友人がプロデューサーを務めている、大石規湖監督によるthe原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』がいよいよ明日10月24日(土)より劇場公開されます(都内は新宿K's cinema)。
本作はパンクロックも原爆オナニーズも詳しくなくて全然オッケー、むしろパンクも原爆も何も知らない人ほどご鑑賞いただきたい優れたドキュメンタリー作品です。
多少なりとも音楽に関心のある人なら誰でも楽しめて、そしていろいろと考えさせられるでしょう。
自分がやり続けたいことと、生活と仕事のバランスを保つにはどうすれば良いのか。
それも情報や文化が東京に一極集中する日本の地方都市で。
一貫して活動の基盤を名古屋に置く原爆オナニーズはそうした命題を38年間バンドを継続させることで体現しています。
バンドと生活をいかに両立させるかというテーマは川口潤監督によるbloodthirsty butchersのドキュメンタリー映画『kocorono』でも描かれていましたが、『kocorono』がそのバランスを取る上でもがき続けているさなかだったのに対し、『JUST ANOTHER』はある種の悟りというかゆとりを感じます。
ただしバンドを続ける上での余裕は皆無。理想とするサウンドやアンサンブルに到達しない苛立ちをTAYLOWさんがメンバーに容赦なくぶつけるシーンもあります。
作品自体はコロナ禍前に撮影・編集されたものですが、ライブ開催がままならず、リモートワークが浸透したことで地方での生活が見直されている今こそ観るべき作品だと思うし、この時代を生きるさまざまなヒントがメンバーの言動に見え隠れしている気がします。
けれどもこれはあくまで《case of the原爆オナニーズ》の物語なわけで、誰しもが納得する道標というわけはありません。
そもそも万人に受け入れられる明確な答えなんて出るわけがないし、そういう誰かに御膳立てされた答えに真実はないし、答えを出すのはいつだって自分自身。それはパンクが教えてくれた大切なことの一つです。
少しだけお手伝いさせてもらったパンフレットもぜひ読んでください。
森直人さんの論評がとにかく素晴らしいので。この名文を読むだけで買い求める価値があります。