春は出会いと別れの季節だと、昔からよく言います。私たちキャストとお客様は、はっきりとしたお別れのシーンがあることのほうがまれです。私も「本気で好きになったから、もう逢えない」とお客様から告げられ、卒業式をしたことがありますが、そんな機会はめずらしいからこそ心に残っています。
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しばらくご利用がなく、逢えていないお客様のことをふと思い出すときがあります。スマホのアルバムを見ていたら思い出の写真が出てきたとき、いただいたプレゼントを飾ったり使ったりして目に入ったとき……日常のなかにきっかけはたくさんあります。ふとした表情や交わした言葉が、ふいに蘇ってくるのです。
ご利用が途絶える理由は、さまざまです。遠方に引っ越す方もいれば、結婚前にどうしても女性との触れ合いを経験しておきたかったとお話されていた方がいよいよ挙式されることになったから、ということもあります。
金銭的に厳しくなったので、と率直にお話してくださる方もいます。自分で最初に金額を決めておいて「それを使い切りました」と、ご利用を卒業されていった方もいました。
もともと、一度きりのご利用も多い世界です。一期一会なんです。だからこそ、ふたりで過ごせる時間を大切にしたい。
何度か指名してくださって、同じものを食べたり同じ光景を見たり、一緒に気持ちよくなったりすると、思い出は増えていきます。
しばらくお逢いできていないけど、もしかしたらもう逢えないのかもしれないけど、いまのあなたは、どうしているのかな? 元気でいるのかな? 健康でいてくれたらいい、幸せでいてくれるのなら最高だな……本当にいろんなこと考えますよ。
いまのあなたを、私は知ることができない。連絡が取れるわけではないので、想像するしかありません。
ご案内していて「もう、ご利用されないつもりなのかもしれないな」と感じることもあります。予感がするんですよね。ハズすこともありますが、案外当たるものです。
キャストにもよるかもしれませんが、私はここ数年で出逢ったお客様には、「逢えなくなるときはできるだけ伝えてほしいな!」と伝えています。すごく正直なことを言うと、黙っていなくなられるのは、淋しいんです。そして不安に駆られます。
事故にあったのだろうか? 病気になってしまったのじゃないだろうか? 私たちには知るすべがないから、心配も募ります。
もしかしたら私が何かしでかしたから……!? とナイーブな気持ちになることもあります。もちろん、それでも気持ちを切り替えて仕事するしかないのですが、心の隅っこに残っています。そこまで、想っているんです。
いままで一緒に泣いたり笑ったりしたよね。
いろんな初めてを、ふたりで体験したよね。
別れは、いつだって切ないです。
逢えなくなる理由は、無理に聞きません。お客様が言いたくないことも、私たちが知らないほうがいいこともあるので、そこは無理をしなくていいんです。話したいのなら、話してくれたことを受け止めます。
最後だということだけでも教えてくれれば、お別れの時間をちゃんと過ごせる、という気持ちもあります。
そして、もしまた「逢いたいな」と思ったら、いつでも逢いにきてくれていいんです。
利用しなくなったことをキャストはどう思っているんだろうか、やっぱり気まずいな……と思われるかもしれませんね。私はいつだって会えるのがうれしいです。人の気持ちは変わるもの。また逢いにきてくれたなら、それがいまのその方の気持ちなんだと思います。
戻っておいで、と伝えたい。
それと同時に、レズっ娘グループでは個人営業はかけられないので、こうしたコラムや自分のブログで発信するしか、私たちにはできないのです。気持ちは、まさにあの曲です──私、待~つわ、いつまでも待~つわ♬
というのは冗談にしても、私は鋼のメンタルで待っています。
それができるのも、現在もキャストとして働いているからです。あなたが何年かぶりに「また逢いたいな」と思って、お店のHPを見たときに、私の名前を見つけてもらえる。まだ在籍しているんだと安心してもらえる。
そのあいだにキャストが卒業してしまっていることも当然あります。だからレズっ娘グループの代表、御坊さんはずっと「いつまでもあると思うなキャストと割引!」と言っているんですね。
ですが現在は、長期間在籍しているベテランキャストが、私以外に何人もいます。だから、数年単位でご利用がなくても、また再会できる可能性がある。
くり返しになりますが、私たちからお客様に営業をかけることはできません。営業がくることでイヤな気持ちになるお客様もいると思います。たとえば自分はいま利用したくてもできないのに連絡がくると、苦しいですよね。お店ごと、嫌いになってしまうかもしれません。そうなると、キャストもまた悲しいです。
だから、個人営業をしないというのはお客様とキャストと両方を守ることなのだと思います。そうしなくても、私たちは待っている。信頼と愛情を基盤とした関係です。
ずいぶん久しぶりの再会でも、気負わなくていいんです。話をするだけでいい、気持ちをぶつけてくれればいい。逢わないでいるあいだ、私もまた成長していると思います。顔を見せてくれればいい、いまのあなたを教えてほしい。
私はいつでも、ここにいます。
【ゆう プロフィール】
永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025