私たちキャストにとって一緒に働くスタッフは、お客様を滞りなくご案内するための縁の下の力持ち的存在であると同時に、心の支えでもあります。
悩みを誰に相談するのかーー私たちのお仕事では、これがとてもむずかしいのです。
お客様のなかには、ずっと自分ひとりの心にしまっておいた悩みを私たちに打ち明けたり相談してくれたりする方が少なくありません。リアルで知っている人にこそ言えないことって、誰にでもありますよね。私たちキャストがその受け皿になれるなら、こんなにうれしいことはありません。
それはキャストも同じで、仕事の悩みを誰にでも聞いてもらえるわけではないのです。家族や友人など、身近な人に内緒でこのお仕事をしているキャストも多く、ひとりで抱え込みがちです。
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そんなときに、相談できるスタッフがいるのは、すごくありがたいことです。
その流れで、ときにキャストが個人的なことについても話すことがあります。そうでないと何を悩んでいるかちゃんと伝わらないからです。レズっ娘グループのスタッフは、それを受け止めてくれますし、そもそも徹底して秘密を守れる人でないと務まりません。それと同時に、お店全体のことを考えるのも忘れてはいけないのです。
私は2019年に、キャストのお仕事に加え、現場監督としてスタッフ業務も兼任することになりました。キャストとして10年を超えて、転機を迎えたのです。
悩みといっても、プレイの具体的な内容となると、スタッフにはわからないところがあります。そうしたことは先輩キャストに聞いてもらう場合が多いと思いますが、現場監督という役割ができたことで、相談しやすい、されやすい空気が整ったと感じます。
キャストとしての経験は、スタッフ業務にも大いに活きます。それと同時に、むずかしさも感じます。
新人キャストが入店したときは、私が研修を行います。けれどそれはごく基本的なことだけで、あとはキャスト自身が自分のスタイルを模索し、確立していきます。ひとりひとりがオリジナルのご案内スタイル、働き方、つまり“キャスト像”みたいなものを持っています。
その像をプライベートでも徹底している人もいれば、ご案内が終わった突端スイッチが切れたようにふにゃふにゃ〜となっちゃう切り替え型のタイプの人もいて、相談に乗るときはその人のタイプを知っておかなければなりません。そうでないと、傷つけてしまうこともあるんですよね。
尊重して、寄り添う。そのためには日ごろからよく観察することが欠かせません。それもスタッフの仕事のひとつですね。それによって、どのような接し方がふさわしいのかが見えてきます。
私は両方の立場にいるということで、メンタルの悩みもテクニックの悩みも聞くことがあります。コロナ禍でちょっとした悩みなどを気軽に相談できる機会は減りましたが、自分ひとりではどうにもならないという悩みにはオンラインや電話で対応したこともあります。悩みは長引かせないほうがいいと思います。心のケアをできるように、いろんな機会を作れたらと思っています。
落ち着いてきたらスタッフやキャストたちと、事務所で会食するなどの機会をもちたいです。そうやって気軽に言葉を交わせる時間が、すごく大事なんだと思います。
最後に大事なことをひとつお話したいのですが、スタッフとキャストの距離感についてです。相談しているときに個人的なことを話したり聞いたりしても、それをきっかけに距離が縮まりすぎるようではいけません。一緒に仕事をすれば心がふれ合うシーンは当然ありますし、仲間意識も生まれますが、「友だち」ではないのです。スタッフもキャストも、お仕事をするためここにいます。
一定の距離を保ちつつ、寄り添って本心を聞き出すーーこれができるようになったら、レズ風俗界のスペシャリストになれると思います!
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025