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トップレポートデビュー50周年を迎えた友川カズキと音楽活動20周年を迎えたタテタカコがLOFT HEAVEN 6周年記念公演で魅せた鬼気迫る歌の凄みと優美な残響

デビュー50周年を迎えた友川カズキと音楽活動20周年を迎えたタテタカコがLOFT HEAVEN 6周年記念公演で魅せた鬼気迫る歌の凄みと優美な残響

2024.08.31

 うだるような暑い日の夕暮れ、地下に降りるLOFT HEAVENに入場を待つ列が。中に入ると冷房のおかげでひんやりとした空気。そこで目撃したのはまさに対極な2名のアーティストによるライブで、自分の知らない世界を音楽でこじ開けてもらったような日となった。
 

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 先攻はタテタカコ、着座前にステージに掲げられている“LOFT HEAVEN”の文字に深々とまずお辞儀。鎮座するグランドピアノを前に深呼吸し、「一直線上」からスタート。グランドピアノの音はまるで生き物のように、タテタカコの声と共鳴する。1曲終わってから客席の方を向いて一礼、あふれる笑顔とともに。
 

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 “こんばんは〜、ようこそLOFT HEAVENさん〜。友川カズキさんと〜今日は〜ご一緒させていただきます”と、ピアノの音色に乗せ自らの紹介まで流れ歌うように旋律に乗せる。“友川大先輩の大きな胸に抱かれて歌わせてもらいます”と言ってから「手の鳴る方へ」。これまでイベント等で一緒になったことはあれどツーマンは初の機会だそうで、友川へのリスペクトや愛が最後まで随所に溢れていた。“(友川が)歌われている姿をDVDで見てから、狂ったように聴いていた曲がある。絵本も手にしているし、絵にも惹かれるものがある”とも語っていたし、“追いかけても追いかけても届かない先輩がいるのは、幸せなことです”と語った際には、“あ! 大先輩がご開帳!”と言ったのには会場内も大爆笑。どうやら楽屋のドアを開け、大先輩がご挨拶をした模様(客席側からは確認できずだったが)。
 

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 「宝石」ではじーっと天を仰ぎ見ながら弾くイントロで胸が熱い中で、すーっと入り込んでくる歌声が全身を駆け巡る。渋谷にいるのにまるで大自然の真ん中にいるかのような清涼感。心が洗われるとはこういうことかと体感する。“目に見えるものはいずれ 消え失せても 心に響くものは残っていく”の歌詞が美しい「道程」がグランドピアノの音色で楽しめたのも貴重だ。余談になるがLOFT HEAVENのグランドピアノは40年を超える歴史を刻んできた名器で、タテタカコと近い世代だからこそ相性も良かったのではないかと思う。
 

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 タテ自身も音楽活動が20年を迎えたことを話しながら、ラストナンバーに選んだのはbloodthirsty butchersの「JACK NICOLSON」。“僕はどんどんと年をとっていく訳で 作るものはどんどんと色褪せる 君がその先大人になっても 悪い大人の手本でいたいんだ”…bloodthirsty butchers結成の地・北海道留萌を訪れ、“初めて推し活の気持ちが分かった、心からときめいたのを感じた”と語りながら、思いをぎゅっと詰めこんだ素晴らしいカバーを披露して、ステージを降りた。
 

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 明るく少し賑やかな転換中に、ふらっとステージに現れた友川カズキ。“こんばんは、友川と申します”の言葉で一気に暗転、静まる会場。“タテさんの音楽があまりにも清々しくて天使のような声で”との語りかけから、開発が進む渋谷の街のことやら都知事が変わらない、といった話まで。普段の生活だとこの時間は“おねむの時間”だそうだが、のっけから饒舌に語るのは本人曰く“年齢のせいではなく、久しぶりに飲むお酒のせい”。
 

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 8年ぶりに今年リリースしたアルバム『イカを買いに行く』のタイトルナンバーからライブはスタート。アルバムは26枚目を数えるが、“自慢じゃないけど、ヒット曲ゼロです”と自虐と自由なトークを織り交ぜながら進んでいく時間。ギターと共に歌う時にはステージの照明が赤色に変わるのも相まって、力強さとただ表現するだけでは物足りない、鬼気迫る何ものかが宿っているのを感じた。これこそはまさに、年齢がなせる技なのかもしれないとも思う。アルバムリリースもあったことで“こう見えて、今年に賭けております”とのことで今後のライブ予定も多く、12月には新宿LOFTで『友川カズキ デビュー50周年コンサート〜一人ぼっちは絵描きになる〜』[12月6日(金)]も予定されている。ぜひ足を運んで音に触れて欲しい。答えはライブの場所、そこにしかないから。
 

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 坂口安吾の短い小説の一節から描いた「夢の総量」、“公園に一人でいると犯罪者のように見られる”と笑いながら語り、公園で生まれたという「光るクレヨン」、かつて訪れたウクライナでのことを話しながら「殺されたくないなら殺せ」…赤のピンスポットに照らされながら歌う、尊さにじむ孤高の姿。ちあきなおみに楽曲提供した「祭りの花を買いにいく」にその時代を感じながら聴き入るも、“ちあきさんの曲がサブスク解禁されたから、印税が入ったら一発、競輪で!”と会場内を笑いの渦に。ちょうどオリンピックシーズンで“スポーツオタクで、テレビっ子”と競技に連日、夢中になっている話や将棋・藤井聡太棋士が美術が苦手だった、それは“美術は答えがひとつじゃないから”というエピソードまで。飄々としながらも様々な情報が日々インプットされているのだろう、全く飽きさせないMC。
 

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 フラメンコのカンテとギターのような「花火」を最後に、帽子を脱いで一礼しステージを離れるも鳴り止まないアンコールの声。団鬼六のエッセイ「死んでたまるか」にも興味を持たずにはいられない話に、“煙草と競輪は死ぬまでやめたくない”と語ってから最後の最後に一曲、「夢のラップもういっちょ」。“ありがとさん”と一言、この日のステージに幕を下ろしたのだった。【Text:高橋ちえ(@djchie)/ Photo:MAYUMI(@SOxWHAT_88)/ 2024年8月11日(日)渋谷LOFT HEAVEN
 

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Live Info.

オルタナミーティング vol.32|デビュー50周年記念 友川カズキ 阿佐ヶ谷ライブ

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【出演】友川カズキ(Vocal, Guitar)|O.A.:五十嵐正史とソウルブラザーズ
【日程】2024年10月19日(土)
【時間】開場18:30 / 開演19:00
【料金】前売¥4,000 / 当日¥4,500(共に税込・1ドリンク600円別)
【前売購入URL】https://t.livepocket.jp/e/qd0i0
※入場は前売→予約の順となります
【ツイキャスプレミア ライブ配信】
ツイキャス配信 ¥2,000
※配信アーカイブは2024年11月2日(土)まで視聴/購入可能
※配信中の投げ銭(お茶爆50/100/500)も可能です

友川カズキ デビュー50周年コンサート『一人ぼっちは絵描きになる』

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【出演】友川カズキ
【参加ミュージシャン】石塚俊明(ドラム)/ 永畑雅人(ピアノ)/ 山本久土(ギター)
【日程】2024年12月6日(金)
【時間】開場18:30 / 開演19:30
【会場】新宿ロフト
【料金】前売¥5,000 / 当日未定(共に税込・1ドリンク600円別)
※自由席(椅子席&立見)/ 椅子席は数に限りがあります(先着順)。
※手売り、e+並列入場
【問い合わせ】新宿ロフト 03-5272-0382

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