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COLUMN

3回「STAND!」

第33回「STAND!」

2022.06.14

SLY & THE FAMILY STONE.jpg

text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

「生命より金」そんな世界を終わりにしなくてはならない選択のときが、目の前に迫っている

 2022年5月29日号の赤旗新聞日曜版によって、安倍元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会に、サントリーホールディングスが政治資金規正法で禁じられている「違法な企業献金」に当たる可能性が高い「酒類の無償提供」を行なっていることが分かった。サントリーからの酒提供は、2016年以降2019年まで行なわれており、前夜祭では安倍元首相側の会費を上回る費用補填なども判明している。
 このサントリーの社長は、安倍政権下の2014年には、政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めている上に、サントリーは自民党の政治資金団体「国民政治協会」に対し、毎年500万円前後を献金している自民党とズブズブの企業であることが分かっている。(東京新聞web 5月28日:https://www.tokyo-np.co.jp/article/180005
 
 他にも安倍政権時代の古川貴盛元農林水産省大臣は、鶏卵販売大手のアキタフーズから「アニマルウェルフェアを推進されると経済的に打撃を受ける」といった理由で500万円の賄賂を大臣室で受け取っていた事件では、2022年5月26日に懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金500万円の有罪判決が古川元農水省被告に出ている。
 (アニマルウェルフェアとは、動物を「感受性のある存在」と捉え、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指す考え方「動物は生まれてから死ぬまでその動物本来の行動をとることができ、幸せでなければならない」とし、家畜のストレスが少なく、行動要求が満たされた健康的な生活ができる飼育方法を目指す畜産の在り方)
 
 このアキタフーズ収賄事件の有罪判決や、森友事件での近畿財務局職員赤木さんの自殺などを見ても、金儲けのためには生命を何とも思わないのが自民党政権だというのは明白である。そんな事件ばかりの安倍元総理の責任は重い。最低でも議員辞職の上、刑事罰懲役刑の実刑が望まれるところである。
 このような政権を踏襲する現自民党岸田政権では、25日の部会で国民の健康や生命に関わる国民健康保険を「2年後には現在の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードを保険証代わりにする」という方針を打ち出した。
 
 ちょっと待ってくれ。マイナンバーカードは任意の作成で、強制ではないはずだ。保険証を廃止してマイナンバーカードに統一するということは、事実上の取得強制であり法律違反ではないか。
 将来的にはマイナンバーカードと運転免許証の紐付も視野にあるとのことで、自民党に国民の個人情報の重要な事実が把握され、個人情報の漏洩リスクなどを考えても、恐怖以外の何ものでもない。「作らない」以外の選択肢があるのだろうか。
 政府は2022年度末までに、ほぼ全国民にマイナンバーカードを普及させる目標を掲げている。しかし普及率は2022年現在でまだ約4割ほどで、このままでは過去9年間で8800億円を投じた事業が失敗に終わるため、さらに1兆8000億円を投じようとしているというではないか。マイナポイントなどという目先のごまかしで、大切な個人情報を自民党に投げ出す国民が増えてしまったが、マイナンバーカードと保険証紐付の危険性を考えてみて欲しい。
 現在までならば、金がなくて保険料が払えない場合などに役所などに相談すれば、段階を踏んで様々な形で国民保険制度の適用はできるようになっている。
 その間に、少しずつでもいいから保険料を払えば国民健康保険は維持され、医療費の負担も3割で済む上に、保険料が払えない場合に公的支援などにも繋げてもらえたりする。
 しかし保険証とマイナンバーカードの紐付で、コンピューターの手続きだけで管理が全て済んでしまうようになると、相談する前にいきなり病院で「全額実費」と言われてしまう場合も出てくる可能性があるだろう。それまでに役所の説明もないため、困り果てる人も多く出てくることになりかねない。
 さらには現在政府の産業競争力会議などで「個人の責に帰するリスクに応じて保険料を増減できないか」という議論が起きているという。
 マイナンバーカードの保険証紐付きにより、個人情報をAIによってプロファイリングされ、「あなたの病気は自らの不摂生であるため、自己負担額を5割にする」といったことも起こりかねない。薬の使用制限の可能性もあるだろう。
 ヨーロッパでは、ナチスが行なった個人情報の収集や活用によってプロファイリングの規制があるが、日本の個人情報保護法には「プロファイリング」という概念すら存在していないという。
 (全国保険医療新聞2019年5月25日号:https://hodanren.doc-net.or.jp/news/iryounews/190525_mynum_krd.html
 
