誰も言ってくれないから自分で言うしかないが、今年は私の「デビュー10周年」なのである。一冊目の本を出してから、10年目にあたるわけだ。
ということで、休みをとってトルコのイスタンブールに行ってきた。どうしてトルコなのか、理由は別にない。ただ、久々に大音量のコーランを浴びたくなっただけだ。
そうしてトルコで日々浴びるように酒を飲み、死ぬほど美味しいケバブやキョフテを大量に摂取し、その辺の芝生とか公園で昼寝ばかりしていたのだが、そんなトルコは「バンギャ目線」で見ると、ヴィジュアル系バンドのPVの撮影場所に使えそうな場所の宝庫だったのである。
例えばモスク。20年以上前から続くV系PVのロケ場所の定番と言えば「教会」だが、イスラム圏のモスクの方が建築としてはよほど豪華絢爛なものが多いように思う。私が初めてモスクに足を踏み入れたのは今から10年以上前、イラク・バグダッドでのことだが、そのあまりの壮大な美しさに気絶しそうになったことを覚えている。
また、イスタンブールの「地下宮殿」も素晴らしい。その名の通り地下にある宮殿なのだが、暗い空間に無数の柱が並び、柱の下部分は水没している。もともと貯水池らしいのだが、暗闇の中、ずらっと並ぶ柱が絶妙にライトアップされ、「メデューサ」の首が水没し、天井から水が滴る様子はまさに「ゴス」で、今にもパイプオルガンの音が鳴り響き、マリスミゼルのライヴでも始まりそうな感じなのだった。
ということで、撮影場所には「トルコ」を勝手にお勧めしたいと思っている。
さて、ここでひとつ告知をしたい。ロフトにて、雨宮処凛PRESENTSの「バンギャル ア ゴーゴー」というイベントをすることになった! ここでも連載してるおじさん(平野さん)から「雨宮! なんかヴィジュアル系でイベントやれよ!」とものすごくアバウトな感じで言われ、自分の大好きなバンドをお呼びしてのライヴイベントをすることになったのだ。
バンギャはじめて20年。しつこくしつこく、まるでストーカーのようにヴィジュアル系を愛し続けていれば時にこんないいこともあるのである。
ということで、今からいろいろ準備している。っていうか、出てくれるバンドがいなかったらどうしよう・・・というのが今のところもっとも不安なところだ。
(写真)イスタンブールのブルーモスクにて。
雨宮処凛(あまみや かりん)プロフィール
1975年北海道生まれ。小説家、随筆家、ルポライター、社会運動家。十代の頃よりヴィジュアル系バンドのおっかけ、「ミニスカ右翼」と称しての右翼活動、パンク・バンド『維新赤誠塾』、『大日本テロル』ヴォーカル、映画『新しい神様』出演など様々な活動の後、自身のいじめ体験、リストカット体験などを赤裸々に綴った『生き地獄天国』(太田出版)で文筆家デビュー。現在は生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。反貧困ネットワーク副代表、『週刊金曜日』編集委員、日本厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員、他。師匠は作家の故・見沢知廉。自身の体験を元にビジュアル系のおっかけ少女の青春を描いた小説『バンギャル ア ゴーゴー』が講談社文庫より発売中。