Rooftop ルーフトップ

REPORT

トップレポート平岡恵子+スーパーバンドの融合"海の底バンド"、初の自主企画は「皆に自慢してほしい。楽しい場所を見つけた!と」

平岡恵子+スーパーバンドの融合"海の底バンド"、初の自主企画は「皆に自慢してほしい。楽しい場所を見つけた!と」

2019.02.18

uminosoko_9.jpg

シンガーソングライター・平岡恵子(ex.桃乃未琴)をフロントに据え、上田健司・名越由貴夫など錚々たるミュージシャン勢が集結した音楽ユニット、海の底バンドの自身初となる自主企画イベント<The Circle #1>が2019年1月29日(火)新代田FEVERにて行われた。ゲストに佐藤タイジ(シアターブルック)とCurly Giraffeを迎え、密度の濃い音楽空間と化したステージの模様をレポートする。

「頂上を目指せ!とよく言われるけれど、エベレストの高さより、世界で一番深いマリアナ海溝の海の底の方が深いんです」…この日のDJを務める鍵盤奏者・SWING-Oによる豆知識的MCから幕を開け、トップバッターを飾るのはベーシストでポップマイスター・高桑圭によるソロ・プロジェクト、Curly Giraffeだ。アコースティック・ギターとボーカルという極めてベーシックなスタイルで、美しいメロディーとぬくもりあるボーカル、エバーグリーンな世界観が多幸感をもたらし、真冬の冷え切った身も心もフロアの空気もみるみると温まっていく。中盤でギタリスト・名越由貴夫が加わってのセッションから、海の底バンドとのジョイントへと続き、両者初の“合体”とは思えないほどの親和性の高さと醸し出す雰囲気の良さに、産声をあげたばかりのこのイベントが素晴らしいものになる、と早くも予感させる。

uminosoko_0_top.jpg

uminosoko_3.jpg

平岡恵子の「もうひと合体しちゃおうかな!」の声に呼び込まれ、佐藤タイジが登場。強烈な存在感を放つ正真正銘のロックスターも、百戦錬磨で猛者揃いの海の底バンドと実に相性が良い。そしてビートルズやプリンスのレジェンダリーなロックのカバーですら完全に自らのものにして、一瞬にして空間を彼の色に塗り替える様は圧巻だ。海の底バンドとのセッションの後、引き続き佐藤タイジはひとりステージのシモテにセッティングされたスペシャル・ブースへ移動し弾き語りがスタート。自身の楽曲「踊らなソンソン」では、彼の出身地・徳島の阿波踊りさながらのトランシーな感覚へと導き、この曲を聴かずには終われないであろう「ありったけの愛」ではフロアに降り立った平岡恵子が曲に合わせて縦横無尽に歌い踊り、魂の解放を目の当たりにするような高揚感が会場を包む中、ゲスト・パートが締めくくられた。

uminosoko_4.jpg

次なるステージはいよいよ海の底バンドが登場。時に変則的な編成となる彼らだが、今回のメンバーは平岡恵子(Vo,G)上田健司(B)名越由貴夫(G)中幸一郎(Dr)細海魚(Key)五十嵐慎一(Key)吉田隆一(B.Sax)加藤哉子(Cho,Fl)というラインナップだ。轟音のイントロダクションは、ゆらゆらと海中を漂う生易しいものではなく、荒々しいうず潮に飛び込み、海の奥深くのまだ見ぬ世界へと聴衆を引き込んで行く。そしてこのイベントのために書き下ろされたというインスト曲「Theme For Imaginary Bremen」~ひときわボトムの効いたファンク・ロック「Bottom of the sea.」の流れは、まるでブレーメンの音楽隊が辿り着いた場所で、どこかエキセントリックなリフを繰り返しながらオーディエンスへ”踊ろうよ!”と乱舞を煽り、誰もがプリミティブに還る光景だ。

uminosoko_1.jpguminosoko_2.jpg

打って変わって平岡屈指の壮麗なスロー・チューン「三十路」~桃乃未琴節が弾けるユーモラスなポップソング「コーヒー猿」と予測不能にクルクルと様相を変えつつ、デビッド・ボウイのカバー「Ziggy Stardust」、桃乃時代のメランコリックなシングル曲「青いトゲ」とスケールの大きい楽曲でドラマティックに爆発をみせる。続いて、海の底バンドとして発表した初音源のひとつ「三年間」は静から動、平穏から混沌へと深遠なる異空間へといざない、炸裂するアンサンブルにバンドの真骨頂を感じさせる。本編ラストは桃乃未琴のデビュー曲でありバンド名の由来となった「あなたは海の底」、まるで原点~現在地を示すかのように清々しさを伴いながら威風堂々としたパフォーマンスで幕を閉じた。

uminosoko_5.jpguminosoko_6.jpg

アンコールでは、DJブースにいたSWING-Oが壇上に現れ、おもむろにエレクトリックピアノをつま弾く中、パントマイムマジシャンの神雅喜が登場。切り裂かれたはずの新聞紙に”アンコールありがとうございます”と一面にメッセージを掲げ粋な演出を披露。オーラスは出演者全員がステージに上がり、1曲目と同じ「Theme For Imaginary Bremen」に乗せてメンバー紹介を経て、平岡恵子がこのイベントを迎えられた感謝を述べつつ「今日帰ったら必ず皆に自慢してください、”楽しい場所を見つけた”と!」と高らかに叫び、大団円で終幕となった。

uminosoko_7.jpguminosoko_8.jpg

「海の底バンドが稼働すると、他の音楽現場が回らなくなる」と危惧されるほどの強力なメンバーを得る求心力を備え、水を得た魚のように、時にほとばしる本能のまま豪快奔放に、時に心に刺さるほど繊細に歌い、聴く者の心を鷲掴みにする平岡恵子。だが、<The Circle>という場所から発信されるのは、キャリアや名実を超越した真新しい音楽集団による、自由を享受し自分を解き放つ音と戯れ、思うがままに楽しむ空間だ。海の底バンドの底知れぬ今後の展開は大きな渦を巻き起こしてくれそうだ。(写真:三浦麻旅子 / 文:上田優子)

 

<The Circle #1>セットリスト 2019年1月29日@新代田FEVER

[Curly Giraffe]

1.     Fake Engagement Ring

2.     Water On

3.     Run Run Run(w/名越由貴夫)

4.     You Just Swept Me Of My Feet(w/海の底バンド)

5.     96708(w/海の底バンド)

[佐藤タイジ]

6.     Come Together(w/ Curly Giraffe+海の底バンド)

7.     Purple Rain(w/ Curly Giraffe+海の底バンド)

8.     まばたき(w/海の底バンド)

9.     A Song For You

10.   踊らなソンソン

11.   ありったけの愛

[海の底バンド]

1.     Theme For Imaginary Bremen

2.     Bottom of the sea.

3.     三十路

4.     コーヒー猿

5.     Ziggy Stardust

6.     青いトゲ

7.     三年間

8.     あなたは海の底

Encore1. SWING-O+神雅喜

Encore2. Theme For Imaginary Bremen

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