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トップコラムISHIYA 異次元の常識第80回「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」

0回「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」

第80回「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」

2026.06.12

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Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

「事実」という名の解釈によって「現実」として実際に起きていることが見えなくなる

 個人的な話になるが、6月5日にele-king booksから発売された自著『異次元の常識 ─ パンク/ハードコアの思想とメッセージ』は、この連載コラムが書籍化されたものだ。
 このコラムは無料で読める。そのため書籍化にあたり、俺の尊敬するHARD CORE PUNKSたちにインタビューを行なった。
 
 ペニー・リンボー(元CRASS)
 デイヴ・ディクター(MDC)
 ディック・ルーカス(SUBHUMANS/CITIZEN FISH/CULTURE SHOCK)
 ブライ・ドゥーム(DOOM)
 チョーチョー(THE REBEL RIOT)
 ボブ・オーティス(DROPDEAD)
 

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 この執筆にあたり、過去のコラムには大幅な加筆修正を行なった。ウェブ上の連載で読めるものとは、かなり違った内容になっている。
 このコラムでは、毎回さまざまなテーマを切り口にしている。だが一話の中でつながりを明確にし、歌詞を交えながら、ひとつの話として完成するように書いてきた。
 書籍化では、各章のテーマごとに話の内容を加筆修正し、掲載する歌詞の位置も変えた。削除した歌詞もあれば、新たに追加した歌詞もある。
 その作業の中で、ひとつ大きく変化した部分があった。
 「事実」という言葉の使い方だ。
 
 2025年の年末ごろだったと思う。ある言葉が目に入った。19世紀に生きたドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉として知られる一節だ。
 
 「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」
 
 これは著作として刊行された文章ではなく、ニーチェの未発表ノートに残された「Es gibt keine Tatsachen, nur Interpretationen」という一文に由来するものらしい。
 俺はその言葉を目にし、「なるほど!」と唸ってしまった。
 
 それを受け、書籍化の加筆修正でも「事実」という言葉をできるだけ使わないようにした。英文と翻訳の都合で、インタビューの質問部分に一箇所だけ残った部分はある。だが基本的には、タイトルや連載時に使っていた「事実」という言葉をすべて修正した。
 俺はそれまで「事実」という言葉に、どれほど依存していたのだろうか。その言葉を使えば、あたかも自分が正しいことを言っているかのように思い込んでいたのかもしれない。ニーチェの言葉は、そこにハッとさせてくれた。
 
 「事実」が解釈だと言われてみると、なるほどすべてに納得がいく。
 一方は、自分が「正しい」という解釈のもとに「事実」という言葉を使う。だが、もう一方にも、自分が「正しい」と思っている解釈がある。
 ほとんどの言い争いのような状況は、その軋轢によって生じているのではないかと感じたのだ。
 
 これはよく起きる現象で、ストレートエッジやヴィーガニズムへの誤解にも、解釈によって現実の見え方が変わってしまう場面が多くあるように思う。
 ストレートエッジは、煙草、アルコール、ドラッグを摂取せず、快楽を目的としたセックスをしないという信条のため、窮屈だと思われがちだ。
 一方、ヴィーガニズムは、人間であれ動物であれ、あらゆる搾取や暴力、差別に極力加担しないことを信条とする生き方で、こちらもまた、極端な思想のように受け取られがちだ。
 
 おそらくだが、どちらも解釈の違いによって、現実が見られていないように感じられる。
 俺はニーチェの言葉をきっかけに「現実」と「事実」を同じものとしては捉えないようになった。
 同じものとして捉えてしまうと、「事実」という名の解釈によって「現実」として実際に起きていることが見えなくなるのではないだろうか。
 
