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トップレポートデビュー45周年に突入したシーナ&ロケッツが新宿ロフトで魅せたロックの真髄と醍醐味(動画メッセージあり)

デビュー45周年に突入したシーナ&ロケッツが新宿ロフトで魅せたロックの真髄と醍醐味(動画メッセージあり)

2022.11.29

 さる11月23日(水・祝)、シーナ&ロケッツが『45回目のバースディライブ ─45周年記念LIVE─』を新宿ロフトにて行なった。
 11月23日とはシーナ&ロケッツの正式なライブ・デビューした日であり(1978年、大阪御堂会館で行なわれたエルヴィス・コステロの来日ツアーでオープニング・アクトを務めた)、この日を境にバンドが45周年に突入する記念日であり、シーナ(Vo)が存命なら69(=ROCK)歳の誕生日であり、バンドの厚意で新宿ロフトがオープンから46周年を迎えたことを祝う目的もあった。この日配布された冊子『月刊 鮎川誠  STAY ROCK Vol.3』の表紙の傍らに“45・46・47(シーナ)”という数字が躍っていたのはそのためだ。祝い事が多く情報が渋滞気味にも感じるが、演る側も観る側も不自由を強いられてきたコロナ禍以降のライブハウス・シーンには収容人数が従前に戻ったことも含め、雪解けの時期を感じる慶事と言えるだろう。
 単純な活動期間の長さで言えばシーナ&ロケッツより長く続くバンドは存在するものの、その多くが長らく活動休止だったなかでロケッツは結成以来、一度たりとも休止したことがなかったし、一貫してロックの最前線に常に身を置いてきた。そうした実質的な日本最長不倒バンドにはやはり老舗ライブハウスの格式あるステージがよく似合う。ライブハウスは新進気鋭のバンドと並走しながらバックアップすることも無論大事だが、ロケッツのように長く多彩なキャリアを積んできたバンドと共存していくことがそのハコ独自の幅となり色となるのだ。1978年8月12日に“アユカワマコト(元サンハウス)+ミラクルマン”名義で新宿ロフトに初出演して以来、揺籃期のロケッツは事あるごとにロフトのステージに立ち、小滝橋通り沿いにあった新宿ロフトの移転前最後のライブ(1999年3月16日)もロケッツが務めた。昨年の『44回目のバースディライブ』で久々にロフトへ帰ってきたロケッツが今年もまたバンドにとって大きな節目となる日にロフトのステージに立ってくれることが個人的にもとても嬉しい。
 

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 おめでたいことがいくつも重なった大いなる祝宴ではあるが、バンドはこれも一つの通過点と言わんばかりのクールな平常運転だ。ロケット発射カウントダウンのオープニングSEに導かれ、鮎川誠(g, vo)、奈良敏博(ba)、川嶋一秀(ds)が現れて「バットマン・テーマ」で始まるのもいつも通り。頭の数曲でフロアを温め、5曲目の「スイート・インスピレーション」でルーシーが登場する構成もいつも通りだ。だが、いつも通りそこに在ることの尊さを感じずにはいられない。シーナがこの世を去ってもバンドを続けることを選んだ鮎川、奈良、川嶋の不退転の覚悟と意地、シーナからバトンを受け継ぎ不滅のロケッツ・クラシックスを唄い続けるルーシーの存在があってこそバンドは45回目のバースディを迎えることができたわけで、これまで何度聴いてきたか分からない「ビールス・カプセル」にこれまでと同様に感動を味わえるのは、シーナの不在やコロナ禍の行動制限を乗り越えてバンドが常に前身し、転がり続けてきたからこそだ。それは決して当たり前のことではない。
 そんなことをふと思ったのは、博多のジューク・レコード創立者・松本康が作詞を務めた「クレージー・クール・キャット」、「恋のムーンライトダンス」、「ワンナイト・スタンド」、「ボントンルーレ」といったナンバーを聴いたからだ。1970年代にサンハウスの活動をバックアップし、80年代にはアクシデンツの『Nite Time』やアンジーの『嘆きのバンビ』といった作品をリリースするなど博多のロック・バンドを陰で支えていた松本康が9月28日に永眠したことは、鮎川のツイートで知った。キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」を披露したのも、キンクス研究家として松本“キンキー”康の異名を持つ松本に捧げる意図があったのだろう。サンハウス時代からの盟友が他界したというとてつもなく大きい喪失感を携えながら、彼と共作した歌をこれからも演奏し続けていくんだ、それが遺された自分たちの使命なんだ。そんな強靭な意志みたいなものを爆音のアンサンブルの中に滲ませているように感じた。もちろんそうしたバンドの意志は、今なお彼らの精神的支柱であるシーナに対しても向けられていたように思う。遺された者の使命、それを貫く覚悟。その意志の重さと気高さ。ビートルズの「Carry That Weight」ではないが、シーナ&ロケッツとはそうした重荷を背負うバンドなのだと、その後のライブ終盤にぼくらは再び実感することになる。
 

