Rooftop ルーフトップ

COLUMN

トップコラムISHIYA 異次元の常識第82回「生きてりゃそのうちわかるだろ」

2回「生きてりゃそのうちわかるだろ」

第82回「生きてりゃそのうちわかるだろ」

2026.08.17

R-2387017-1288261292.jpg

Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

流れに身を任せる柔軟さと、何にも縛られない自由さを持ち合わせ、葛藤を詩的に表現する抜群のセンスを持っていたJHAJHA

 2026年7月25日、元LIP CREAMのボーカルで、その後JUDGEMENTでも活躍し、最近は桑名六道やジャジャ岩城として弾き語りでも活動していたJHAJHAが亡くなったと、友人から連絡があった。
 6月23日に鉄アレイのKAKIが亡くなったばかりだというのに、連続の訃報で正直ダメージがデカい。
 月イチの連載コラムで、2回続けて友人の訃報を伝えるなんて、いったいどういうことなんだ……。
 
 KAKIは親友だった。JHAJHAは友人だと思っているが、先輩であり多大な影響を受けたボーカリストでありPUNKSだった。
 LIP CREAMの生き様に、どれだけ影響を受けたか。その偉大で素晴らしくかっこよく、最低で最高なバンドのメンバーは、もうひとりしかいなくなってしまった。
 
 2024年にLIP CREAMのPILLさんが亡くなり、BASTARD、JUDGEMENTのIIZAWAが亡くなり、2025年には一緒にライブに出演していたインドネシアのSERINGAIのリッキーが目の前で亡くなり、ASYLUMのGAZELLEが亡くなり、いつも被災者のボランティアに駆け回っていたゆかりちゃんが亡くなってしまった。
 そして2026年になり、3月にGABBAが亡くなり、6月には大阪にあったライブハウスEGGPLANTのケイヤンが亡くなり、マレーシアのMAGNICIDEのIemが亡くなり、その後すぐにKAKI、そしてJHAJHA……。
 この3年足らずの短期間に、あまりにも多くの仲間がいなくなってしまった。
 いったい何が起きているんだ。あまりにも死にすぎている。俺には整理がつかない。
 
 正直、ネガティヴな感情に持っていかれる。ダメだとわかっていても、どうにもならない。
 今の世の中を見てみろ。こんなに酷い有様で、希望なんかひとつも持てない。弱者を見ようともせず寄り添うこともしない政治家たちと、何も変わらない人間が社会の大多数を占めている。
 SNSでは文句ばかり。不平不満やストレスのはけ口として、片手でスマホを操作しながら誰かや何かを吊し上げて満足する。
 戦争は絶え間なく続き、弱いものは弱いまま、強者の理屈で命を奪われ続ける。
 金がねぇところには金は集まらず、金のあるところにだけ行きやがる。
 そんな世の中なら、おさらばしたほうがよっぽど楽だ。よっぽど苦しまずに済む。
 
 ああ、俺は何を言っているのだろう。そんなもの、ただの独断と偏見じゃないか。こんなことを書く必要などどこにあるんだ。
 あまりにも混乱しすぎてまとまらない。俺の友人たちが俺に伝えてくれたと思っていたことは間違いなのだろうか。
 
 どうしようもなく悲しくて寂しい気持ちに支配されてしまう。
 それでも生きなければ、生きなければともがき、あがく。
 
 だが、生きていればいいことがあるのだと信じ続けるのも疲れてきた。
 心配させようとしているわけじゃない。大丈夫だから安心してくれ。
 ただ、死んでいった者たちを思うと、ネガティヴな感情に支配されてしまう。
 それほど、仲間の訃報が続いたことで混乱している。
 生きることの苦しみに、抗ってきた仲間たちだ。その仲間がどんどん減っていく。みんないなくなってしまう……。
 