 ストレートエッジの発祥は、俺個人の見解では、アメリカでの未成年者に対する配慮から始まったものだと思っている。
 アメリカでは未成年者へのアルコール販売が非常に厳しい。俺は何度もアメリカツアーで各地を回ってきたが、ラスベガスのメインストリートとニューオリンズ以外で、屋外で自由に酒を飲める街はほとんどなかった。
 ライブへの入場も、アルコール販売がある場合には未成年者が入れないことが多い。
 そうしたアメリカシーンの状況から、未成年者の手に×印を書き、酒を出してはいけない相手だと示す目印にした。その印が、やがて象徴のようになっていったのだと記憶している。
 その意識は、現在の“ALL AGE SHOW”(全年齢入場可能なライブ)という形につながっているようにも思う。
 アルコールやドラッグがはびこっていたハードコアパンクのアンダーグラウンドシーンで、未成年者を締め出さないために生まれた行動が、ストレートエッジというムーヴメントにつながっていったのだと俺は思っている。
 
 一方、ヴィーガニズムは、あらゆる搾取や暴力、差別に極力加担しないことを信条とする生き方だ。
 その信条は、同じ構造のもとに成り立つ搾取や暴力を見ており、戦争や虐殺、性暴力、環境破壊や拝金主義、資本主義による消費社会への抵抗でもある。
 
 どちらも、未成年者や搾取される側のように、自分の力だけではどうにもできない現実に直面している側に寄り添い、配慮した意識のもとに生まれた生き方である。
 この「現実」が見えていないと、多数の「解釈」によって認識が捻じ曲がっていく。
 
 自分の解釈による「事実」が正しいと思うのは、みんな同じだと思う。もう一度、ニーチェの言葉を思い出してほしい。
 
 「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」
 
 誰も彼も、自分「だけ」が正しいと解釈しているものを「事実」として扱っているのではないかと、俺は感じる。だからこそ、現実が見えていないとも言えるだろう。
 現実を置き去りにした自分「だけ」の解釈を言い合って、いったい何が解決するんだ?
 「それはお前も同じだろう」と言われるかもしれない。
 だが、考えてみてほしい。本当に同じなのか?
 
 自分ではどうにもできないことが誰にでもある。その悔しさや苦しみ、悲しみや痛みがあるという「現実」をまず見てくれないだろうか。
 自分の解釈による「事実」を盾に他者を責めることと「現実」を見て他者の痛みを見捨てないことを、同じものとして扱っていいのだろうか。
 
 戦争を決める奴らの「解釈」によって、いわれのない理由で殺されていく命がある。
 ただ普通に生をまっとうしているだけなのに、誰かの「解釈」によって殺される命がある。
 勝手な「解釈」を「事実」として押し付けられ、搾取され、苦しむのはいつだって弱い立場に置かれた命だ。
 強者の「解釈」による「事実」を押し付けられ、戦争に行かされ、見も知らぬ赤の他人を殺さなければならない「現実」がある。
 その「現実」の中にあるのは、死だ。
 
 死にたくないという思いは「現実」なのか、それとも「解釈」による「事実」なのか。
 死は「現実」だ。
 死にたくないという思いも、殺された命も、残された死体も「解釈」では消えない。
 それを消したことにするなら、そんなもん、命を命と見ていないあいつらと同じじゃないか。
 死を誤魔化し、言い訳しないでくれ。
 殺していいと思っているのは、いったい誰の解釈なんだ。

THE DAMNED『GENERALS』

傷だらけになった大都市
復讐はそれほど甘くはない
かつて誇り高く
かつてあれほど敬虔だった彼らは
疲れ果て
弱りきっている
彼らは東から西へやって来た
犠牲の大きさを数えながら
赤い星がまもなくやって来る
彼らはすべてが失われたことを知っている
 
そして傷ついた者たちだけが残る
将軍たちはみな勝負から降りた
戦う意志もなく
彼らは光とともに消えていく
責任をなすりつけられる相手はもう誰も残っていない
 
かつて退廃だったものは
いまや焼け野原でしかない
終わりは間近に迫り
大都市はもはや壮大ではない
彼らは来て、見て、征服した
人々は恐怖の中に隠れた
彼らは略奪し、強姦し、奪い尽くした
怒れるロシアの熊
 
