SIONはこんなメンツとライブをやっているんだぜ。
2025年12月20日(土)に開催された愛媛県松山市のライブハウス、W studio REDの10周年を記念するイベント『WstudioRED 10th ANNIVERSARY Diamond Dance2025』でSION'S SQUADが対バンする3組の顔ぶれを見たとき、どうだ、すごいだろと自慢したくなった。
その3組とは、THE BIRTHDAY、BRAHMAN、a flood of circle。
そこにSION'S SQUADを加えた4組が一堂に会するライブは、東京でもなかなかないと思うが、この日、BRAHMANのTOSHI-LOW(Vo)は、それぞれのバンドを称える一方で、自分たちも含めた4組の顔ぶれを「一般の音楽好きが絶対辿りつかないメンツ」とたとえ、「渋っ」と笑った。
「10周年とかそういうのだったら、もうちょっと売れてる人とか、今、ときめいているバンドを呼ぶだろ。何これ。このメンツ」とTOSHI-LOWが続けると、客席から「最高!」という声が飛ぶ。その瞬間、別に売れている人やときめいているバンドを求め、この日、この場所に来たわけではない、そして付け加えれば、そこに誇りを感じている観客の気持ちがさらに一つになった気がした。言い換えれば、TOSHI-LOWの言葉はこのイベントと、イベントを主催したライブハウスのスピリットあるいはイズムを代弁していたのだと思う。
話が行ったり来たりして申し訳ない。そういうイベントに招かれるSIONのことを自慢したいと思って、実際にあちこちで自慢しているうちに自慢する以上はライブを見て、そこでSIONがどんなライブをやったのか伝えなければという思いに駆られ、慌てて飛行機と宿を押さえ、ライブの当日、松山に向かったのだが、フライトの遅れ、松山空港から市内に向かう道路の渋滞など、何だかんだあって、冷や汗かきながら開演直前にW studio REDに到着すると、まさかのトップバッター、SION'S SQUADの演奏は「住人」から始まった。
《地に暮らす人》の矜持を《だけど地には咲く花がある 触れる花が》と歌うロックナンバーに応え、早速、揺れ始めたスタンディングのフロアから歓迎の声が上がる。フロアはもちろん、すし詰め状態。今日も藤井一彦(Gt)のコードストロークはキレキレだ。
その「住人」の軽快な演奏から一転、ぐっとテンポを落として、今一度気合を入れるように披露したのは、ブルージーな「ウイスキーを一杯」。いつの頃からか、SIONはこの曲の《泣くことさえできなかったお前に叱られるな》という歌詞を、《まだギターかき鳴らし歌いたかっただろうあいつに叱られるだろう》と変えて、歌うようになった。最後のサビで《お前と乾杯さ!》と歌うSIONに応え、藤井が声を上げると、観客が快哉を叫ぶ。
続く「薄紫」はソウルっぽいともジャジーとも言えるバラードだ。メランコリーに詩情が滲むバラードもまたSIONの魅力の一つだが、それをライブで味わえるのがうれしい。この歌の主人公は、なぜ家を飛び出したのかと想像を掻き立てるストーリーテリングもさることながら、そこに《サイレンが鳴る頃》という言葉を付け加えることによって、聴く者の目の前に情景を浮かび上がらせる詩作の閃きに改めて気づかされる。SIONの歌に寄り添いながら、静かに、しかし、しっかりと曲を盛り上げるバンドの演奏も見事だ。
ちなみに今回の松山遠征。当初、SIONは藤井とのアコースティックセットで参加しようと考えていたそうだ。しかし、THE BIRTHDAYが出演するってことは、キュウちゃんもいるわけだ。だったら、中西さんのスケジュールさえ合えば──ということでSION'S SQUADでの出演が実現した。自慢のバンドだ。やはり一人でも多くの人に見てもらいたいに違いない。
観客に耳を傾けさせた「薄紫」のしっとりとした気分を変えるため、いつもなら「調子はどうだい」を景気よく演奏するところを、この日は、スウィングする「夜しか泳げない」を、観客も含め、全員で歌う。キュウちゃんことクハラカズユキ(Dr)が軽快に鳴らすシャッフルのリズムと中西智子(Ba)が迫力ある低音で刻むウォーキングベースもゴキゲンだ。
「12月に『12月』を」
ここ何年かアコースティックで演奏することが多かったバラードの「12月」を、SION'S SQUADバージョンでまた聴けたのはうれしかった。サビの直前に藤井がギターで加える讃美歌の「もろびとこぞりて」のメロディーが心憎いと思っていたら、最後はそのメロディーをSIONがハーモニカで奏でエンディング。
