前回につづいて、もう少し「顔出し」のお話をさせてください。
顔出しについての記事をネットで発信したときに、後輩キャストがこんなようなことをブログに書いてくれましたーー「お店でいちばんキャリアの長いゆうさんが徹底的に顔出ししていないから、私も安心して顔出しせずにいられる」と。
うれしかったですね。というのも、キャストはやはり揺れるからです。「もっと自分を見せたほうが、ご指名してくださるお客様が増えるんじゃないかな」「ちょっとだけ顔を出してみようかな」……もし仮にそんな想いからブログで顔をチラ見せしたとします。それを見た別のキャストが「私も」と思うかもしれません。
ご指名が増えるという目の前のメリットに夢中になり、大事なものを失ってしまう。私はそれが怖いのです。
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私たちは、キャストとしてレズっ娘グループに在籍しています。お客様にお会いするときは自分自身をフル稼働して愉しんでいただくよう努めますが、それは"ゆう"としてであって、そうでない時間は"私"として生きています。
だから、身バレは絶対に避けないといけないのです。
たいていのキャストがそうだと思います。
身バレしてしまえばキャストはこのお仕事をつづけられなくなるだけでなく、その後の生活や人間関係に大きな影響が及ぶ可能性もあるのです。
「○○がレズ風俗で働いているらしい」と噂になると、友だちをなくすこともあります。ネットやSNSなどに個人情報が載ってしまえば、プライバシーを侵害されるだけでなく、偏見にさらされたり、脅しに遭ったりするかもしれません。本当はそんな想像もしたくないのですが、一度ネットに書き込まれればその記録は消えないと思っておいたほうがいいでしょう。
家族や友だちに内緒で働きたい。
自分のセクシャリティも秘密にしておきたい。
多くのキャストが誇りをもって、このお仕事をしています。恥に思ったり後ろめたく思ったりすることはありません。でないと、お客様にも失礼ですよね。でも、それと周囲に伏せておくというのはまた別の話です。
家族にバレた場合、関係に支障をきたす可能性があります。働いた理由を一から説明することを求められると、エネルギーを使うし、精神的ストレスを抱えることにもなります。
本業があるキャストもいます。別のお仕事をしていて、あいた時間にレズっ娘グループでお仕事をしているという意味です。それが本業の職場にバレれば居心地が悪くなるかもしれませんし、副業禁止の職場なら退職に追い込まれることも考えておかないといけないですね。
大好きな仕事だからこそ、私を待ってくれているお客様がいるからこそ、自分のプライバシーは守り通さないといけません。
冒頭で「ご指名してくださるお客様が増えるんじゃないかな」と書いたのは、私にも経験があるからです。
実は私、入店後は予約がまったく入らなくてお仕事を辞めようと思っていた時期がありました。せっかく張り切ってキャストになったのに……。
そのとき最後の最後に振り絞ろうと、あることを試みました。
それは、「ブログで大胆なことをする!」です。
自分の下着姿をブログ記事に投稿したり、顔も半分、いえ7割ぐらいは出していました。
いまとなっては考えられませんが、当時はよほど必死だったんだろうと思います。
とはいえ、当時はほかのキャストもそんな感じだったのです。怖いもの知らずだったのですね。ネットの世界がいまよりは牧歌的だったこともあり、みんなどこかで「大丈夫でしょ」と思っていました。思い出すと冷や汗が出ますね。
でも、しばらくして考え直しました。
このお仕事で「本当のわたし」として顔を知られたい、有名になりたいということは一切ありません。私は「キャストゆう」として活躍したいのです。
それを思い出したとき、これからはもう顔出しをするのをやめようと思いました。
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レズ風俗店が増えてきて、キャストが大胆にも顔出しをするお店も見かけます。すごく勇気のあることだと驚きますし、それぞれのお店の戦略なのだとも思います。
一般社会にもだんだんとレズ風俗キャストという職業が馴染んできて、「隠さなくてもいい」「身バレしても大丈夫」と思う人が増えてきているということなのかもしれません。
個人的にはまだまだだと感じますが、少しずつでも時代が変わってきているということでしょうか。
いまでは、家族にこの職業のことを知らせてから入店する人もいます。理解があるというのはとてもいいことだと思います。
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025