異次元の常識 text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)
取るに足らない盗人が有罪判決を受け、重大な犯罪者が保護される日本
2013年の秋に日本各地で公開され話題となり、2015年にはアンコールで再び全国で上映されたインディーズ映画があった。
インドネシア・ジャカルタのパンクバンド、MARJINALに迫ったドキュメンタリー映画『マージナル=ジャカルタ・パンク』である。
インドネシアのスハルト独裁政権時代に、学生運動で知り合ったマイクとボブが、インドネシアに革命を起こすために人々の心に伝える手段として結成されたパンクバンドがMARJINALである。
以下、MARJINAL「HUKUM RIMBA」の歌詞より抜粋。
法は深い闇の谷間に葬られている
正義を反映していない
弁護士、陪審員、裁判官と検察官
みんな一つのことだけで判断を下す…金!
法はコントロールされている
金を有する者たちによって
法はもてあそばれている
権力を公使する者によって
取るに足らない盗人が有罪判決を受け
重大な犯罪者は保護される
正義はどこにあるのか
階級が見えるか
権力者が常に支配し
弱者は常に惨めであることを強いられている
2020年1月に初のコロナ感染者を出し、政府の杜撰すぎる対応により2月以降感染が拡大され続け、保障の全く行き届かない緊急事態宣言や自粛要請のおかげで国民の生活がひっ迫する中、6月になってもまだ10万円の給付金すら国民には届いていない。
3カ月間の保障が10万円という信じられない政策であるが、個人事業主には最大200万円まで給付される持続化給付金制度というものもある。しかし複雑な手続きと、前年度対象月の50%以下の収入という条件により給付を受けられない個人事業主が多く存在する。子どもが学校へ行き、都内の賃貸に住んでいる家族の世帯主の収入が、月30万円から16万円に減っても給付はされない。
ここまで追い詰められている国民を尻目に、持続化給付金事業は796億円の契約額で経産省の内局により創設された官製の組織であり、ほとんど実態がないと言われる「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に委託している。そして持続化給付金事業は、この協議会から電通に再委託され、電通からさらに子会社へ委託され、電通と子会社は委託金から107.5億円を中抜きしていることがわかり、波紋を広げている。
電通といえば、東京オリンピック招致委員会から約9億円の資金を受け取りIOC委員にロビー活動を行ない、東京オリンピックを招致したとしてフランス捜査当局が調べている元専務の高橋治之がいた会社であり、テレビを牛耳る日本最大手の広告代理店である。
国民には10万円すら届かないどころか、税金が搾取される構図が暴かれた。オリンピックも給付金も国民のためではない。金に群がる政府と電通、大企業だけのものだ。
もう国民は充分すぎるほどに被害を被った。取るに足らない盗人が有罪判決を受け、重大な犯罪者が保護される安倍政権を終了させなければ、弱者(国民)は常に惨めであることを強いられる。
インドネシアでパンクといえばこのバンドであり、ストリートチルドレンから大人まで、インドネシアのパンクスなら知らない者はいないMARJINAL。ギターボーカルのマイクとベースボーカルのボブの2人により、1996年に結成。「HUKUM RIMBA」は2009年発表の『PARTAI MARJINAL』に収録。
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。