帯にある通り「ラーメンから現代史を読み解く」という、一見アクロバティックに見える試みを見事成功させた名著! 戦後アメリカの食料政策による小麦の大量輸入〜大量生産技術の発展と流通網の整備によるラーメンの一般化〜国土開発の末の"ご当地"化......と、章を追って解き明かされていくラーメン史と現代史のシンクロニシティは鳥肌もの。どこの街にもラーメン屋があり、どこのコンビニでもカップラーメンが売られているこの国において、我々がつい見逃しがちなラーメンの特異性を浮き彫りにし、"ご当地ラーメン"の"偽史"まで暴きたて(とは言え本文中にもある通り、決して"ご当地ラーメン"を攻撃する意図がある訳ではないので要注意)、ひいては昨今様々なところで目にする"なんとな〜く"なナショナリズムの正体へと迫る鮮やか過ぎる手並みは、言わば一級のエンターテイナーのそれ。自称ラーメン博士・ラーメン通は星の数ほど居れど、この角度からラーメンにアプローチした者はいなかった(はず)。こうなるともう一つの"国民食"、カレーについての考察も、読んでみたいもんです。(前川誠)