早咲きの河津桜
<春を迎える絶景と自然いっぱいの三浦海岸>
海が大好きな私はこのところ三浦海岸の紺碧の海を中心に、三浦のあれこれにはまっている。今回のテーマは、一足早く春の息吹を感じるためにやってきた三浦海岸の早咲きの河津の桜だ。品川から京浜急行に揺られて約1時間で京浜三浦海岸駅に着く。もう海岸駅広場には十数本の河津の桜が咲き誇っていた。日曜日は桜を見に来る観光客でいっぱいだ。河津の桜といえば名前の通り伊豆の河津が有名だが、ここ京浜浦海岸駅から10分くらい歩くと公園があり、桜が豪快に咲いている。この河津の桜は開花してから一ヶ月は咲きを誇るそうだ。
三浦の丘の上の畑からの富士
<三浦海岸の魅力>
三浦海岸は自然がたくさん残っていて、人は少なくゴミがなく、海は青い。海岸線は岩場が多く泳ぎが出来ない代わりに多くの海岸植物が自生している。海岸は磯や砂浜、岩場、海の色と様々な表情を見せる。海猫の鳴き声が聞こえ、耳をすませば波の音、夕日が沈む頃、潮風の香りと猫の海向こうにそびえる富士山のシルエットをバックに、相模湾を眺めて三崎港名産マグロを食べる。近くには城ヶ島、天神島、笠島、さらには葉山、逗子、鎌倉が控えている。三浦大根、スイカ、オニカサゴ、朝市と名物はいろいろあるし、ちょっと横道にそれると畑や海の景色が素晴らしい。
春の海
<世田谷の芦花公園、砧公園、等々力渓谷から二子玉へ>
私が住む世田谷界隈にも緑に包まれた素晴らしい場所がたくさんある。桜上水という地名にふさわしく、春になるといたるところに桜の花が咲き誇り、街角にはガーデニングの花が咲き誇るのだ。私は春の風に誘われ、自転車に飛び乗る。まずは環八沿いの徳富蘆花の公園へ。黄色い菜の花畑に囲まれている数本の河津の桜を見て、一路都立砧公園に行く。戦時中は都心を守る防空緑地、戦後はゴルフ場があった広大な公園だ。期待して見に行った梅はまだ蕾に近かったので公園をスルーして等々力渓谷に向かう。なんとここは都内唯一、渓谷がある街なのだ。世田谷のど真ん中でありながらも、想像以上の静かな深い緑の中にこの渓谷はある。マイナスイオンをたっぷり浴びながらしばらく歩くと小高いところに茶屋があり、そこで清流の流れる音を聞きながら静かに抹茶をいただく。異次元的な川沿いの静かな小道。全長1キロに及ぶ渓谷のその先は、鮎が住むという清流多摩川に行き着く。
等々力渓谷沿いの小道
<やはり多摩川はいい〜二子玉は今やトレンディ都市だ>
子供の頃から慣れ親しんだ多摩川が我が心のオアシスという気持ちでいっぱいだ。多摩川沿いを歩くのが好きな私は、京王線の京王多摩川から小田急線の和泉多摩川を越して、田園都市線の二子玉までをよく歩いた。徒歩で約3時間の距離だ。
多摩川の風に吹かれながら河川敷を自転車は走る。再開発で今や人気絶頂の街と化している二子玉は元気だ。川向こうは川崎、巨大なビル群を左手に見ながら進むと素敵な一軒家のテラス付きカフェやレストランがたくさんある。多摩川公園の土手沿いにはスタバまである。二子玉公園はまだ出来が中途なのかもしれない。さらにツタヤ家電の圧倒的な斬新さには1時間近くもうろつく始末だ。
<後期高齢者にはもうすぐ>
私は小ぎれいなレストランのデッキで海を見てハイボールを飲んでいた。そして青春の数々を思い起こす。
もう老いがどんどん近くなっている。老人の切実な夢を見ている。いくあてのない意識は過去を思い出すばかりだ。私の同年代の友人達はどんどん亡くなってきている。次に消えるのは自分の番だと強迫観念に襲われる。
このままなんとなく歳をとっていくのか。なんだか耐えられない気分だ。
「これで男の一生は終えていいんですか? 何か忘れていること、心残りはないのですか?」と様々な場面で海は問いかけてくる。いつしか時間が逆戻りをしている。
あの70年代の激動の季節。とてつもなく面白かった大学のバリケードの中の青春と恋に思いを寄せている。ふっとこれではいけないと思う。もう甘い体験や、ささやかな恋物語などすっかり遠ざかっているのを感じている。
海風は私の為に椅子を引いてくれた。
「あたしゃもう70歳も過ぎてしまった。やりきれんよ」
海の音はますます激しくなっていく。
「結構飲むんだよね」
「いつも飲むけど今日は更に飲んでいるな」
「結婚しているから寂しくないかと言えば、決してそんな事はなく……。」
無造作に森田童子がかかっている。