相変わらず原発の話だ。このコラムを読む読者諸氏もいい加減に原発の話は読みたくないと思っていても、そうは問屋が卸さない。この日本を襲った未曾有の危機から、絶対目を背けてはならないのだ。
事故を起こした福島原発から出される放射能は、日本全国を誰彼無しに襲い続けている。もちろん東京も例外ではない。この状態がもう150日以上続いている。チェルノブイリは、事故発生から10日で放射能漏れは収まっているのに、福島では、今なおあれだけの被害が出ているのを考えると、日本は確実にヤバい状態なのだ。
「怖いから考えない方が健康にいい」では何も解決に向かわない。放射能の脅威は地球上に何万年も残り、遺伝子によって子孫代々まで及ぶ。何度も言うが、日本に住んでいる以上、この事実から逃げられないのだ。一番被害が及ぶのは、将来の日本を担う小さな子供達と、子供を産もうとする若い女性達なのだ。
今回、東日本を襲った大クライシスは、地震、津波、そして原発事故のトリプル災害だ。特に放射能汚染被害は、福島を中心に日本全国各地にホットスポットが無数に出来ている。福島以外大丈夫だと思っているとしたら大間違いだ。
菅下ろしは原発村とマスコミが作った罠?
まさか「もう原発事故は収束しつつある」なんて、政府発表を信じている人はいないと思うが、国民一人一人が自分でちゃんと判断しないと大変なことになる。政府や東電発表を垂れ流しているマスコミ報道と御用学者に対して、福島の人々を中心に、不信の念は渦巻いている。まさに戦前の大本営発表と同じで、被害は過小評価し、本当にヤバいことは徹底的に隠し続けているのだ。
この夏、政権を担う民主党の代表選出馬を表明した奴らも、原発容認派が多いようだ。すでに国民世論の80%近くが脱原発に傾いているというのに、「脱原発は民主党の政策ではありません」と岡田幹事長は言う。菅総理の後を継いで、脱原発を唱える政治家がなかなか見えてこないところに、今の日本の悲劇がある。もしかして菅総理降ろしは、原発村とマスコミが仕組んだ巧妙な罠だったのか?
LOFT PROJECT災害復興支援チームは被災地を走り回った。ロフトも色々頑張ったのだよ
「もうすでに時遅し」なのだろう
3月11日以降に大量に飛散した放射性物質や高濃度汚染水が、格納容器から漏れて海洋に流れていったことを、政府・東電は3カ月以上経った今頃になって、「実はメルトダウンだった」とか「本当はメルトスルーしていた」とか、情報を出してきた。
あれだけ「直ちに健康に影響の出る状態ではない」と言い続けて来たのに、8月18日には、1000人の福島の子供達の検査で約45%が甲状腺被爆しているという恐ろしい結果が出てきた。それでも政府発表では、相変わらず「直ちに健康に害がある線量ではない」と言い切り、多くの国民、特に福島の人を被爆させてしまう罪を犯している。
「もうすでに時遅し」(by上杉隆)なのだろう。日本経済は縮んで行く一方だし、これから起きる原発被害訴訟は日本だけでは済まない。海洋汚染までしてしまっているわけだから、海外から途方もない請求が来たっておかしくない。日本の食料輸出は全くダメ、工場は海外に移転で空洞化、少子高齢化で働き手もいない。次代を担う子供達はガンに冒され……。「現在でも途方もない借金を抱えている日本は、これからどうなるんだろう?」と思うのは私だけだろうか?
「右から考える脱原発デモ」で、統一戦線義勇軍が作ったプラカード。右翼らしからぬキャラだった
100ミリと10ミリを間違えました
「大丈夫。炉心溶融はあり得ない」(東京大学・関村直人)「放射能の影響実はニコニコ笑っている人には来ません。くよくよしている人に来ます」(福島県放射線リスク管理アドバイザー・山下俊一)「原子力発電所の事故による健康リスクというのは全く考えられないと言ってよろしいかと思います」(長崎大学教授・高村昇)「ええ、回転機であるタービン等は振動に弱いからタービンの停止を急ぎます。すると蒸気がいらなくなるから、制御棒を急速挿入して原子炉もすぐに停止します」(原子力委員長・近藤俊介)
御用学者達の珍言、迷言を、ここに改めて記しておこう。なんといっても凄いのが山下俊一。この男は、「年間100ミリシーベルトは人体に全く問題ない」とさんざんあらゆる所で言っていながら、最近、「実は100ミリと10ミリを間違えました」と、東電のホームページの片隅に小さく一行載せている。何とも厚顔無恥で無神経極まりない人間だ。これでも科学者なのだろうか。
秋の気配も感じられる8月末。相変わらず、原発や日本の将来を考えると憂鬱になる。こんな日々では、会社(=ロフト)の今後に希望だって持てない。「日本はもう終わりだ」という声が聞こえる。放射能だって、「俺はもう、60代後半だからいいけどさ」と居直って、何もしないで静観したいが……。