音楽に賭けた若者たちの青春は、革命となった
1978年。わずか1年の間に、その後のロック・シーンに大きな影響を与えた若者たちのムーヴメントがあった。スマートフォンもSNSも存在しない時代、自分たちの音楽を、自分たちの手で届けようと、楽曲も録音スタジオもレコードもすべて自分たちで創り、新しい道を切り開いていく【D.I.Y.】のスピリットで音楽業界に風穴を開ける。メジャーしかなかった世界にインディーズというスタイルを生み出し、自主レーベルを立ち上げ、着席が常識だったライブにオールスタンディングを導入し、数多のバンドが集うロック・フェスを開催。いまや当たり前となったカルチャーの原点を築いたのは、カリスマでもスターでもない──ただ、自らの表現を信じて突き進んだ、若者たちだった。そして彼らが残した火種は消えることなく、日本の音楽シーンに計り知れない影響を与えていく──。
さる2月27日(金)に田口トモロヲ監督、名古屋パンクシーンの重鎮である
the原爆オナニーズ のTAYLOWによるレアなトークショーが名古屋センチュリーシネマで行なわれた。
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』舞台挨拶付き先行上映【名古屋】
【日時】 2026年2月27日(金)18:30~19:00
【会場】 センチュリーシネマ センチュリー1(名古屋市中区栄三丁目29-1名古屋パルコ東館8F)
【登壇者(敬称略)】 田口トモロヲ監督、TAYLOW(the原爆オナニーズ)
▲TAYLOW(the原爆オナニーズ)
大きな拍手に迎えられ、田口監督の「映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』ついに名古屋上陸でございます! 名古屋といえば“the 原爆オナニーズ”。本日はTAYLOWさんに来ていただいて大変嬉しいです」という挨拶でイベントがスタート。着席と同時にとあるチラシを観客に見せる田口監督。「昔、僕は“ばちかぶり”というバンドをやっておりまして、そこで原爆オナニーズと共演させて頂いてます。みんなに自慢するために持ってきました(笑)」と、監督自ら持参した当時のライブチラシであることを明かした。
TAYLOWからのアプローチにより交流が始まった2人。きっかけは「1985年の夏に原爆オナニーズがファーストアルバムを出す時に、渋谷のライブハウス『屋根裏』でライブをやるから『東京のバンドを呼びたい』と思って」“ばちかぶり”に声をかけたそう。
▲1985年に発表されたthe原爆オナニーズの1stアルバム『Nuclear Cowboy』
映画の感想を聞かれたTAYLOWは、「この映画を観て、自分の青春そのものだったので、涙が出そうになりました。映画で描かれている1978年、79年は、私もまるっきり(若葉竜也が演じた)主人公と同じことをやっておりました。『東京ロッカーズ』との関わりも、東京へ遊びに行った時に『今度、京大西部講堂でライブをやる』と教えてもらったのが始まり。当時は人と会えばすぐに連絡先を交換して、直接繋がっていくのが当たり前の時代でした」と語る。
田口監督は「東京ロッカーズ」について「憧れの存在でしたね。みんな年上で、強くて、中には怖い人も多かった(笑)。原作者の地引(雄一)さんはお優しい方でしたが、その背中を追いかけながら自分の活動を始めた感覚があります」と回顧する。
ここでMCから、劇中に登場するイベントにTAYLOWがスタッフとして参加されていた事実が披露されると、「そうなんです。THE STAR CLUBというバンドのスタッフをしていたので、劇中のシーンを見ていても『あ、これ(当時の自分なら)この後ろに立っているな』という場面がいっぱいありました」と語ると、田口監督は「こんな平和な舞台挨拶の日を迎えられるなら、TAYLOWさんに映画に出てほしかったですよ! あの頃はみんな怒ってましたからね(笑)」と本音を明かす場面も。
田口監督は「当時は、レコードを出すならメジャー契約が必須という価値観の時代。そこに『東京ロッカーズ』という、古い概念を壊して新しいシーンを作ろうとする人たちが現れた。彼らは崖っぷちに咲いた花のように孤高で、だからこそヒリヒリして格好良かったんです。今のようにファンが大勢いるわけではなく、客が15人、20人入れば『やった!』という世界。ギャラが1,000円を超えたらパンクスとしては大金持ちでした(笑)」と思い出を語る。
