はたしてLoft PlusOne Westは成立するのか?
相変わらず、Loft PlusOne Westオープンとともに居続けている大阪にハマっている。
私は大阪に親しい友人が殆どいない。大阪に居を構えて4カ月、今さらながら「ここまで大阪のことを知らないのか?」と絶句する毎日。地理的にも文化的にもまだまだ、全くの不案内だ。
東京で活躍する優秀な関西人はたくさんいるが、東京人が大阪で活躍しているという話はあまり聞かない。あまりにも東京一極集中が激しすぎるからなのだろうか。しかし、京都や大阪のある関西は、古来から日本の中心だったはずだ。吉本はじめ、お笑い以外の大阪カルチャーの実態ははたして─。
通天閣下の新世界は巨大広告の嵐
「関西弁も喋れへんで、大阪でええかっこすんな」
私見だが、この数年、日本は東京を中心にかつてないトークブームにあると感じている。トークイベントは、音楽系のイベントと比べて、防音はじめ設備投資のお金もそこまで要らない。アイデアさえあれば、誰でも開催できる。個々人が好きな、興味のある人を招き、テーマを決めて話を聞く。その場所は、カフェでも書店の片隅でも、ガレージや教会でもいい。
そんなわけで、我々もあこがれの大阪に、とにかく店を構えてみた。「半年で撤退しても構わない」という無謀な(?)挑戦だ。「東京と大阪をトークで繋ぐ」という命題を持って、ただただがむしゃらにオープンにこぎ着けた。
4月の開店から数カ月のイベントスケジュールには、大阪発のイベントがほとんどない。大半は、東京のロフトグループで行なっているイベントの出張版だ。演者やスタッフの交通費、宿泊費もバカにならない。リスクもたくさんあるし、もっともっと現地発のイベントを増やし、大阪に土着化する必要があると思っている。
出店にあたっては、大阪在住の人たちから様々な意見やアドバイスをもらった。
「お金払ってトークを聞く? そんな酔狂な大阪人はほとんどいないよ。トークなんか無料が当たり前。誰も行かないよ」
「大阪で本気でビジネスをなさるのなら、ひとついいことを教えましょう。大阪人は“東京と比べられること”を虫酸が走るほど嫌います。その街に循環するお金に関わるおつもりなら、あなたの中の東京を捨ててからでないと、ずっとNOを突きつけられると思います」
「関西弁も喋れへんで、大阪でええかっこすんな」
……う〜ん、むずかしいな。
どこまでも続く鶴橋のマーケット群
Twitterでカルチャーショックをつぶやくと抗議が来た
しかし、大阪での生活は毎日刺激的で面白い。大阪には、何か強固なバリアがあって、よそ者や他の地域の文化の流入を嫌う傾向がある。だから逆に、どこの街に行っても新鮮なカルチャーショックを体験してしまう。
そんな体験談を面白おかしくTwitterでつぶやいているのだが、ときどき、それらに対する大阪の人からの反論を頂く。例えばこうだ。
大阪の有名地下鉄では、無遠慮に車内アナウンスに広告が入る。「次はなんとか病院前、御用の方は下車ください」なんて聞くと、「おいおい、これは田舎のバスか?」とつい、つぶやいてしまう。他にも、「無灯火の自転車の大群が一方通行を逆走してくる」「不思議なくらい安いおにぎりや水」「突然、自転車の売店が出現し消える街」なんて書くと、どうも大阪の人にとっては面白くないらしい。私としては、大阪で感じたありのままを、率直に書いているだけなのだが。
これがかの有名なあべのハルカス
自転車に乗り大阪を駆け巡る
Loft PlusOne Westがあるのは道頓堀の近く、ちょっと危険な匂いがする繁華街、宗右衛門町。私の仮住まいのあるマンスリー・マンションは中央区。ハングル語と中国語が街角で交錯している。
もっと大阪を見るために、自転車を購入した。毎日時間があると、自転車を漕いで大阪中を探索して回っている。食い物はおいしく安いし、どこに行ってもみんな親切だ。これは間違いなく東京にはない。
あべのハルカスには興味はない。今一番気に入っているのが鶴橋と新世界だ。
鶴橋には、もう東京では見かけなくなってしまった、巨大な闇市風マーケットが残っている。300軒近くあるだろうか?
通天閣のあたりの新世界もいい。SPAワールドは日本で一番豪華で大きなスーパー銭湯だ。なんと入場料1000円で、何カ所もある湯船やサウナ室を利用できる。朝日劇場で行なわれている大衆演劇と串焼き専門店の数々。
少し足を伸ばすと、その先には元遊郭の新地。オランダの「飾り窓の女」のようだと思った。なんと美人が多いことか?
少し遠出をするのも楽しい。その昔の商人の街・堺にある、仁徳天皇陵古墳に行ったりしてみた。
こうして「わ〜っ、大阪は面白い」と言っているうちに、もうこちらに来て4カ月も経ってしまった。住民票を移してしまおうかと思うくらい、ハマっている。東京に帰りたくない、いっそ大阪でマンションでも買って住もうか、なんて思いもある。
雑多で異国的な都市空間は実に面白い。だが、大阪市内は川は多いが緑がほとんどない。近くにゆっくり散策できる公園がない。これが唯一の不満かな。さて、いつまで続くのか大阪生活……。