「自分がどんなセクシャリティかわからない」ーーそうおっしゃる方は、特に初めて利用されるお客様に多くおられます。
そもそもセクシャリティという語を、あまりご存知ない方もいるかもしれません。「性的指向」と訳されることが多く、LGBTsという語が広まって以降、こちらもだいぶ一般的になってきました。
なかには、「セクシャリティがわからないのに、レズ風俗を利用するのは失礼ではないか」「レズ風俗を利用してしまうと、レズビアンかバイセクシャルになってしまうのではないか」と思い悩んでいる方も、いらっしゃるようです。
レズビアンとは、「女性同性愛者や女性の同性愛」のことです。レズっ娘グループのHPには《レズビアン関連用語集 》というコーナーがあって、いろんな言葉が詳しく解説されています。レズビアンという語ひとつとっても由来や応用まで詳しく書かれていて、私も知らなかったことがたくさん! 好奇心を刺激されるし、勉強になります。
女性が女性にサービスする風俗店を利用したからといって、レズビアンやバイセクシャルになるということはありません。それは、自分で決めることなのですから。
お店を利用するお客様は、むしろヘテロセクシャルのほうが多いんです。経験として、レズ風俗を利用してみたい、女性と触れ合ってみたい。男性のパートナーがいらっしゃる方も少なくありません。
自分のセクシャリティがわからないから、一度女性と試してみようというお客様もいて、私たちは大歓迎です。
先ほどセクシャリティは自分で決めるといいましたが、無理に決めるものでもありません。わからないままでも、いいんですよ。
なぜなら、私も迷っていました。
面接を受けて採用され、レズ風俗のキャストして働くことになった私は、ある問題に行き当たりました。
「ゆう」のプロフィールに”セク”をどう書くのか?
セクというのは、セクシャリティの略ではありますが、もう少し踏み込んでカテゴライズしたもので、詳しくは用語集の「セク 」を読んでみてくださいね。
それを自分で決めなければならなかったのです。あいまいではなく、はっきりとした書き方で、自分のセクシャリティ、セクを伝えたいと思っていました。なぜなら、そうしたほうが「自分のセクシャリティがわからない」というお客様にもわかりやすいだろうからです。
「こうしたセクのキャストを指名しようと思ったっていうことは、私にはこうした傾向があるのかな」というふうに、お客様ご自身のセクシャリティへの理解を深めたり、気づいたりするきっかけになれば、と考えてのことです。
現在、私のプロフィール欄には「中性リバ(タチ寄り)」と明記されています。これは、働きはじめた当初に決めて以来、変わっていません。こうやって自分で最初に決めてしまうのも、ひとつの考え方だなと思います。なりたい自分を設定してそこに向かうということです。
実際、「利用してみて、やっぱり私は女性が好きなんだと気づきました!」というお声をいただくことはよくあります。その逆で、「レズビアンではないとわかった」という方もいます。
どちらでもいいんです。
なりたい自分になる。
これが一番です。
セクシャリティは、これから出逢う人やキャスト、パートナーによって変わることもあるでしょう。
私が出逢ったお客様のお話をします。
はじめて出逢ったころは、フェム系の服装でロングヘアでしたが、何度か逢うごとに中性的な風貌になり、ボーイッシュな雰囲気になった方がおられます。
逆に、出逢ったころはメンズ服を着てボーイッシュな恰好をしていたお客様が、だんだんと女性らしくなっていき、すっかりフェミニンになられたこともあるんです。
レズっ娘グループのキャストも、プロフィール欄に示すセクシャリティ、セクが途中で変わることがあります。私のように変えない人もいて、それぞれの、そのときどきの感覚や考えが尊重されています。
「こうじゃなきゃいけない」と決めつけなくて、いいんです。
焦らなくても、いいんです。
お客様と、「枠を越えていく」という話をしたことを思い出しました。自分の世界を狭めるのも、広げるのも自分次第です。越えれば越えるほど、宇宙のごとく広い世界があります。
そう考えると、セクシャリティを探るということは、なりたい自分を見つける旅なんだと思います。
その道のりは人それぞれで、最初からその地点に居る人もいますが、そこにたどりつくまでいろんなところに立ち寄らなければいけない人もいます。前者のほうが楽かもしれませんが、後者のほうがきっといろんな世界を見れますよね。
迷っているあいだは、いろいろ試してみてはいかがでしょうか。
これはどうかな?
こっちはどうだろう?
回り道をしてはじめてわかることも、きっとありますよ。
いずれ自分が落ち着く場所や、楽しいと思えるスタイルが自然と見つかるはずです。一度きりの人生、後悔や失敗を恐れずに挑戦してみてほしいと思います。
見つからなかったとしても、焦らずゆっくり自分と向き合ってほしいと願います。
わからないことは、わからない。
そんな時間も、楽しむぐらいの気持ちで。
一緒にゆっくり探しましょう。
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025