ピアノ一台で観客と向き合う真剣勝負。ユーモア溢れる即興を織り交ぜながら、その卓越した技術に裏打 ちされた圧倒的な演奏に、観客はいつの間にかその世界に引きずり込まれていく...。 “無重力奏法”と評され、ピアノの概念を覆し続けてきたピアニスト/作曲家/エンターテイナー H ZETT M (エイチ・ゼットエム)。彼が不定期で開催している”ピアノ独演会”は、その唯一無二の音楽世界を余 すところなく味わえる貴重な機会とあって、どの公演もチケットの入手は困難。即完売が相次ぐ人気公演 だ。
開催の度に好評を呼び、噂が噂を呼んで、全国各地から開催オファーが殺到。先週末 18 日(土)愛知県岡崎市シビックセンターでのピアノ独演会 -三河国の陣-も発売と同時に即完売。 その翌日 5/19(日)にはついに東京オペラシティ コンサートホール”も発売後すぐに完売とその人気の高 さが伺える。今回は東京オペラシティ公演のライブレポートをお届けする。
日本最高峰のホールということもあり、会場には正装で着飾った男女が多く見られる。しかし、その鼻は H ZETT M のトレードマークと同じく青くペイントされているのが面白い。 いつものオペラシティでのコンサートとは違う雰囲気に、さらに期待が膨らんでいく。
会場に入ると、その特徴的で美しい内装のホールに丸に”独”と書かれたのれんが揺れている。その異様 な雰囲気はまさにこれから奏でられる H ZETT M の独特の世界観を現しているようだ。客席は満員。これ から何が起こるのか、予想もつかない。
客席の灯りが落ちると、割れんばかりの拍手の中、H ZETT M が登場。なぜか髭をつけて登場し、挨拶が わりのおどけた仕草に客席からはさっそく笑いが起きる。どんな会場でもそのスタイルを崩さない、彼ら しい演出だ。しかし、和やかな空気で始まるのかと思いきや、鍵盤に手を置いた瞬間に空気は一変。張り 詰めた緊張感が一瞬にして広がり、ループマシンを駆使し、演奏重ねていく「極秘現代」。会場は一気に その世界に引き込まれていく。H ZETT M ピアノ独演会 -東京オペラシティの陣-が幕を開けた。
そして、「踏み出すニュー」へ。鍵盤の上を自由に行き来するその指先に目を奪われていると、童謡「ア イアイ」の聞き馴染みのあるメロディーが。一筋縄ではいかない。これが H ZETT M ピアノ独演会だ。 続いての「争う不可思議」では、見慣れないサンプラーを使って演奏。ピアノとシーケンスの絡みが心地 よい。短い新曲(?)を挟んで「大西洋レストラン」「雫の模様」と進み、「ランドスケープ」へ。 美しいメロディーが会場を包み、オペラシティの夜が極彩色に彩られていく。
そして「Wonderful Flight」と自身が所属する H ZETTRIO(エイチ・ゼットリオ)の楽曲も披露。MC で本公 演は 2 部制であることを伝え、「その瞬間」で一部は終了。15 分の休憩が取られた。
この休憩が明けるとステージはその様相を全く変えていた。 トレードマークののれんも、サンプラーも、スピーカーすら無い。 まさにピアノ一台だけがステージに残された状態。いよいよ「ピアノ独演会」の真骨頂だ。
H ZETT M が颯爽と登場し、鍵盤に手を置くと、これまで以上に緊張と期待が混じった空気が会場に広が る。
「高貴な連帯」で始まった第二部は独特のタッチとその早い指運びで、会場が音で埋め尽くされていく。 「水の流れ」「炎のランニング」「嬉しさを抱きしめて」まるで何かに取り憑かれたかのように鬼気迫る 勢いで鍵盤を叩く。 「つなぎとめて」が終わり、次の曲が最後の曲と伝えられると会場からは「え~っ!」と声が上がる。時 が経つのを忘れさせるほどの演奏はバッハのメロディーから、と思いきや「暴れん坊将軍」のフレーズを 挟むなど、音楽に新たな気づきを与え、どんな楽曲も自分のものにしてしまう彼のセンスは本当に面白 い。そのまま「新しいチカラ」へと続き、ピアノ独演会は本編が終了。
アンコールでは「Brick & Glory」から「すりぬける」へ続くメドレーでピアノ独演会 -オペラシティの 陣-は幕を閉じた。最高峰のコンサートホールを経て、さらに進化するであろうピアノ独演会。次回は 6/2(日)に香川県高松 レクザムホールで四国初開催を控えている。今のところ年内にアナウンスされている日程はここしかな い。ぜひ、この唯一無二のピアノコンサートに足を運んで見て欲しい。
photo:Yuta Ito
Live Info.
2019.6.2(日)「ピアノ独演会 2018 秋 -初四国の陣-」振替公演
会場:香川県県民ホール レクザムホール
OPEN 16:00 / START 17:00
チケット:前売 ¥5,000
※全席指定、tax in
※3 歳以下入場不可、4 歳以上チケット必要 チケット発売中
お問い合わせ: DUKE高松087-822-2520