Rooftop ルーフトップ

COLUMN

トップコラムおじさんの眼第191回「大阪で息をする」

91回「大阪で息をする」

第191回「大阪で息をする」

2014.06.01

はたしてLoft PlusOne Westは成立するのか?

 相変わらず、Loft PlusOne Westオープンとともに居続けている大阪にハマっている。
 私は大阪に親しい友人が殆どいない。大阪に居を構えて4カ月、今さらながら「ここまで大阪のことを知らないのか?」と絶句する毎日。地理的にも文化的にもまだまだ、全くの不案内だ。
 東京で活躍する優秀な関西人はたくさんいるが、東京人が大阪で活躍しているという話はあまり聞かない。あまりにも東京一極集中が激しすぎるからなのだろうか。しかし、京都や大阪のある関西は、古来から日本の中心だったはずだ。吉本はじめ、お笑い以外の大阪カルチャーの実態ははたして─。
 
191_01.jpg
通天閣下の新世界は巨大広告の嵐
 

「関西弁も喋れへんで、大阪でええかっこすんな」

 私見だが、この数年、日本は東京を中心にかつてないトークブームにあると感じている。トークイベントは、音楽系のイベントと比べて、防音はじめ設備投資のお金もそこまで要らない。アイデアさえあれば、誰でも開催できる。個々人が好きな、興味のある人を招き、テーマを決めて話を聞く。その場所は、カフェでも書店の片隅でも、ガレージや教会でもいい。
 そんなわけで、我々もあこがれの大阪に、とにかく店を構えてみた。「半年で撤退しても構わない」という無謀な(?)挑戦だ。「東京と大阪をトークで繋ぐ」という命題を持って、ただただがむしゃらにオープンにこぎ着けた。
 4月の開店から数カ月のイベントスケジュールには、大阪発のイベントがほとんどない。大半は、東京のロフトグループで行なっているイベントの出張版だ。演者やスタッフの交通費、宿泊費もバカにならない。リスクもたくさんあるし、もっともっと現地発のイベントを増やし、大阪に土着化する必要があると思っている。
 出店にあたっては、大阪在住の人たちから様々な意見やアドバイスをもらった。
 「お金払ってトークを聞く? そんな酔狂な大阪人はほとんどいないよ。トークなんか無料が当たり前。誰も行かないよ」
 「大阪で本気でビジネスをなさるのなら、ひとついいことを教えましょう。大阪人は“東京と比べられること”を虫酸が走るほど嫌います。その街に循環するお金に関わるおつもりなら、あなたの中の東京を捨ててからでないと、ずっとNOを突きつけられると思います」
 「関西弁も喋れへんで、大阪でええかっこすんな」
 ……う〜ん、むずかしいな。
 
191_02.jpg
どこまでも続く鶴橋のマーケット群
 

Twitterでカルチャーショックをつぶやくと抗議が来た

 しかし、大阪での生活は毎日刺激的で面白い。大阪には、何か強固なバリアがあって、よそ者や他の地域の文化の流入を嫌う傾向がある。だから逆に、どこの街に行っても新鮮なカルチャーショックを体験してしまう。
 そんな体験談を面白おかしくTwitterでつぶやいているのだが、ときどき、それらに対する大阪の人からの反論を頂く。例えばこうだ。
 大阪の有名地下鉄では、無遠慮に車内アナウンスに広告が入る。「次はなんとか病院前、御用の方は下車ください」なんて聞くと、「おいおい、これは田舎のバスか?」とつい、つぶやいてしまう。他にも、「無灯火の自転車の大群が一方通行を逆走してくる」「不思議なくらい安いおにぎりや水」「突然、自転車の売店が出現し消える街」なんて書くと、どうも大阪の人にとっては面白くないらしい。私としては、大阪で感じたありのままを、率直に書いているだけなのだが。
 