そして傷ついた者たちだけが残る
将軍たちはみな勝負から降りた
戦う意志もなく
彼らは光とともに消えていく
責任をなすりつけられる相手はもう誰も残っていない
 
帝国議会には赤旗が掲げられ
終わりを告げている
党はいまや最悪だ
自殺
終焉
黄金時代がこの先に待っていると考える者もいる
指導者たちはもういない
地下壕で死んでいる
 
そして傷ついた者たちだけが残る
将軍たちはみな勝負から降りた
戦う意志もなく
彼らは光とともに消えていく
責任をなすりつけられる相手はもう誰も残っていない
 
そして傷ついた者たちだけが残る
将軍たちはみな勝負から降りた
戦う意志もなく
彼らは光とともに消えていく
世界中が狂っていく
 
Chat GPTで翻訳しました。
 
THE DAMNED『GENERALS』
Big city all scratched out revenge is not so sweet
Once proud once so devout they're tired and they are weak
They came from east to west counting up the cost
Red star soon to arrive they know that all is lost
 
And only the wounded remain
The generals have all left the game
With no will to fight
They'll fade with the light
There's nobody left they can blame
 
What once was decadence now's nothing but razed land
The end so imminent big city's not so grand
They came they saw they conquered people hid in fear
They looted raped and plundered angry Russian bear
 
And only the wounded remain
The generals have all left the game
With no will to fight
They'll fade with the light
There's nobody left they can blame
 
Reichstag flies red flag signaling the end
Party now bad bad suicide the end
There's some who think that golden years might lie ahead
No leaders anymore in the bunker dead
 
And only the wounded remain
The generals have all left the game
With no will to fight
They'll fade with the light
There's nobody left they can blame
 
And only the wounded remain
The generals have all left the game
With no will to fight
They'll fade with the light
The whole world is going insane
 
 
◉THE DAMNEDは1976年に結成、今なお現役を続けるイギリスのパンク・バンド。「GENERALS」は、キャプテン・センシブルがベースからギターに楽器を持ち替え、またサポートキーボードにローマン・ジャグを迎えた新編成によるDAMNEDが1982年に発表した5thアルバム『Strawberries』に収録。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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ele-king books『異次元の常識 ─ パンク/ハードコアの思想とメッセージ』

著者:ISHIYA
価格:2,750円(税込)
判型:四六判
頁数:320ページ(予定)
発売日:2026年6月5日
商品コード:ISBN-13 9784911484104
発行:株式会社Pヴァイン

amazonで購入

【内容】
DEATH SIDE、FORWARDのボーカルとして40年以上にわたり日本のハードコア・パンク・シーンの先頭に立って活躍し、近年では『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』『右手を失くしたカリスマ MASAMI伝』などシーンの歴史を伝える語り部として多くの著作をもつ著者が、戦争や差別への抗議、ヴィーガニズムと動物解放の精神など、パンク/ハードコアが訴えてきた様々なメッセージとその思想を解説する。
『Rooftop』連載コラムからセレクトしたコラムや書き下ろしに加え、海外アーティストにその「思想」を訊ねた貴重な長文インタヴューを収録。

目次より
前書きにかえて「愛で支配される世の中を夢見て生きる」

序章 パンクへの目覚め
第一章 差別・排除・多様性
第二章 政治・選挙・抗議
第三章 SNS・情報社会・共感/分断
第四章 気候危機・消費社会・経済
第五章 ジェンダー・アイデンティティ
第六章 動物搾取・命の選別・暴力の構造

インタヴュー:
ペニー・リンボー(元CRASS)
デイヴ・ディクター(MDC)
ディック・ルーカス(SUBHUMANS/CITIZEN FISH/CULTURE SHOCK)
ブライ・ドゥーム(DOOM)
チョーチョー(THE REBEL RIOT)
ボブ・オーティス(DROPDEAD)

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