▲1月19日に阿佐ヶ谷ロフトAで行なわれた『大島薫とゲイストリップを観ようの会』より。
何年も前のことを昨日のことのように思い出せるのに、昨日のことはあまり思い出せない大島薫です。最近、9年ほど前に初めてゲイビデオに出演した頃の話をブログで連載していたのですが、そちらがやっと終わりホッと一息ついております。
ゲイに関する商売というのは、非常に厳しいものです。現在、バイセクシャルの男性と、ゲイの男性を合計した人口は、総人口の2.8%程度と言われています。それ以外の方は要するにほとんどゲイビデオを観ないわけです。普通、商売は需要があるから始まるものですが、需要がないところで始まっている、それがゲイ業界なんですよね。
先日、阿佐ヶ谷ロフトAでN-stageさんという団体と共に『大島薫とゲイストリップを観ようの会』を開催させていただきました。このゲイストリップとは本来の名称ではありません。
N-stageさんは普段、メンズストリップという名前で活動をされているのですが、その客層は女性ではなく、男性です。要するに男性が好きな男性に向けた男性のストリップ団体ということですね。ですので、今回はそれを踏まえてお客様にいらして欲しかったので、あえてゲイストリップという名前を冠しました。
いま現在、日本で男性のストリップを扱う団体はこちらのN-stageさん以外には存在しません。単発のショーなどでは行なわれることもあるでしょうが、団体として公演をやっているのは女性相手のものも含めて皆無なのです。
なぜ今回このようなイベントを開催するに至ったかについては、およそ2ヶ月ほど前、毎度お騒がせな企画をやっているボクの生放送番組『大島薫ちゃんねる』での潜入取材をしたことがきっかけです。単純にボクが日本に現存するゲイ向けメンズストリップを観てみたいと思っただけの動機でしたが、取材が進むにつれ、いまN-stageさんが抱えている問題を知ることとなりました。
女性のストリップをご覧になられたことのある方ならご存知でしょうが、ストリップは1日に何度も行なわれるものです。一つの小屋で同じメンバーが同じ演目をローテーションで行ないます。1週間ほど同じ小屋で公演をすると、一座はまた地域を変え、そこでまた毎日公演を行なうのです。それだけ開催ができれば、一応のところはストリップだけを仕事にできる女性も出てきます。
一方、N-stageさんにストリップだけで食べていける男性はいません。なぜなら毎日やって来てくれるほどゲイ業界にお客さんはいないからです。2〜3ヶ月に1回ほどの公演を繰り返し、なんとか彼らは15年、この日本に唯一の男性向け男性ストリップを続けてきました。
しかし、それも年々厳しくなっているとN-stage主催の千葉向月さんは語ります。
「昔は他にもゲイ向けストリップを扱う団体がいたんですが、年々規制も厳しくなって、いまでは我々だけになりました。伝統を守ってはいきたいけれど、正直、お客さんを毎回集めるのも大変でねぇ……」
女性客を入れるようにすればいいのではないですか?
「一度そういうのもやってみようと思ったんだけれど、ゲイのお客さんは女性が会場にいるのを嫌がるし、女性のお客さんも入り辛いのか思ったほど来なくて、むしろお客さんが減っちゃって……難しいですね」
もともと女性向けに発信をしてきた団体ではないのですから、たしかにいきなり女性客を集めるのは難航したことでしょう。こちらの千葉向月さんは現在前線を退き、自身もメンズストリッパーでありながら舞台のプロデュースを手掛ける寧々∞D.a.iさんへと主催のバトンを渡しています。
しかしながら、取材の中で拝見した彼ら男性ストリッパーたちの演舞は、女性ストリッパーと比べても決して見劣りしないもののように思えました。そして、たった数回の公演を楽しみにして来ている年配のゲイ男性たちは、本当に嬉しそうに彼らの下着にチップを投げ込むのです。取材をしながらボクは、何となく「この文化がなくなって欲しくないなぁ」と思いました。
そこで今回、女性も入れるゲイストリップイベントを行なうことに至ったのです。客入りはどうだったか、ですか? 立ち見が出るほどの超満員でした。お客様はボクのファンを中心とした腐女子と呼ばれる女性たちがほとんどです。
歓声に沸く会場でN-stageのストリッパーたちは、本当に煌びやかで妖艶で美しい男性たちだと思えました。
とは言え、ボクはこれでN-stageさんが女性向けメンズストリップ集団になって欲しいと考えているわけではありません。ボクが残って欲しいと思った文化はあくまで「密かに行なわれる男性向けのメンズストリップ」です。その怪しくて少しダークな雰囲気は、少しずつ消え去ることを余儀なくされています。きっといま偉い人たちが目指す「美しい国『日本』」からは歓迎されないものでしょうから。
千葉向月さんが守ってこられた伝統を壊すことなく、ボクなりにN-stageさんを応援できることを願っております。2月21日に再び阿佐ヶ谷ロフトAにて『大島薫とゲイストリップを観ようの会』が開催されますので、是非たった数回のこの日本に残された陰を観に来てください。