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編集無頼帖

キャバレー"SHO-WA"

2010.10.18

SN3F1213.jpg週もまたいでしまいましたが、それまでの2公演をブログで取り上げていた以上、最終日の掛け値なしに素晴らしかった演目のことを書かないのはどうも座りが悪いので、遅まきながら一筆…。
怒髪天の“Neo-JAPANESE STANDARD”3日目、『キャバレー“SHO-WA”』と題されたライブ…と言うよりも興行と書いたほうが相応しい一大歌謡ショーは、構成、演奏、雰囲気、どれも文句なしに今年見たすべてのライブの中で余裕で五指に入る内容。この3日間の中でも体感時間が一番早かった。鶯谷の駅を降り立った瞬間に視界に飛び込んでくるいかがわしいラブホテルやキャバレーの電光看板、会場近くのドヤ街然とした呑み屋の佇まいにまずシビレる。元々グランドキャバレーだったという東京キネマ倶楽部には今回初めて足を踏み入れましたが、大正時代の古い洋館を思わせる3階吹き抜け構造で(ビルの6Fにあるのに不思議な感覚)、『キャバレー“SHO-WA”』という演目はここ以外に考えられないってな印象。
そんなどこを取っても昭和な風情に酔いしれて酒も進む中、いきなり一発目に『傷だらけの天使』のテーマと来たもんだからさァ大変。ゲストに迎えた勝手にしやがれのホーン・セクション[田中 和(tp)、福島 忍(tb)、田浦 健(ts)、飯島 誓(bs)、斉藤淳一郎(p)]が参加して初めて成立する名演に心の根っこを鷲掴みにされ、思わず魚肉ソーセージをかぶりつきながら牛乳を飲みたい気分になってきた。井上堯之好きな友康さんが実に気持ち良くギターを弾いているのが印象的でした。それと、ステージの下手に一段高い円形の別ステージ〜階段があって、曲の終盤でその円形ステージの袖から増子さんがダンディな出で立ちで登場する演出も凄く絵になっていました。続く『情熱のストレート』は発表当初から友康さんの脳内ではホーンが鳴り響くイメージだったとのことで、その言葉通りホーンとの相性は抜群。『全人類肯定曲』も“豪華管楽器隊参戦編”を初めて生で聴けて興奮したし、本編最後の『オトナノススメ』も真に迫るものだったし、恐らくは時間の限られた中でのリハーサルだったはずなのにバンドとの息がピッタリだったのは舌を巻きました。オリジナルはホーンが入ってないという新曲『ハッピー バースデイ マン』のホーン・アレンジ・バージョンを聴けたのも貴重でしたね。
注目のカバーは演目早々に。「ロックでないヤツぁ!?」という増子さんのいつも掛け声と共に放たれたのは越路吹雪のほうの『ろくでなし』、その後に『ロクでナシ』が披露されるというニクい畳み掛け。『ろくでなし』、ワハハ本舗の梅ちゃんばりに鼻からピーナッツ攻勢があったらどうしようかとヒヤヒヤしましたが(笑)、場末のキャバレー感漂うスインギンな歌と演奏に心地好く酔えたです。
この日の個人的な大きな目当てのひとつがゲストの梶 芽衣子さんで、増子さんに導かれて下手の円形ホールから登場した女因さそりのオーラはやはり神々しいものでした。そして披露されるは『唐獅子牡丹』、まさかの怒髪天アレンジ・バージョン。最初は若干唄いづらそうかな? と思いましたが、その唄いっぷりと佇まいは昭和の銀幕スタァ特有の凛としたもの。シミさんと向き合ってリズムを取る姿がこれまた凄く格好いい。「去年怒髪天のステージに呼ばれて(『オールスター男呼唄 秋の大感謝祭〜愛されたくて…四半世紀〜』)凄く楽しくて、またいつか呼んでくれるのを心待ちにしていたのに、なかなか呼んでくれないから今日は私のほうから押し掛けちゃいました!」と実に嬉しいことを言ってくれる修羅雪姫。今回は増子さんとの絡みがなかったし、また別の機会に共演を果たして欲しいものです。
3公演の最後の最後を締め括ったのは、明るいサンバ調の曲なのに何故か涙が込み上げてくる『セバ・ナ・セバーナ』。いわゆるロック・バンド的なクールさはなくても十二分に伊達男っぷりを発揮するこの曲…と言うか、そもそも怒髪天の音楽とはそういうものですが、今年は夏冬のコンセプト・シングルで理屈抜き楽しめるエンターテイメント路線を貫く怒髪天の現時点での指針を存分に体現したのが今回の“Neo-JAPANESE STANDARD”3daysだった気がします。『プロレタリアン・ラリアット』のツアー千秋楽@赤坂ブリッツで『セバ・ナ・セバーナ』の時にうっかり落涙したのと同様、今回も底抜けに明るく楽しいライブだったのに最後はほろりと来たし、彼らが音楽と向き合う根幹はどれだけ枝葉や花の色が変わろうが不変なんだなとごく当たり前のことを感じたりして。とにもかくにも、この3日間でまた一層彼らの音楽を好きになれたことが一番の収穫だったと思います。

怒髪天 Neo-JAPANESE STANDARD『キャバレー“SHO-WA”』
2010年10月15日(金)東京キネマ倶楽部
SET LIST
01. 『傷だらけの天使』のテーマ(井上堯之バンド)
02. 情熱のストレート
03. ろくでなし(越路吹雪)
04. ロクでナシ
05. ナラクデサカバ
06. アフター5ジャングル
07. 悪心13
08. ビール・オア・ダイ
09. 労働CALLING
10. ハッピー バースデイ マン
11. 全人類肯定曲
12. ドンマイ・ビート
13. オトナノススメ
〜アンコール〜
14. 唐獅子牡丹(ゲスト・ヴォーカル:梶 芽衣子)
15. 喰うために働いて 生きるために唄え!
16. セバ・ナ・セバーナ

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PROFILEプロフィール

椎名宗之(しいな むねゆき):音楽系出版社勤務を経て2002年1月に有限会社ルーフトップへ入社、『Rooftop』編集部に配属。現在は同誌編集局長/LOFT BOOKS編集。本業以外にトークライブの司会や売文稼業もこなす、前田吟似の水瓶座・AB型。

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