 ありきたりの言葉しか出てこない。死んでいった者たちの分まで、あいつらが生きたかった一分一秒、一日一日を無駄にしない。
 何度そう思えばいいのだろう。
 俺がその気持ちを忘れてしまっているのか?
 だからみんな死んで教えてくれているのか?
 どうして俺はこんなにわがままな考えになってしまうんだ。
 独りよがりも大概にしろ。
 死をもって証明されるのは生き様だ。
 
 JHAJHAはひねくれたやつだった。単純さとは縁遠い思慮深さがあり、ともすれば嫌味にすら聞こえるようなことも言う人間だった。
 でもなぜか、親しみを感じていた。LIP CREAMのメンバーの中でも、JHAJHAだけは「さん」や「君」をつけずに呼び捨てだったし、年齢もひとつ上の同世代だと思っていた。
 だが、亡くなったときに初めて実年齢を知った。全然先輩だったことを、死んでから知った。
 それほど、生きている間に上下関係というものを感じさせない、細やかな心づかいを持った人間だった。
 時には強く、時には弱く、そして流れに身を任せる柔軟さと、何にも縛られない自由さを持ち合わせ、葛藤を詩的に表現する抜群のセンスを持っていた。
 
 LIP CREAMのときのJHAJHAのかっこよさは、ファッションやルックス、ステージング、歌詞、歌、その全てが、俺には絶対に真似のできないものだった。
 他のメンバーも全員ベクトルが違う方向を向いていて、そのバラバラの個性がバラバラの方向のままひと塊となって怒涛のように押し寄せてくるライブに、かっこ悪かったものはひとつもなかった。
 
 俺はLIP CREAMに学んだんだ。生き様というものを、PUNKとは何かというものを。
 大きな声では言えない悪いことの先生でもあったしね。
 
 どうしようもない気持ちが晴れない。だが、押しつぶされるわけにはいかない。
 みんなから教わったことを胸に刻み、俺は生きていく。
 
 生きること、それが最低限の愛だ。
 
 さて、どうしようもねぇけど、クソみてぇな世の中だけど、生きてりゃそのうちわかるだろ。
 イノチの全開。死人に口なし死に行く春。もっとおもしれェことあんだろ?
 シンプルがあるだけだよなぁ、JHAJHA。

JUDGEMENT『シンプル』

ヘイあつらもこの狂った街で
シアワセ探してる
せっまい通りでハダよせシワヨセ
今日を探しているのさ
自分の仕事やコイビトの事
うじうじなやんでいるみたい
ぜんぶウソさ本当さウソさ
今すぐわらいとばせ(だけど)
 
シンプルでありたいのさ
シンプルがあるだけなのさ
 
ああ この街の空の上
とうとうまばゆい光が
全ての生き物の命が
原子のチリに分解される時
その時もテンパッタあいつ
うじうじなやんでいるみたい
その時もテンパッタあいつ
眠れず自分を探してる(だから)
 
シンプルでありたいね
シンプルがあるだけなのさ
シンプルでありたいね
シンプルに生きたいね
 
 
◉JUDGEMENTは、BASTARD解散後にギタリストのZIGYAKUを中心として1990年代前半に結成されたハードコア・パンクバンドで、疾走感と重厚感のある独自のハードコアサウンドを展開。「シンプル」は、2000年9月にHG FACTよりリリースされたEP『JUST BE...』に収録。同作のメンバーは、ギターがZIGYAKU、ドラムが元DEATH SIDEのMUKA-CHIN、ボーカルが元LIP CREAMのJHAJHA、ベースが元SCREAMING HOGのさくらという新たな編成だった。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
このアーティストの関連記事

ele-king books『異次元の常識 ─ パンク/ハードコアの思想とメッセージ』

著者:ISHIYA
価格:2,750円(税込)
判型:四六判
頁数:320ページ(予定)
発売日:2026年6月5日
商品コード:ISBN-13 9784911484104
発行:株式会社Pヴァイン

