「ゴールデンボンバー」が好きだ。といってもまだ一度しかライヴには行けていないのだが、とても好きだ。特に今、落ち込んでる人なんかに勧めたい。彼らのライヴに行けば、あまりのくだらなさにあれこれ思い悩む気持ちも強制的に脱臼させられるはずだ。
そんな彼らを知ったのは、某動画サイト。第二次ヴィジュアルブームが始まったと同時に中毒のように某動画サイトを見ていて発見したのがゴールデンボンバーだったのだ。ヴィジュアル的にはイマドキV系としては非常にレベルが高いと思う。というか、普通にカッコいい。なのに、何か「変」なのだ。それは曲名にも顕著に現れている。
例えば「元カレ殺す」だったり「ワンマン不安」だったり。そんな彼らのライヴ映像を見て驚愕した。ライヴ中だというのに演奏はせず、時にメンバー全員で踊りまくり、時にホットプレートで肉を焼いて食い、時に唐突にスイカ早食い大会が始まり、そして時にはドラムソロでうどんを打ち出し、ライヴ中にうどんができてたりする(ホンモノではない)。とてもカッコいいヴィジュアル系バンドマンたちが身体を張って笑いを取っているという不条理にも似た光景。そこにハマってしまったのである。しかも、笑いを取ってるだけでなく、曲は素晴らしくいい。
そんな彼らのライヴを初めて見たのは二月頃。高田馬場のライヴハウスで彼らはやはり、完璧にお客さんを楽しませるパフォーマンスを繰り広げていた。やっぱりすごい人気だった。その時のことは、楽しすぎてほとんど記憶には残っていないので書きようがない。しかし、ライヴが終わり、アンコールが始まるとほぼ同時に「待たせたな!」と登場した彼らの姿に「プロ魂」を垣間見た気がした。普通、ヴィジュアル系バンドの多くは「カリスマ」系を目指して何かにつけてもったいぶるのがひとつの作法となっているわけだが、彼らは潔いほどに大安売りな感じなのだ。その姿に、何か新しい境地を見いだした気がした。
そんなゴールデンボンバー、最近はワンマンのチケットもソールドアウトが続いているようで、なかなか見られなくなっているのが淋しい。しかし、4月からは「恐怖の全国ワンマンツアー」、その名も「ワンマンこわい」が始まるようで今から楽しみにしている。
私の知らないうちに独自の進化を遂げ、新たなジャンルが確立されているヴィジュアル系。やはり目が離せないのだった。
(写真)福島みずほ大臣とトークイベントしました。
雨宮処凛(あまみや かりん)プロフィール
1975年北海道生まれ。小説家、随筆家、ルポライター、社会運動家。十代の頃よりヴィジュアル系バンドのおっかけ、「ミニスカ右翼」と称しての右翼活動、パンク・バンド『維新赤誠塾』、『大日本テロル』ヴォーカル、映画『新しい神様』出演など様々な活動の後、自身のいじめ体験、リストカット体験などを赤裸々に綴った『生き地獄天国』(太田出版)で文筆家デビュー。現在は生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。反貧困ネットワーク副代表、『週刊金曜日』編集委員、日本厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員、他。師匠は作家の故・見沢知廉。自身の体験を元にビジュアル系のおっかけ少女の青春を描いた小説『バンギャル ア ゴーゴー』が講談社文庫より発売中。