ときに甘酸っぱくて、ときにほろ苦くて、刺激的。恋愛って楽しくて、わくわくするものだと思います。
私はレズ風俗キャストというお仕事で、たくさんの人と出逢います。いろんなお客様とデートし、身体を重ね、そして別れ、また出逢っていくお仕事です。お客様に人生があり、私にもまた人生があって、それが交錯する。
そうやって何度も心を交わし、肌を合わせていくと、ふたりの仲はどんどん深まります。
でも私たちは、あなたの本気の恋の相手にはなれない。なってはいけない。
もっと逢いたいと思ってもらえるのはうれしいことですが、独占したい、キャストとお客様という関係ではなく恋人同士になりたい……お客様がそんなふうに考え、告白してしまうと、もうご指名いただくことは叶わなくなります。
それがお店のルールだからです。
* * *
告白したら、もうそのキャストを指名できなくなるーー無粋だと思われるでしょうか。
レズっ娘グループのルールは、お客様とキャストをがちがちに縛って不自由を与えるものではなく、その逆で、安心して安全に愉しんでいただくためにあります。
ルールを知っていても、自分を止められなくなるのが恋愛なのだと思います。また恋愛は、本人も気づかないままはじまるものでもあります。何度もお逢いし、たくさんの濃い時間を過ごし、関係が深まり、気づいたらキャストのことが頭から離れなくなっている。
私たちは、お客様のそうした心の動きに敏感でなくてはならないと思っています。引き返せなくなる前に、一線を越えないよう心を配らないといけません。
私たちと書きましたが、キャストだけでなく、レズっ娘グループの代表・御坊さんはじめお店全体の役目でもあります。ここでまた御坊さんの言葉を紹介します。
御坊「本当なら、心のコントロールができなくなる前に、なんとかしたいです。そのほうが、お客様もキャストも傷つかずに済みますから。"割り切って"遊んでほしいんです。ドライに感じられるかもしれませんが、ディズニーランドみたいなものです。夢の世界なんです。あくまでお店をとおして出逢った○○ちゃんなのだ、という意識を忘れずにいてもらえたら、と思います」
御坊さんの著書『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。』(WAVE出版)には、さらに詳しく書いてあります。このままいくと危ないなと思ったとき、この本を読み返して自分を取り戻す、というお客様もいらっしゃるのだとか。
最高の疑似恋愛をしてほしい。私は常々そう思っています。
疑似というのは、ウソという意味ではありません。その時、その場では、お互いに本気。でも、それは日常から離れた世界での出来事。忙しい毎日、ときにイヤなこともある日々を、ちょっとだけ離れられるのがレズ風俗。
ふたりのときは、思いっきり恋の愉しさを味わってください。委ねてください。
私はその気持ちを受け止めます。
そのうえで、守ります。
甘い時間だけれど、甘すぎない。その甘さに中毒になり現実に戻れなくなってしまっては、お互いに幸せではありません。ほどよい甘さを保つのは私たちの役目なので、安心して遊んでください。
そしてご利用の時間が終われば、日常へと戻っていくーー。
これまでにも気持ちの歯止めがきかず、暴走してしまい、指名NGどころか出禁にまでなったお客様は何人もいらっしゃいますが、ほとんどのお客様はルールを守って遊んでくださっています。
なかには本気で恋をして苦しい想いを抱きながらも、キャストに迷惑をかけたくない、指名NGになって二度と逢えないなんてことは絶対に避けたいと、懸命に自分を抑えている方がいらっしゃることも知っています。
「もう逢うのは最後にしたい」
そんなふうに告げられたことがあります。私にとっては、このお仕事をしていて最も悲しい瞬間です。理由は、
「ゆうのことを本当に好きになってしまったから」
でした。
私たちは、レズ鑑賞クラブティアラで、お客様とキャストとして出逢いました。ですから、それ以上の関係を望むのはとても危険なことです。
だけど、好きになったら止まらないーーその熱い想いは、私にもよくわかります。お客様は何度も気持ちを落ち着かせ、冷静になりながら、お店に通ってくれました。一生懸命、私といい距離感を保つ努力をしてくれました。
その一途さに何度も胸を打たれたものです。
胸が締めつけられるような想いもたくさんありましたが、私にできることは、自分も気を強くもってお客様に寄り添うことだけです。
でもそれも、限界がありました。
私たちは、卒業式をすることにしました。
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025