amazonで購入

【内容】
DEATH SIDE、FORWARDのボーカルとして40年以上にわたり日本のハードコア・パンク・シーンの先頭に立って活躍し、近年では『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』『右手を失くしたカリスマ MASAMI伝』などシーンの歴史を伝える語り部として多くの著作をもつ著者が、戦争や差別への抗議、ヴィーガニズムと動物解放の精神など、パンク/ハードコアが訴えてきた様々なメッセージとその思想を解説する。
『Rooftop』連載コラムからセレクトしたコラムや書き下ろしに加え、海外アーティストにその「思想」を訊ねた貴重な長文インタヴューを収録。

目次より
前書きにかえて「愛で支配される世の中を夢見て生きる」

序章 パンクへの目覚め
第一章 差別・排除・多様性
第二章 政治・選挙・抗議
第三章 SNS・情報社会・共感/分断
第四章 気候危機・消費社会・経済
第五章 ジェンダー・アイデンティティ
第六章 動物搾取・命の選別・暴力の構造

インタヴュー:
ペニー・リンボー(元CRASS)
デイヴ・ディクター(MDC)
ディック・ルーカス(SUBHUMANS/CITIZEN FISH/CULTURE SHOCK)
ブライ・ドゥーム(DOOM)
チョーチョー(THE REBEL RIOT)
ボブ・オーティス(DROPDEAD)

COLUMN LIST連載コラム一覧

  • 最鋭輝『私は今日までムードで来ました!』
  • PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
  • おじさんの眼
  • ロフトレーベルインフォメーション
  • イノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』
  • ISHIYA 異次元の常識
  • 鈴木邦男(文筆家・元一水会顧問)の右顧左眄
  • レズ風俗キャストゆうの 「寝る前に、すこし話そうよ」
  • 月刊牧村
  • 「LOFTと私」五辺宏明
  • 絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
  • おくはらしおり(阿佐ヶ谷ロフトA)のホントシオリ
  • 石丸元章「半径168センチの大問題」
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の歴史のふし穴
  • 煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜
  •  朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」
  • 今野亜美のスナック亜美
  • 山脇唯「2SEE MORE」
  • 大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」
  • 能町みね子 新中野の森 アーティストプロジェクト
  • 能町みね子 中野の森BAND
  • アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生
  • 戌井昭人の想い出の音楽番外地
  • さめざめの恋愛ドキュメンタリー
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の ああ夢城
  • 吉田 豪の雑談天国(ニューエストモデル風)
  • ゲッターズ飯田のピンチをチャンスに変えるヒント
  • 最終少女ひかさ 但野正和の ローリングロンリーレビュー
  • 吉村智樹まちめぐ‼
  • いざゆかんとす関西版
  • エンドケイプの室外機マニア
  • 日高 央(ヒダカトオル)のモアベタ〜よ〜
  • ザッツ団地エンターテイメン棟
  • 劔樹人&森下くるみの「センチメンタル「非」交差点」
  • 三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン
  • ポーラーサークル~未知なる漫画家オムニバス羽生生純×古泉智浩×タイム涼介×枡野浩一
  • the cabs 高橋國光「アブサロム、または、ぼくの失敗における」
  • “ふぇのたす”ちひろ's cooking studio
  • JOJO広重の『人生非常階段』〜今月のあなたの運勢〜
  • マリアンヌ東雲 悦楽酒場
  • 大谷雅恵 人生いつでも初体験
  • ジュリエットやまだのイケメンショッキング
  • ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門
  • 岡留安則 “沖縄からの『書くミサイル』”「噂の真相」極東番外地編
  • 高須基仁 メディア論『裏目を読んで半目張る』
  • 田中 優 環境はエンタメだ!
  • 雨宮処凛 一生バンギャル宣言!
  • 大久保佳代子 ガールズトーーーク!!!!!
  • DO THE HOPPY!!!!!

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