フリーで仕事をしていると休めないものだ。
普通に会社員などをやっていたときは、フリーランスとか個人事業主とかいうと、休みたいときに休んだりできるものかと思っていた。
ところがどっこい、実際に自分で仕事をしてみると、むしろ休めない。いや、休もうと思えば休める。自己責任で「明日からしばらく仕事をしません」と宣言してしまえばいい。だが、現実問題それができない。というのも、フリーになったばかりのころ、痛いほど入金サイクルに苦しめられたことがあったからだ。
ボクの主な仕事はイベント出演やテレビなどの番組出演、そして、このような文筆業がメインだ。個人相手の人と仕事をすることは稀で、多くは出版社だったり制作会社だったりするのだが、基本的に取っ払いでお金をもらうことはない。請求書を出して早くて1ヶ月、遅くて2ヶ月後くらいに、初めて仕事のギャラが手元に入る。
仮に「今月は100万円分の仕事をしたぞ!」と実際その月働いていても、100万円が再来月に入る予定で、しかも来月が収入ゼロなら普通に生活ができない。来月の収入は遅くとも先々月くらいから見込みを立てておかないといけないのがフリーの辛いところだ。
となると、「今月だけ休みまーす」と宣言してしまえば、3ヶ月後あたりにそのしわ寄せが来るのは目に見えている。だから休みたくとも、休めない。
たまに何の予定も入ってない日があると、休日前夜の皆さんと同じくワクワクで床につくのだが、スケジュール管理も自分なので、朝方飛び起きることがある。本当に今日なにもスケジュールを入れていないか不安なのだ。病気だ。
初めて就職したブラック企業で、上司にこんなことを言われたことがあった。
「お前の代わりなんか、いくらでもいるんだからな?」
学生のときは教師や両親から「あなたはあなたしかいないんだよ。あなただけの個性があるの」なんて言われてきたのが、社会に出ると途端にこれだ。
しかし、まぁ、イベントや本の執筆を依頼してもらえるのはありがたいことだ。それは紛れもなく代わりが立てられない仕事だ。ボクが出ると宣伝したイベントにボクがいなかったらそりゃ払い戻しなんかの責任がつきまとうし、本だって途中で投げ出したりはできない(たまにやる人いるけど)。
「お前の代わりなんか、いくらでもいるんだからな?」
そんな言葉が呪詛のように付きまとう。本当に代わりがいるのだろうか。いたら休んでもいいのだろうか。そんなことを考えながら、今日も夜中に目を覚ます。
大島 薫:1989年6月7日生まれ。ブラジル出身。ノンホル(女性ホルモン未使用)、ノンオペ(性転換手術をしていない)を公言している、純粋な男の子。Twitterフォロワー約15万人を誇る。女性よりも可愛らしい容姿を武器にセクシー女優として活躍していたが、2015年6月に引退。現在はマルチタレントとして幅広く活動中。