なんと、とうとうこの月がやって来てしまった。6月……!
ボクは6月7日でめでたく30歳の誕生日を迎えることになるのだ(これを書いているのは5月末)。
いやぁ、長かったような短かったような30年間だ。
小学校1年生のころ、ふいに自分を取り巻く膨大な時間を恐ろしく感じたことがある。1年がこんなにも長いのだから、小学校6年生になるのにはどれだけの時間がかかるのだろう。その先、中学、高校……と、大人になるまでいつまで勉強しなければならないんだ、と。
陳腐な表現にはなるが、しかし、過ぎ去ってみれば早いものだ。ボクがいまの見た目になったのは23歳のころなので、およそ7年前ということになる。
15歳のころから女装癖はあったが、当時は「性転換もせず、女装で生活する」なんて発想は微塵もなかった。いや、微塵もなかったは少し違うかもしれない。「不可能だと思っていた」が正解に近いだろう。
みなさんでも想像に容易いだろうが、女装というのは若いほうが有利だというのは女装趣味の人々の共通認識だ。少年なら少女とあまり変わらない外見をしている子も多いが、年をとればとるほどその性差ははっきりする。だから、若いというのは女装をする上では一種のステータスだ。
その加齢とともに来る男くささを、ニューハーフさんなどは手術やホルモン注射で打ち消していくのだが、ボクは女性になりたいわけではない。
「15歳のころはまだいいかもしれない。でも、老けたときも男性のままで女性の見た目でいられるわけがない」
それが当時のボクの考えだった。それがいまやどうだろう、20代も通り過ぎ30歳だ。
だが、ボクは15歳のころの自分よりも、23歳のころの自分よりも、いまの自分が一番好きだ。自分で言うのもなんだが、見た目だって昔の自分よりいまの自分のほうがクオリティが高いと思う。
もちろん若くはない。若くはないが、美しさの根源は若さだけでもない。良い人に囲まれ、良い経験を積み、良い中身を育てること。それこそが若さと引き換えに得られる、年齢相応の美しさだと思う。
これから年をとることがますます楽しみだ。
大島 薫
1989年6月7日生まれ。ブラジル出身。ノンホル(女性ホルモン未使用)、ノンオペ(性転換手術をしていない)を公言している、純粋な男の子。Twitterフォロワー約15万人を誇る。女性よりも可愛らしい容姿を武器にセクシー女優として活躍していたが、2015年6月に引退。現在はマルチタレントとして幅広く活動中。