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COLUMN

2回「人間狩り」

第12回「人間狩り」

2020.09.05

異次元の常識 text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)
 

俺たちは殺し合いをするために生きているのではない、対立するために生きているのではない

 2020年8月16日頃から、ネット上でAmazonプライム解約運動というハッシュタグにより、Amazonプライムの契約を解除する人間が多数出る事態となった。
 ことの発端は、自称国際政治学者の三浦瑠麗という人物のCM起用によるもので、この人物は徴兵制を進めていたり、他国の工作員が民間に潜んで破壊工作をするスリーパーセルの存在を昼間の地上波で言い放つような人物である。
 
 徴兵制を推進しながら、関東大震災のときに朝鮮半島の人々が虐殺されたデマの原因と同様の発言をするということは、現在でも差別に晒され続けている在日朝鮮人の気持ちを推し量ることもできない人物であり、民族間の対立を煽り、差別を扇動し、戦争に突き進む行為と取られても仕方がないだろう。
 そんな人間であり、タレントでもなく学者としての実績もない人物をCMに使ったAmazonは、その思想に賛同していると思われても仕方がなく、不買運動を起こされるのは至極当然の結果である。
 危険なのは、こうした人物を公共の電波に乗せ発信し続けることで「あのCMの人だ」というように、人々の意識に刷り込まれることだ。
 自民党安倍政権が日本憲政史上最長の政権となってしまうような国民であり、「朝鮮人を殺せ」と叫びながらコリアンタウンを闊歩するレイシストの都知事候補が18万票も取ることを考えれば、スリーパーセル発言の解釈次第では今後関東大震災での朝鮮半島の人々の虐殺に準ずるようなことが起こりかねない。
 ルワンダで起きた虐殺のきっかけが、根も葉もない差別扇動のラジオ放送だったように。
 
 安倍政権擁護の人間が垂れ流す妄言を信じる民衆が、この国の多数となっている。その上で憲法が改悪され、戦争のできる国になり、徴兵制が復活し、人種差別がまかり通る国になったときに、公共電波やマスコミが何をするか想像できないのか?
 人を人とも思わない政権のケツを舐めまくる著名人を起用する企業を許していたら、この先どんなことになってしまうのか少しは想像を働かせて欲しい。
 俺たちは徴兵されて戦争へ行き、知らない国の会ったこともない人間と殺し合いをするために生きているのではない。
 民間に工作員がいると疑心暗鬼になって、人種差別をして対立するために生きているのではない。
 
 1980年代初期、日本のハードコアパンク創世記に女性Vo.CHITOSEを擁し、世界的にも評価の高いTHE COMESというバンドがある。
 現在でもBa.MINORUはEIEFITSで活動しているが、THE COMESの「人間狩り」という曲は80年代にもかかわらず、そうした危機に警鐘を鳴らせている。
 人を人とも思わぬ奴らにNOを突きつけろ!
 
「人間狩り」THE COMES
 
人間は機械に 機械になってゆく
尊重されるのは 一人だけの意志
 
人間は狩られる
機械として狩られる
正義の名のもとに 猟奇的になる
 
狂ったように人を 人を狩っていく
進歩の過程に 本能が顔を出す
あっちでもこっちでも 攻撃が始まる
誰も見えない目だ
どいつもこいつも やっちまえ
 
人間狩り
人間狩り
みんな一緒だ
誰でも同じだ
人間狩り
人間狩り
No No No No!
 
comes.jpg
 
GAUZE、G.I.S.M.、THE EXECUTEと共に“ハードコア四天王”と呼ばれたTHE COMESは1982年9月結成。「人間狩り」は1983年11月に『DOLL』誌のハードコア専門レーベル「DOGMA RECORDS」発表されたファーストアルバム『NO SIDE』に収録。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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