191_03.jpg
これがかの有名なあべのハルカス
 

自転車に乗り大阪を駆け巡る

 Loft PlusOne Westがあるのは道頓堀の近く、ちょっと危険な匂いがする繁華街、宗右衛門町。私の仮住まいのあるマンスリー・マンションは中央区。ハングル語と中国語が街角で交錯している。
 もっと大阪を見るために、自転車を購入した。毎日時間があると、自転車を漕いで大阪中を探索して回っている。食い物はおいしく安いし、どこに行ってもみんな親切だ。これは間違いなく東京にはない。
 あべのハルカスには興味はない。今一番気に入っているのが鶴橋と新世界だ。
 鶴橋には、もう東京では見かけなくなってしまった、巨大な闇市風マーケットが残っている。300軒近くあるだろうか?
 通天閣のあたりの新世界もいい。SPAワールドは日本で一番豪華で大きなスーパー銭湯だ。なんと入場料1000円で、何カ所もある湯船やサウナ室を利用できる。朝日劇場で行なわれている大衆演劇と串焼き専門店の数々。
 少し足を伸ばすと、その先には元遊郭の新地。オランダの「飾り窓の女」のようだと思った。なんと美人が多いことか?
 少し遠出をするのも楽しい。その昔の商人の街・堺にある、仁徳天皇陵古墳に行ったりしてみた。
 
 こうして「わ〜っ、大阪は面白い」と言っているうちに、もうこちらに来て4カ月も経ってしまった。住民票を移してしまおうかと思うくらい、ハマっている。東京に帰りたくない、いっそ大阪でマンションでも買って住もうか、なんて思いもある。
 雑多で異国的な都市空間は実に面白い。だが、大阪市内は川は多いが緑がほとんどない。近くにゆっくり散策できる公園がない。これが唯一の不満かな。さて、いつまで続くのか大阪生活……。
 
このアーティストの関連記事

COLUMN LIST連載コラム一覧

  • 特派員日誌
  • PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
  • おじさんの眼
  • ロフトレーベルインフォメーション
  • イノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』
  • ISHIYA 異次元の常識
  • 鈴木邦男(文筆家・元一水会顧問)の右顧左眄
  • レズ風俗キャストゆうの 「寝る前に、すこし話そうよ」
  • 月刊牧村
  • 「LOFTと私」五辺宏明
  • 絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
  • おくはらしおり(阿佐ヶ谷ロフトA)のホントシオリ
  • 石丸元章「半径168センチの大問題」
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の歴史のふし穴
  • 煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜
  •  朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」
  • 今野亜美のスナック亜美
  • 山脇唯「2SEE MORE」
  • 大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」
  • 能町みね子 新中野の森 アーティストプロジェクト
  • 能町みね子 中野の森BAND
  • アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生
  • 戌井昭人の想い出の音楽番外地
  • さめざめの恋愛ドキュメンタリー
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の ああ夢城
  • 吉田 豪の雑談天国(ニューエストモデル風)
  • ゲッターズ飯田のピンチをチャンスに変えるヒント
  • 最終少女ひかさ 但野正和の ローリングロンリーレビュー
  • 吉村智樹まちめぐ‼
  • いざゆかんとす関西版
  • エンドケイプの室外機マニア
  • 日高 央(ヒダカトオル)のモアベタ〜よ〜
  • ザッツ団地エンターテイメン棟
  • 劔樹人&森下くるみの「センチメンタル「非」交差点」
  • 三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン
  • ポーラーサークル~未知なる漫画家オムニバス羽生生純×古泉智浩×タイム涼介×枡野浩一
  • the cabs 高橋國光「アブサロム、または、ぼくの失敗における」
  • “ふぇのたす”ちひろ's cooking studio
  • JOJO広重の『人生非常階段』〜今月のあなたの運勢〜
  • マリアンヌ東雲 悦楽酒場
  • 大谷雅恵 人生いつでも初体験
  • ジュリエットやまだのイケメンショッキング
  • ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門
  • 岡留安則 “沖縄からの『書くミサイル』”「噂の真相」極東番外地編
  • 高須基仁 メディア論『裏目を読んで半目張る』
  • 田中 優 環境はエンタメだ!
  • 雨宮処凛 一生バンギャル宣言!
  • 大久保佳代子 ガールズトーーーク!!!!!
  • DO THE HOPPY!!!!!

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