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 奈良と川嶋が繰り出すしなやかだが図太い盤石のリズムに支えられ、溜めを利かせながらブラック・ビューティー(黒のレス・ポール・カスタム)を縦横無尽に弾き倒す鮎川のプレイ、それらが一体となる鉄壁のアンサンブルの中でボーカルを務めるのは、そのあまりにラウドかつハイテンションな音塊に拮抗することも含め至難の業だと思うが、ルーシーの発する伸びやかで艶やかな歌声もその存在感も堂に入ったものだった。「ハッピー・ハウス」や「ロックの好きなベイビー抱いて」といった代表曲をすっかり自分のスタイルに昇華した様を見聞きすると、シーナから引き継いだロックのDNAはもちろん、ロック・ボーカリストとしての伸び代の大きさを否応なく感じる。そんなルーシーが「ハウリング・ウルフ」で一旦ステージを去り、パイレーツの「ピーター・ガン」を披露した後はロケッツでもお馴染みのサンハウスのレパートリーが矢継ぎ早にプレイされる。今年は鮎川、奈良、鬼平(坂田紳一)、松永浩という布陣で“鮎川誠 Play The SONHOUSE”というプロジェクトが始動、オフィシャル・ブートレッグとも言うべきライブ・アルバム『ASAP』も発売されたが、「なまずの唄」、「オマエガホシイ(One More Time)」、「たいくつな世界」と続くパートでは不朽の名曲を数多く残したサンハウスと、そこから連なるロケッツの半世紀以上に及ぶ壮大な歴史に思いを馳せずにはいられなかった。2023年にはぜひ“鮎川誠 Play The SONHOUSE”として新宿ロフトに新たな歴史を刻み込んでほしいものだ。
 

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 キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」で衣装を着替えたルーシーがステージに舞い戻り、「クライ・クライ・クライ」、「レイジー・クレイジー・ブルース」、「レモンティー」、「ユー・メイ・ドリーム」と本編終盤を一気に駆け抜ける。「レモンティー」が始まった辺りでこの特別な一夜が間もなく終演することに気づき、セットリストが非常に充実していたこともあるのか体感時間がとても短く感じた。最後はこの日集まったすべてのオーディエンス、天国からステージを見守ってくれたシーナと松本康に捧げるように鮎川のボーカルで「アイ・ラブ・ユー」を披露。もちろんそれでオーディエンスが納得するわけもなく、アンコールを求める歓声と手拍子が鳴り止まない。この日から販売開始された45周年記念Tシャツ姿になった鮎川、奈良、川嶋が現れ、フランク・シナトラの…と言うよりはシド・ヴィシャスのカバー・バージョンを下地にした「マイ・ウェイ」をアンコールの1曲目として鮎川が唄う。こうした世紀のスタンダード・ナンバーを唄って様になるバンドは、日本ではロケッツくらいなものだろう。
 

