LUNA SEAが活動再開を発表し、X JAPAN界隈がhideの肖像権などを巡ってゴタゴタしている昨今、バンギャのみなさんはいかがお過ごしだろうか。私は今月、「民主党代表選」絡みの渋い取材を受けながらも、V系ライブに通いまくる日々を過ごしていた。
そんな私がライブハウスで日々気になっていることがある。ワンマン以外のライブによく行く人であれば共感してもらえると思うのだが、それは「バンドとバンドの間のセッティング時間が暇」という大問題だ。
これは友達がいる人であればその間に喋ったりできるので気にならないのかもしれないが(実際、友達がいた現役バンギャの頃はそんなに気にならなかった)、現在の私のように35歳にもなると一緒にライブに行ってくれるような暇人など皆無。それどころかちょっとした哀れみの対象になっている始末で、かといってライブハウスで友達ができるというような「青春の1ページ」っぽいことが我が身に起こるはずもなく、ただ一人、そのセッティングの時間を疎外感に包まれながらやり過ごしているのである。
で、何が辛いかって、30歳過ぎたババンギャには「立って待っている」ということが苦痛なのである。多くのライブハウスには座る場所などない。地べたに座る人もいるが、基本的に小心者なので「他のお客さんに迷惑なのでは?」と思うと座ることもできない。しかもその時間は「私は今、時間を無駄にしている」という罪悪感を芽生えさせる。ただでさえ仕事をサボり気味で通っているライブハウスだ。そんな時間に「資料を読む」程度の仕事ができればいいのだが、中途半端に暗くて字など読めない。そうしてババンギャはただ一人、罪悪感に苛まれつつ、足腰の痛みに耐えてひたすら次のバンドの出演を待っているのである。
が、最近のV系ライヴにはこのセッティング時間を有効利用しているケースがあり、私は20年来の夢が叶ったような達成感に包まれている。
有効利用その1は「トーク」だ。セッティング中の舞台に幕を引き、その前で今出演を終えたバンドのメンバーなどがトークするのである。内容などはどうでもいい。ライブを終えた直後のメンバーの肌に光る汗や荒い息が無条件にエロいからだ。
そうしてつい最近、「このやり方があったか!」と驚いたのは「メインステージとサブステージ、かわりばんこでサクサク進めます方式」。渋谷O-EASTでのイベントだったのだが、ステージがふたつあって、メインでセッティング中にサブでライブ、という感じで待たされる時間がほとんどないのだ。これだとストレスはゼロ。トイレに行く暇もないくらい次から次へといろんなバンドが登場するこのイベントには、文明開化の音がしたのだった。
ということで、いろいろと進化を感じているのであった。
(写真)江ノ島の猫と。
雨宮処凛(あまみや かりん)プロフィール
1975年北海道生まれ。小説家、随筆家、ルポライター、社会運動家。十代の頃よりヴィジュアル系バンドのおっかけ、「ミニスカ右翼」と称しての右翼活動、パンク・バンド『維新赤誠塾』、『大日本テロル』ヴォーカル、映画『新しい神様』出演など様々な活動の後、自身のいじめ体験、リストカット体験などを赤裸々に綴った『生き地獄天国』(太田出版)で文筆家デビュー。現在は生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。反貧困ネットワーク副代表、『週刊金曜日』編集委員、日本厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員、他。師匠は作家の故・見沢知廉。自身の体験を元にビジュアル系のおっかけ少女の青春を描いた小説『バンギャル ア ゴーゴー』が講談社文庫より発売中。