屋にステレオセットなどとても高値の花だった。私も建築現場の仕事でもらった現金を掴んでレコード屋に走ったもんだ。こうやって手にしたレコード盤は、いくらクソ盤でも盤が擦り切れるくらい聞いて、それはそれは宝石のように愛おしかったもんだ。そこの隙間から、レコードジャケットやライナーノートとか、プチプチと雑音を運んでくるこの音楽を作り出したミュージシャンやスタッフの葛藤を垣間見たものだった。当時、流行っていた普通の純喫茶より割高なコーヒー代を払い(しかも、流行っている店は2時間経つとおかわりコーヒーまで要求された)、ロック喫茶に通い、音楽の知識を広めたもんだった。

 あれから40年余り、レコード盤がMDになり、CDとウォークマンが主流になり、今の若い子たちはほとんど無料で音楽をダウンロードして手軽に聞けるようになった。そんなことだから、当然CDは売れない。演者を始め音楽を作り出す優秀なスタッフは飯が食えないからどんどん音楽業界から去っている状態なのである。これではリスナーによる、音楽そして制作者たちへの尊敬と造詣は生まれないと思うのだ。

 なんだかそんな現代の風潮に抵抗したいという感覚が私の意識の中にあった。だからアナログレコードにこだわっているのかもしれない。


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オープン前日、関係者のレセプションパーティーで乾杯。

 

70歳過ぎての老人の挑戦は果たして……

 昨年、100日以上におよぶピースボートでの北極コース・世界一周航海をする最中、なぜか突然ロックにハマってしまって、自分が過去に愛したドアーズやツェッペリンやグレードフルデット、日本語フォークやはっぴいえんどばかりを毎日聴いていた。酒と海と読書と、そしてロックと満点の星空。吹き抜ける海風の中でとても充実した毎日を送っ

ていた。なぜか、「あの時代は素敵だった」と過去を思いだしながら、私の最後の仕事は40年前の「ジャズスナックロフト」の再生のような気がした。

 日常性の中でふっとロックを聴きたい。そう、40年前のように。ロック喫茶でコーヒーや酒を飲みながら、体にしみこむような爆音で聴いてみたい。ビョークの新譜や、オアシス、ニールヤングも聴いてみたいと思った。

 船を降りて歌舞伎町のロックバーをはしごした。しかし、ガラガラの店内、まるで活気がない。どこもほとんど新譜なんてない。まして日本語ロックなんてかからない。そんな風景を見ながら、「これは自分で作るしかない」と思った。


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一階はロック・フォークを居酒屋風な酒と料理を
楽しみながらロックを語るフロアーだ。
普段かかる曲は基本リクエストで成立させます。
レコードの持ち込み可。

 

その昔のロック喫茶&ジャズ喫茶

 高度成長期。薄暗い店内、女子高校生や大学生が爆音の中で身をさらしている。一杯の苦いコーヒで長居する貧乏学生たち。きっと銭にならないに違いない。店でかかるのは全てが洋盤だ。日本語ロックは全くかからない。みんなハードロックを体で受け止めているんだ。流行りのジャズ喫茶と違って、気取って文庫本なんて読みながらロックを聞くやつなんていない。爆音だからほとんどおしゃべりはできない。青年たちの目はキラキラしていたのを鮮烈に覚えている。なんとも懐かしい風景だ。

 40年前、中央線の吉祥寺~新宿を起点としてサブカル文化は光り輝いていた。そんな中、東京のいわゆるロック系ライブハウス(当時はそんな言葉もなかったが)が一つもなくなってしまった。そこでロフトは二軒目の店(西荻窪ロフト)をロック・フォーク系のラ

イブハウスとして誕生させた。それから日本語ロックははっぴいえんどを中心に続々と新

鮮なバンド群が全国各地で生まれるようになった。まだ私が20代、青年の頃の話。ロックは不良の音楽と言われ、市民権なんてなかった。しかし、音楽好きにとってはとても興奮する美しい時代であったし、その革命的なロックシーンに付き合えた私たちは幸せだったと思う。


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週末には毎週、DJ(ナビゲーター)を招請して「ロック講座」がある。
(19時〜21時)特別ライブチャージは取らない方向です。
居酒屋タイムでは突き出し400円がかかります。

 

喋るロック喫茶&居酒屋

 映画でもライブでも同じで、その公演を観終わって感動したら誰かと語り合いたい。ライブハウスはライブが終わると、もうみんな家路に急いでしまう。自分の感動を、そこにいるみんなと共有できるような空間がほしいと思った。何も特別なことをやろうというのではない。70年代に流行ったロック喫茶&居酒屋をできる限り再現したいと思ったのだ。

 ROCK CAFE LOFT。400円のコーヒーの香り、12時から18時は喫茶店営業。店に入ればロックやフォークがかかっている。店員が、「あなたの好みの曲をかける」と言ってリクエストを取りにくる。一階ではロックを聴きながら、なぜかみんなが喋っている。ちょっと静かに聴きたい人は二階の「ロック道場」(15名ほどが入れる)に行くといい。ここでは高性能スピーカーから爆音で音楽が流れている。

 休祭日前の9時~21時は、ロックのうんちくを語りたい人がレコードをかけて喋り始める。居合わせたお客さんとトークが始まる。だいたいみんな音楽が大好き。だから思い出の盤とか、その音楽にまつわる苦労話とか持っている人は多い。この場で得るものは計り知れないくらい多いはずだ。


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15人ほど入れる二階には<ROCK HILLS~ロック道場>があり
誰にも邪魔されず爆音に身を委ねる空間の存在。
そこにはロフト47年間のロック演者の歴史ミュージアムもある。

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