同じ時代を過ごしたTAYLOWが「映画の中で、登場して一番うれしかったのは、新宿ロフトです。『俺、このあたりにいた!』と思うシーンがいっぱいありました」と、劇中の再現度の高さを興奮気味に語ると、田口監督も「まさに歴史の目撃者ですね。当時の空気には、今にはない特有の緊迫感がありました。ステージに立つ側も『これをやらなければ死んでしまう』という切迫感があった。そこは嘘をつけない部分。当時のライブハウスはもう残っていないので、すべて美術でセットを組んだのですが、あまりの緻密さに中に入った瞬間、鳥肌が立ちました」と映画美術に自信をのぞかせる。
▲小滝橋通り沿いにあった時代の新宿LOFT
さらに、TAYLOWから「映画の冒頭に登場する渋谷『屋根裏』の当時の再現度はダントツでした。ロフトと屋根裏は、当時のバンドマンにとって憧れの聖地。そのシーンと再現度には、思わず『胸キュン』してしまいました」と告白。それを受けて田口監督は「あの原爆オナニーズのTAYLOWさんが『胸キュン』なんて言葉を使う時代になるとは! そこに、胸キュンしてしまいました(笑)」と大喜び。
▲田口トモロヲ監督
最後に観客へのメッセージとして田口監督は、「いま日本ではロック・フェスが盛んに行なわれていて、何万人と集まってるわけじゃないですか。ビジネスとしても成功しているワケですけど、本当にその礎、『最初の一歩』を築いた人たちが全く知られていないことに愕然とした。今や当たり前となったフェスやインディーズという方法論はこの人たちから始まっている。これはもう作るしかないなって思いました。コロナなどあって、制作に11年かかりましたが、『こんなに凄い奴らがいたんだ!』という想いを、これでも喰らえ!! と詰め込み発射しました。自由に受け取ってください」と、熱くコメント。
TAYLOWも「自分でレコードを作る、自分たちでイベントを組む。そんな『最初の一歩』を踏み出す尊さが、今は忘れられがちな気がします。監督がそれを映画にしてくれたことが本当に嬉しい。いろいろな『最初の一歩』や『始まり』が描かれているので、ぜひ楽しんでほしいですね」と語ると、「この映画とTAYLOWさんで全国を回りたいですね。そんな世の中になったら、『胸キュン』です」という田口監督の締めで舞台挨拶は温かな空気に包まれながら終了した。
VIDEO
商品情報
映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
峯田和伸 若葉竜也 吉岡里帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ 神野三鈴 浜野謙太 森岡龍 山岸門人 マギー 米村亮太朗 松浦祐也 渡辺大知 大森南朋 中村獅童 監督:田口トモロヲ 原作:地引雄一「ストリート・キングダム」 脚本:宮藤官九郎 音楽:大友良英 企画製作・配給宣伝:ハピネットファントム・スタジオ ©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会 2026年3月27日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!
【物語】 これは事実を基にした物語。1978年、偶然ラジオから流れたセックス・ピストルズに衝き動かされた青年カメラマンのユーイチは、小さなロックミニコミ雑誌「ロッキンドール」に出会い、とあるライブハウスへと足を運ぶ。そこで出会ったボーカルのモモ率いるバンド「TOKAGE」のライブに衝撃を受け、無我夢中でシャッターを押した。そこは音楽もバンドも観客たちも何にも縛られない生のエネルギーに溢れた異空間だった。正式にカメラマンとしてライブの撮影を依頼されたユーイチはモモたちと交流を重ねる。やがて彼らの音楽は瞬く間に若者たちを熱狂させ、そのムーヴメントは“東京ロッカーズ”と呼ばれ、日本のロックを塗り替えていく。世界を変えたのは、才能だけじゃない。音に賭けた、名もなき若者たちの衝動だった。
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