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 そしてルーシーが登壇するや、鮎川に何やら耳打ちをする。漏れた声を聞いたフロア前方がざわつく。絶句した鮎川が、振り絞るように話す。
 「いま……ウィルコが亡くなったって知らせが……」
 ドクター・フィールグッドのオリジナル・ギタリストとして知られ、鮎川ともかねてから深い親交のあったウィルコ・ジョンソンが2日前(11月21日)に自宅で息を引き取ったと、家族が声明を発表したという。
 あまりに突然の知らせに鮎川を始めメンバーは一様に動揺していたが、それは2013年に末期の膵臓がんだと診断された旨をウィルコが発表してから彼の体調をずっと気に留めていたぼくらも同じだ。ロケッツや花田裕之、チバユウスケらが出演した、満杯のレッドシューズで行なわれたウィルコのライブ(2013年1月)をぼくは瞬時に思い出した。また、他でもないシーナ&ロケッツのライブ、それも45周年に突入した節目となるまたとないライブの最後の最後でウィルコの訃報を知るとは浅からぬ縁というか、運命のいたずらみたいなものも感じた。
 涙ぐむのを必死に堪えながら鮎川がオーディエンスへ向けて話す。
 「今日という最高に嬉しい日に、最高に悲しい知らせが届いてしもうて……。だけど、俺たちは俺たちのロックばやるぜ! ウィルコ、今までありがとう!」「生きてるうちは、ロックばやろうぜ!」
 そうして最後に奏でられたのは、デビュー・アルバム『#1』収録の「涙のハイウェイ」。45歳を迎えたロケッツの記念碑的ライブの最後を飾るに相応しい、日本のロック史に刻まれた屈指の一曲だ。
 万雷の拍手で見送られたメンバーがステージを去り、客電が灯るなかで悲しみと喜びが入り交じったとても複雑な気持ちに襲われた。だが、「生きてる俺たちはロックするぜ!」という鮎川の言葉通り、シーナ&ロケッツの歴史はまだこれからも続く。続けてもらわなければ困るのだ。ロックというジャンルが今や絶滅危惧種的扱いを受ける昨今だが、それはロケッツのような本物のロック・バンドが近年激減してきたからだとこの日のロケッツのライブを観て痛感した。彼らのような聴き手の魂を大いに震わせる生粋のライブ・バンドが健在ならば、ロックはいつまでも憧れの対象として次世代にも訴求し、代々引き継がれていくはずなのだ。爆音こそ正義と言わんばかりの音の渦で得も言われぬ昂揚を与えるバンドの筆頭格として、シーナ&ロケッツにはロックの真髄と精神性、抗し難い魅力と素晴らしさを次の世代へ伝える先駆者として在り続けてほしいと切に願う。(Text:椎名宗之/Photo:石澤瑤祠)
 

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シーナ&ロケッツ / 45回目のバースディライブ ─45周年記念LIVE─ セットリスト

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01. バットマン・テーマ
02. ホラ吹きイナズマ
03. ビールス・カプセル
04. クレージー・クール・キャット
05. スイート・インスピレーション
06. ハッピー・ハウス
07. ロックの好きなベイビー抱いて
08. 恋のムーンライトダンス
09. ワンナイト・スタンド
10. ベイビー・メイビー
11. ボントンルーレ
12. ハウリング・ウルフ
13. ピーター・ガン
14. なまずの唄
15. オマエガホシイ(One More Time)
16. たいくつな世界
17. ユー・リアリー・ガット・ミー
18. クライ・クライ・クライ
19. レイジー・クレイジー・ブルース
20. レモンティー
21. ユー・メイ・ドリーム
22. アイ・ラブ・ユー
─ENCORE─
23. マイ・ウェイ
24. 涙のハイウェイ
 

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Photo:丸山恵理
 

商品情報

鮎川誠 Play The SONHOUSE “ASAP”(THE LATEST LIVE & STUDIO '22)

2022年7月24日(日)発売
品番 / 価格:HORO-001 / ¥3,000(税込)
発売元:HOUSE ROCKIN' RECORDS

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【収録楽曲】
<CD1>
01. 爆弾
02. おいら今まで
03. 風よ吹け
04. 悲しき恋の赤信号
05. 傷あとのブルース
06. ねずみ小僧の唄
07. ふるさとのない人達
08. ぬすっと
09. なまずの唄
10. 僕にもブルースが唄える
11. もしも
12. やらないか
13. アイ・ラブ・ユー
14. ロックンロールの真っ最中
15. ミルクのみ人形
16. 魅惑の宵
17. スーツケース・ブルース
18. あて名のない手紙

<CD2>
01. キングスネークブルース
02. 地獄へドライブ
03. キザな奴
04. 夜は恋人
05. だんだん
06. ブンブン
07. ふっとひと息
08. 雨
09. カラカラ
10. 街
11. 借家のブルース
12. じゃじゃ馬むすめ
13. 落ち目の唄
14. あとのまつり
15. ホラフキイナズマ
16. ビールス・カプセル
17. ユー・メイ・ドリーム
18. レモンティ

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