 ネットをやっていると、自分が検索したものなどからAIがプロファイリングした広告を目にする。同じようなことが、ネット検索とは比べものにならない重要な個人情報の塊であるマイナンバーカードによって、自民党管理のもと行なわれるということになる。
 日本ではどうなのか分からないが、すでに海外の医療では、患者の体のデータを使いコンピューターの計算によって出された答えで治療している部分もかなり多いという。
 将来的には個人のデータとAI、進化するコンピューターシステムにアルゴリズムがあれば、自分よりも先にコンピューターが病気の予想ができるようになるかもしれない。
 そうなると、まだ何も体に症状が表れていないのに「病気」ということにされ、それが自らの不摂生が原因だったとすると、症状がないのに5割6割、もしくは全額負担の治療費を取られるということにもなりかねない。自民党政権なら国民から搾取するためには手段を選ばないだろう。
 それほど今のコンピューター技術は発達していると言っていいと思う。その技術を健康や国民のために使ってくれるなら、まだ分かる。しかしこのまま行けばそれらを操るのは、金や自分たちの保身のためには何でも都合のいいようにデッチ上げるお家芸の自民党政権である。どんなホラーやサスペンス、パニック映画よりも恐ろしい現実が国民たちに降りかかるだろう。
 金のために生命を蔑ろにし、経済界が望む金儲けのために国民を抑圧し、労働賃金が上がることもなく物価ばかりが高騰し、自分たちや大企業のためだけの政治を行なう自民党が、恫喝と同等の行為でマイナンバーカードの取得を強制しようとしている。
 「生命より金」
 そんな世界を終わりにしなくてはならない選択のときが、目の前に迫っている。
 少なくともあなたがその意思を持てば、あなたの世界はあなた自身で変えることができるんだ。立ち上がれ!
 
 
SLY & THE FAMILY STONE『STAND!』
 
立ち上がれ!
結局のところ お前はお前でしかない
すべては 自らが招いたことさ
だから立ち上がれ
お前にはお前の苦しみがある
どこへ行くにも 耐えるべき困難はあるんだ
立ち上がれ!
お前の知ってる正義のために…
誠実さというヤツが みんなをガンジガラメに縛ってるんだ
だから立ち上がれ!
お前の望むものすべてが真実だ
成就させるのはお前の力だ
取引はナシさ
スタンド、スタンド、スタンド
スタンド、スタンド、スタンド
 
立ち上がれ!
お前はあまりにも長くじっとしていすぎた
善悪の判断にまで 折り目がついちまってるぜ
だから立ち上がれ
小さな奴が背伸びをするそのそばで
巨人が今にも倒れようとしている
スタンド、スタンド、スタンド
スタンド、スタンド、スタンド
 
立ち上がれ!
奴らはお前をねじふせようとし
お前が何を言ってるかなんてわかっちゃいない
だから立ち上がれ
お前は自由なんだ
少なくともお前がその意思を持てば
立ち上がれ!


◉SLY & THE FAMILY STONE(スライ&ザ・ファミリー・ストーン)は、1960年代後半から70年代前半にかけて激動期のアメリカで、人種やファンク~ロックという音楽ジャンルの壁を越え、社会に対するメッセージ性の高い作品を数多く発表した人種性別混合編成バンド。“STAND!”は1969年に発表された4作目のアルバム『STAND!』のタイトルトラック。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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