相変わらずこの大災害に振り回されている
ついに関東地方も梅雨に入った。気が滅入りそうなどこまでも重く垂れ下がる今にも泣き出しそうな空。我が家の小さな庭にあるあじさいが小雨の中色鮮やかに幾つもの花をつけた。3月11日の大震災と原発事故があってもう100日を過ぎた。この間、私はなんかやたらと興奮し、そして落ち込んでいた。夜中にTwitterやUSTなどで福島原発の刻々と進む危機を知り、被災地の倒れかけている人々を見ると、涙は出るし、何か絶望的になり、更には怖くなって夜も眠れない日々を過ごした。私は傘もささずに、放射能に汚染されているであろう新宿歌舞伎町を歩く。女子高校生が屈託もなくミスタードーナツでお化粧に余念がない。若い大学生の男達は一緒にいる友達との会話もなくゲームに夢中だ。居酒屋に入ればまるでいつもと変わりなくサラリーマンが他愛も無い話に興じている。彼らの会話に原発や被災地の話題は全くないように見えた。
「おかしいな、私の頭はもうこの地震と津波の被害と原発のこれから予想される圧倒的な危機で一杯なのに。東京の市民は一体何を考えているのだろう?」と不思議に思うことしきりなのだ。名古屋や大阪に行くと更にこの災害は他人事になると言う。それにしても先日ボランティアに行った石巻や女川の被災地との圧倒的な温度差はなんだろうと、不思議な感覚で夜の街を歩いた。今こそ国民が一致団結してこの国難に当たらねばならないのに、一体どうなっているんだって思うのは私だけだろうか?
私はあの3月11日以来、何度も被災地で被害に会った人達を思い、原発事故で故郷を捨てなければならない先行きが深刻な人達を心配し、朝から晩までネットの情報にかじりつき、年老い、いつ死んでもおかしくない自分を鑑みながら「この国難、私に今出来ることはなんだろう」との思いは今も続いている。
デモ出発前、新宿中央公園での集会の1コマ。仲野茂率いるゲタカルビが、「東電・イズ・バーニング」を熱唱
4.10高円寺、5.7渋谷、そして6.11新宿・原発やめろデモ
4月10日の高円寺「原発やめろデモ」は素人の乱とロフトグループ周辺から計画が立案された。素人の乱も私達も少人数で、政治組織でも市民団体でもなんでもない。双方とも結構いい加減なのだ。思想的にも別に革命を起こそうとする集団ではない。「素人の乱」とは高円寺・北中通りというあまり人の来ない商店街の一番奥で、リサイクル店や居酒屋や古着屋なんかをやっている若者達の集団だ。3月下旬に素人の乱主宰の松本哉から電話があり「どうもこの福島原発はヤバイらしい。こんな危険なものはいらない。抗議のデモでもするか?」から始まり、そのデモは中央線高円寺で行うことになった。私はまあ、千人も来れば大成功ぐらいに思っていたが、この原発抗議デモの広がりはそれは私の足が震えるくらいもの凄い勢いで拡大再生産し、当日は1万5千人も集まってしまった。そして二回目の「5.7渋谷デモ」も雨にもかかわらず前回と同様、1万5千人が集まり大成功だった。
このデモは通称「素人の乱方式」と呼ばれるやり方で行われた。いわゆるデモの実行委員会は立ち上げず、やりたい人がやりたい事を各自の責任で行うという、中央不在/分散型の運動だ。私たちロフトは、集会のステージ回り、PAの用意、バンドや出演者の交渉、プレスリリースなどを担当した。
新宿駅南口、甲州街道下の道路は2万人(?)のデモ隊がぎゅうぎゅう詰めになって「原発やめて!」を叫んだ。こんなにたくさんの人が叫んでもやめられない原発って??
なぜ問題は起きたのか?〜脱原発でも右翼は排除する
6.11デモの前夜、この集会でのブッキング担当のロフト加藤梅造は頭を抱えていた。ロフトがブッキングした集会でのスピーチ出演者の中に針谷大輔氏(民族派の活動家)が入っているのが問題となっていたのだ。まずTwitter上で左翼陣営(?)からの抗議とデモ妨害予告が書き込まれ、その動きはやがて「ヘイトスピーチに反対する会」という左翼団体からの抗議声明へと発展した。スタッフ内部でも賛否両論の意見が噴出し、このままではデモ開催をも危ぶまれる事態になっていた。加藤が針谷さんと話し合った結果、針谷さんは「そうか、右翼はダメですか? 右翼の中にも脱原発派は沢山います。今のような非常事態ではイデオロギーの違いを越えて一緒に運動する必要があると思うのですが、集会が無事行われるよう私はスピーチを辞退します」と言ってくれた。
6.11は脱原発100万人アクションと題され、日本はもとより世界中で脱原発の統一行動が各地で催された。東京でも無理に統一行動ということはぜず、20カ所以上で脱原発のデモと集会が開かれた。午後2時、新宿中央公園ではゲストのスピーチが続いていた。会場は5千人あまりか? 会場が分散しただけ参加人数が前回よりやや少ない感じだ。仲野茂(アナーキー、ゲタカルビ)の「東電・イズ・バーニング」の演奏の後、俳優の中山一也氏のスピーチの時に事件は起こった。
会場に来ていた「ヘイトスピーチに反対する会」のメンバーが中山氏にヤジを飛ばしながら壇上に詰めかけ、その混乱中、飛び入りで発言をしようとした日の丸を持った青年(但し、彼は右翼ではない)のマイクのコードを引っこ抜いた。これはあからさまな妨害行為で、集会は大混乱となってしまった。
漫画家の山本夜羽音さんは「右翼だからという理由で針谷大輔を排除した連中は『エロマンガ家だから』という理由で俺を排除することも躊躇ないだろう。そのうち『喫煙者』も『カンナビスト』も『捕鯨容認派』も適当な理由で排除できる。それが俺の怒りの根源であり、左翼の決定的な欺瞞性だと。」とヘイトスピーチに反対する会を批判した(twitterの発言より)。いずれにせよ、素人の乱のデモが最初に掲げた「原発に反対する人なら誰でも一緒に声を上げよう」という理念が大きく揺らぐ事件であったことは確かだ。
この日の夕方、東京やその近郊で脱原発のデモをしていた人達がぞくぞくとアルタ前に集まった。正確な数はわからないが集まった人は1万とも2万とも言われている。この模様がTBSの「報道特集」で生中継され、日本では全共闘運動以来の光景だと驚いた人も多かったようだ。「脱原発に賛同するものは左翼も右翼もオタクもスケベもない。一緒に闘おう!」と集結したのだ。アルタ前集会は主催者が解散した後でも多くの人達が残りその流れは深夜まで続いた。
アルタ前でのデモ後のゲリラ集会。街宣車の屋根の上では政治家や著名人、ミュージシャンから通りすがりの人まで、沢山の人が反原発をアピールした。2万人は軽く超えたであろう群衆を前に、さすがの警察も最後は黙って人の壁を作るのがやっとだった。解放区がそこにあった
久しぶりに晴れた空がのぞいた。心の中ではもう一度被災現場に行って若い連中とボランティアをしたいと思っていても、座骨神経痛の私の手足は簡単に動かない。被災地支援の為のフリマに行った。直射日光を受け若いお母さん方が沢山の品物を並べて声を張り上げているのを遠くから見ている私がいる。
今月の美女
百人町事務所に新しく入ったアルバイト・望月理英。好きな食べ物ラーメン。今度一緒に食べに行こうじゃないか