Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)
あなたの承認欲求は、巨大なデータを扱う国家や企業にとって、これ以上ないほど都合のいい情報源になっている
2026年8月19日から27日まで、俺がボーカルをやっているバンドDEATH SIDEで、アメリカ公演を行なってきた。
ペンシルバニア州ピッツバーグのSKULL FESTと、ニューヨークでの公演だったのだが、ライブやツアーの様子については『Real Sound』の記事で書いているので、そちらを読んでいただきたい。
【編注】9月23日(水・祝)の段階ではレポート記事未公開。『Real Sound』のISHIYA記事一覧はこちら。
俺がもうひとつやっているバンドのFORWARDと合わせれば、20年以上アメリカツアーをやってきた。これまでも何度か入国審査で別室送りになり、荷物を調べられて疑われたことがあった。しかし毎回、なんとか入国はできていた。
今回も同じく別室送りとなったのだが、今までの入国とは比べ物にならないほど厳しいものだった。
俺はなんとか入国できた。だが、後から到着したメンバーの2人は入国拒否に遭い、強制送還されてしまった。
この内容について、このコラムのような無料公開で誰もが簡単にアクセスできる場所に詳しく書くつもりはない。なぜなら、その告発自体が、また別の情報として回収される可能性があるからだ。
「そんなの考えすぎだ」
「悪いことしてなけりゃ問題ないはずだ」
等々、意見はあるだろう。
しかし一度立ち止まって考えてみてもいいのではないだろうか。
たかがパンクバンドのツアーで、こちらが想像していた以上の情報が把握され、それが判断材料にされる現実とは、一体どういうことなのか。
例えば、現代はスマホを持っている人が大半だ。これを読んでいるみんなも持っているだろうし、スマホでこのコラムを読んでいる人もいると思う。
スマホを使うために最初に何をする? まずはロックの解除をするはずだ。方法は機種によって様々だとは思うが、持ち主本人であることが確認できる方法でロックを解除する。すなわち、これが安全対策だ。
では、この「本人であることを確認する仕組み」を、個人の持ち物ではなく巨大なシステムが使えるとしたらどうなるか、考えてみないか? 安全対策という名目で個人を特定できるシステムが、すでにこの世の中では当たり前のように普及しているんだ。
今は誰もが簡単に、スマホで写真や動画を撮影できる。昔のようにフィルムを現像に出す必要もなく、その場で写真の良し悪しがわかる。
写真写りの良いもの、もしくはそのときの状況が手にとるようにわかる臨場感があるものは、SNSなど世界中の誰もが簡単にアクセスできる場所へ公開情報としてアップされる。
そこに写っているのが友人や知り合い、有名人などであればタグ付けをして「この人と、この場所に、何月何日に一緒にいます」という情報が共有される。これが現代の「当たり前」であり「常識」だ。
だが、それは本当にただの思い出なのだろうか。
本人が自分で公開した情報だけではない。友人が載せた写真、誰かが撮った動画、ライブの告知、出演者の名前、会場、日付、タグ付け。そうした断片が集まれば、その人間がどこで何をして、誰と会い、何に関心を持ち、どんな立場に近いのかまで浮かび上がってしまう。
もちろん、それを便利だと思う人もいるだろう。犯罪捜査や安全対策に役立つならいいじゃないかと思う人もいるはずだ。
しかし、その「安全対策」は誰が、何のために、どこまで使うのか。そこを決めるのは、本当に信頼がおける人間なのか。
映画やドラマでもよく見かけないか? 犯罪者が対象者を特定するために、SNSで相手の情報を得る場面を。
もしあなたがストーカーに狙われていたら?
DVから逃れている人を、加害者がSNSの情報で特定することはないのか?
悪意を持った人間が、目をつけた子どもの情報をSNSで探すことはないだろうか?
あなたが「可愛い」と心の底から感じ、SNSで公開した最愛の我が子の顔も、全世界の誰もが簡単にアクセスできる情報になる。どこに住んでいる誰の子どもかまでわかってしまうデータだという認識が、現代のネット文化ではあまりにも薄い。
あなたが悪いわけではない。あなたは、ただ楽しく、面白く生きていたいだけだ。
しかしそれを逆手に取って利用できる環境が、すでに整ってしまっているという現実だけは、一度考えてみないか?