ペーソスとユーモアが入り混じる「彼女少々疲れぎみ」は、《「わかったようなことを唄わないで ちょっとちょっと そこのヒゲ」》というパンチラインを歌う中西の歌と、この曲を演奏した直後に「叱られるたびにうれしい」と言うSIONの照れ笑いも含め、もはやSION'S SQUADのライブに欠かせない見どころになっている。
「今日は10代、20代、30代、40代、50代に書いた曲をやってるんだけど、次は60代に書いた曲をやります」と言ってから、演奏したのはバラララララとメンバー全員でシンガロングする「Old Gunslinger」。世の中の無情や不条理に打ちのめされそうになりながら、それでも《だけど、まだここで降りるわけにはいかない 好きでいたいんだ 生きることを もう一度》と65歳のSIONが歌う言葉が胸を打つ。前回のSION'S SQUADのツアーで初めて聴き、SIONの新しいアンセムになることを確信したが、この曲もSION'S SQUADのライブに欠かせない曲になっていきそうだ。
そこから「新宿の片隅から」になだれこみ、たたみかけるような演奏を観客に食らわせると、最後はアンセミックなシンガロングに悲壮な覚悟が滲む「マイナスを脱ぎ捨てる」でとどめを刺すように凄みを見せつけた。マイナスを脱ぎ捨て、《新しい朝をつかまえる為に》力を振り絞って、SIONが歌うこの曲をライブで聴き、震えるたびに思う。絶唱とはこういう歌のことを言うのだろう、と。
ところで、暮れに40年来の友人からSOSの電話があったとき、うまく慰めることも励ますこともできず、そんな時はSIONを聴いたらいいと思う。特に「マイナスを脱ぎ捨てる」は聴いてほしいと伝えたところ、本当に聴いてくれたようで、なんとか持ちこたえられそうだと後から連絡をもらえてすごくうれしかった。以上、余談。
40分のセットリストに新旧の楽曲とともに、いろいろな魅力を詰め込んだ熱演を、「メリークリスマス。良いお年を」とSIONは締めくくった。
その後、クハラを含め、3人のメンバーが代わる代わるにボーカルを取って、バンド存続の意思をアピールしたTHE BIRTHDAY、「勇気あるなぁ!」とステージの袖で見ている共演バンドのメンバーたちが口々に言う中、本人の前でSIONの「俺の声」のカバーを披露したBRAHMAN、そして、エキセントリックな一面をパフォーマンスに滲ませ、フロアをざわつかせる一方で、「5月6日、日本武道館で待ってます!」と言って、フロアを沸かせたa flood of circleとライブは続いていった。その間、SIONとSION'S SQUADのメンバーたちが楽屋で話していた来年、つまり2026年の予定をたまたま耳にしてしまったのだが、いろいろ楽しいことが待っているようなので、わくわくしながら発表を待ちたいと思う。
Text:山口智男|Photo:三吉ツカサ(Showcase)
SION'S SQUAD『WstudioRED 10th ANNIVERSARY Diamond Dance2025』セットリスト
住人
ウイスキーを一杯
薄紫
夜しか泳げない
12月
彼女少々疲れぎみ
Old Gunslinger
新宿の片隅から
マイナスを脱ぎ捨てる
Live Info.
SION with Kazuhiko Fujii Acoustic Tour 2026
【開催日程】
4月3日(金)東京|SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
4月10日(金)茨城|Mito LIGHT HOUSE
4月18日(土)大阪|梅田Shangri-La
4月19日(日)愛知|NAGOYA JAMMIN'
4月26日(日)神奈川|横浜THUMBS UP
5月2日(土)福島|club SONIC iwaki
5月4日(月)群馬|高崎CLUB Jammers
5月5日(火)長野|ライブハウスJ
5月17日(日)千葉|LIVE HOUSE ANGA
【FC先行受付期間】1月21日(水)19:00〜1月28日(水)23:59
【結果確認期間】1月30日(金)13:00~1月31日(土)18:00
【一般チケット発売日】2月14日(土)
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