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回「女性の身体は迷路みたいでした。」

第3回「女性の身体は迷路みたいでした。」

2020.12.08

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好きな人への興味や好奇心が止まらなくなったことはありますか? 思春期にそんな経験した人もいるのではないかと思います。そこで暴走しないようにぐっと堪えたり、言葉を選んで相手に伝えたり、想いが遂げられふたりの世界に閉じこもったり……それも青春の1ページですよね。
 
私は自分のセクシャリティを知った後、女性への興味があふれ出て止まらず、女性に触れたい気持ちがどうしようもないくらい疼いてしまった時期がありました。街を歩いても好みの女性に目がいき、視線で追っていました。こう書くと、かなり危ない人みたいですね! 女性が好き、という一心で疾走する季節のはじまりです。
 
*     *     *
 
はじめての経験は、私に新しい世界観とひらめきを、そしてほとばしるエネルギーを与えてくれました。素晴らしい出逢いだったと実感しています。
 
タカコさんに誘われたときためらわなかった自分を不思議に思うこともありますが、あらがえないほど魅力的な人に出逢ってしまったということでしょう。何も知らないヒヨッコでありながら、未知の世界に触れたい、扉を開きたいと強く願っていたのかもしれません。
 
あの夜は、われながらよくがんばったなと思います。はじめてなのに、なぜか手と指がするすると動き、タカコさんのあらゆるポジションへ流れ着く……。
 
女性の身体は迷路みたいでした。探検家になった気分だったんです。面白くて、楽しくて、そして気持ちいい。ハマってしまうわけでした。
 
相手が気持ちよくなると、私も気持ちいい。そんなこともこの夜に悟りました。目の前にいる女性が悶え、快感をあらわにしてくれる。そのたびに私も興奮して、自分のなかの野性的な何かが呼び覚まされると感じました。
 
これだ!
 
そう思ったんです。楽しくて楽しくてしょうがありませんでした。ああ、男の人たちはこういう気分を味わっていたんだなぁと、納得する部分もありました。
 
女性に対してはっきりと恋愛感情を抱くようになってから、一緒にいる女性をついエスコートしてするようになりました。それまで一度もしたことないのに。仕草や服装、生活も変わりました。そうなると周りも自然となにかを察知するもので、私への態度が少しずつ変わっていきました。
 
その後の恋愛生活は、山あり谷ありの連続で、まぁ滅茶苦茶な時期もありました。若かったんですね。女性と肌を合わせるたびに、「やっぱり私は女性が好きなんだ!」という想いが強く、強くなっていきました。
 
なぜ、そこまで女性との恋愛にハマったのだろうーーこれだという決定的な理由はいまだに見つかっていません。ほんとうに、不思議なんですよね。
 
前世からのもの?
それとも天性のもの?
もともと女性と愛し合う運命だっただろうか?
 
考えても答えが出ないからこそ、おもしろいとも感じます。
 
一方、興味本位で飛びつくと、痛い目にあう世界でもありました。その日かぎりの甘い時間はとてもむなしく、幸福感も長くはつづきません。その後は、つき合うのか、つき合わないのかの押し問答。
 
そうとわかっても、私は危険な関係を求めつづけました。女性同士の快楽は、私にとって麻薬でした。仕事にもとてもいい刺激を与えてくれたし、仕事が充実するとそれがまた女性を求める活力にもなる。そんなサイクルができ上がっていきました。
 
10代のときに男性と重ねた恋愛は、どこかぎこちないものでした。セックスでの満足もさほど得られず。私の何がいけないんだろうと自問自答もしました。努力をしても、何かがつかめるとは思えなかった日々。変わった性癖の人もいて、依存型の人もいました。ストーカー行為を経験したこともあります。
 
一方で、素晴らしい出逢もありました。一生添い遂げたいと思うほどに愛した人にも出逢いました。でも、人と人はわかり合うのがむずかしいですよね。それだけの人とも、終わりのときから逃れることはできませんでした。永遠とか運命とかを信じたかったけれど、どこにそんな希望があるのだろうとわからなくなってしまいました。
 
なんとなくではありますが、結婚も子どもを持つことも私にはとても遠い話だと感じていました。そんな現実と向き合うのがしんどくて、“その日かぎり”という、なんとも都合のいい関係に逃げていたこともあります。
 
それがタカコさんとの出逢い以降、変わったんです。
 
同性との恋愛では、どちらも対等な立場で物ごとを考えることを覚えました。それは、自立心や自信をつけるきっかけにもなりました。私の世界観を大きく広げてくれた素晴らしい経験だったのだなぁと、つくづく思います。
 
女性同士の出逢いといえば、出会い系や掲示板が定番ですが、私はそういったものを利用したことは一切ありません。出逢いを貪欲に探すというより、出逢ったときに行動する、という感覚だったからです。お互い惹かれ合ったら一緒になる、ふんわりとしてはいますが、私にはこのスタイルが合っていました。
 
出逢いを重ねるなかで、ストレートの女性と関係を持つこともありました。女性はみんな、同性になんらかの興味を持っているのでしょうか? そう思わせるほど、自然と身体を合わせたものです。
 
ほかにも共通の趣味を持つ人や、似たような価値観、人生観で生きる人が集まる場所での出逢いがありました。自分をしっかり持って生きている人たちはとても美しく、生き生きとしていて、セクシャリティについてもオープンな人が多い気がします。
 
自分をさらけ出して、惹かれ合う。尊敬の念を持ちながら相手とふれ合うんです。
 
20代前半でそんな体験をできたのは、幸せなことだったなぁといまも思います。
 
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025
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