なんの悪気もなく、手軽に発信した情報が悪用される可能性がある。
その被害を受けるのが自分ならまだしも、愛する家族や恋人、友人かもしれない。これは大げさな話ではない。そんなことはあり得ないと、誰が言い切れるのだろうか。
しかし、いくら危機感を伝えても聞き入れない人が大半だろう。それほどSNSに依存した社会は恐ろしい。どんな危機よりも、まずは自分を承認してもらうことが最優先の世界になってしまった。
もうすでに、あなたが公開した情報は、あなたが思っている以上に残っている。決して消えないデジタルタトゥーとなり、いつでも引き出せるデータとして記録されている。
あなたの承認欲求は、巨大なデータを扱う国家や企業にとって、これ以上ないほど都合のいい情報源になっている。
あなた自身だけではない。あなたの家族も、あなたの子どもも、あなたの友人も、あなたの好きな誰かも、あなたが発信した情報によって記録され、結びつけられていく。
これは陰謀論でも大げさな話でもない。少なくとも俺たちは、アメリカ入国でその現実を痛感した。それだけは覚えておいてほしい。
日本でも同じようなシステムが使われようとしていると聞く。本当に導入されるかはまだわからない。
だが、個人の情報を集め、結びつけ、ひとつの人物像として浮かび上がらせるような仕組みが、今後さらに組み込まれていくのは時間の問題なのではないだろうか。
俺たちはあまりにもデジタル技術に頼りすぎた。確かに便利であるし、一度その利便性の快適さを知ったらやめるのは難しいだろう。
しかし、あらゆるネット上に公開されている情報が結びつけられ、個人が特定される時代になっている。
はっきり言って、もう手遅れだ。
過去に公開された情報は、いくら消しても取り戻すことはできない。
すでに失ってしまったものを、どうやって取り戻せるのだろう。
それでもまだ、国家が管理しやすいように、自ら情報を与え続け、承認されたいのか?
大丈夫だ。記録を調べれば、あなたがどこの誰で、何をしているのか認識されている。
何かあれば、あなたはすぐに浮かび上がる。
あなたはもう、十分すぎるほど承認され、認識されている。
それでもまだ、自ら情報を与え続けている。
多くの人間は、この行為の恐ろしさに気づかないまま、日々を過ごす。
国家の安全を守るため、人間を管理する。
それは本当に安全なのか?
そんな管理をしなければ人間社会は成り立たないのか?
社会を作るのは誰だ。
政治家か? 資本家か? 一部の選ばれた人間だけなのか?
一体誰がこの状況を変えるんだ。
一体誰が「嫌だ」「死にたくない」「生きていたい」「自由でいたい」という声を聞くんだ。
その声は、その叫びは届くのか?
その声や叫びが無視されていく世の中をどう思う?
いくら声を上げても無視され、管理する側の都合で命も生活も支配される。
良いか悪いかさえ、管理する側の都合だ。
いくら叫んでも無視されるならどうするんだ。
いくら声を上げても無視されるならどうするんだ。
俺たちは一生、家畜のまま、生かされ、殺されるのか?
あなたがやっているすべてが、あなたの目の前のこの世の中で起きているんだ。
その鎖を引きちぎれ。
飼い殺しの自由を貪(むさぼ)ってんじゃねぇ。
DROPDEAD『Awaken Sleeper』(目覚めよ、眠れる者よ)
俺たちは生きている
目の前にヴェールをかけたまま
自分たちで招いた眠りへと
まどろまされている
ユートピアという幻想
俺たちは真実から目を背ける
この便利さという毛布
それはやがて俺たちの死に装束になる
その時が来た
夢を払いのける時が
今こそ眠れる者を目覚めさせろ
冷たい現実へと
真実を認めろ
どれほど苦くとも
未来に向き合うのなら
俺たちは目を開き始めなければならない
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 起き上がれ
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 立ち上がれ
幻想と嘘を見抜け
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 起き上がれ
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 起き上がれ
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 立ち上がれ
自分の人生の舵を取り戻せ
今こそ目覚めよ 眠れる者よ 起き上がれ
※Chat GPTで翻訳しました。
DROPDEAD『Awaken Sleeper』
We live life
With a veil before our eyes
Lulled into a sleep
That we induce ourselves
Illusion of utopia
We turn away from truth
This blanket of convenience
It will become our shroud
The time has come
To cast away the dream
Awaken now the sleeper
To cold reality
Recognize the truth
Bitter as it be
If we're to face the future
Our eyes must begin to see
Awaken now sleeper and rise
Awaken now sleeper and stand up
See through the illusion and lies
Awaken now sleeper and rise
Awaken now sleeper and rise
Awaken now sleeper and stand up
Take back control of your life
Awaken now sleeper and rise
◉Dropdead(ドロップデッド)は、1991年にアメリカ・ロードアイランド州プロビデンスで結成されたハードコアパンク・バンド。「Awaken Sleeper」は2002年2月に発表されたTotalitärとのスプリットEPに収録。
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。


































































