本来は翌年4月の『LAST GIGS』の映像と合わせて彼らの解散に焦点を当てたドキュメンタリー作品の素材として記録されたものだが、各メンバーのソロ活動に対する配慮からドキュメンタリー製作の計画は頓挫。その後、『1224』と名づけられたカメラ5台分の16mmフィルムは14年ものあいだ倉庫に保管され、2001年12月24日にVHS・DVD化(監督は永石勝)。2012年12月24日にはBlu-ray BOX『BOØWY BLU-RAY COMPLETE』の中の一枚としてBlu-ray化。また、2013年3月21日(デビュー記念日)にはその映像をデジタル処理・音質を向上させた映画『BOØWY 1224 FILM THE MOVIE 2013』として全国の劇場で上映された経緯がある。
もちろん音源も新たにリマスターされたものが使用されており、臨場感が数十倍増したソリッドなサウンドが存分に楽しめる。また、DVD、Blu-ray、日本の音楽ソフトでは初となる4K Ultra HD Blu-rayという三形態で発売されるという異例の試みも、6thシングル『MARIONETTE』をいち早くCDVでも発売するなど新規格のメディアを積極的に取り入れていたBOØWYらしい。
まさに今年のBOØWYデビュー35周年プロジェクトの集大成に相応しいアイテムなのだが、『1224』はやはり何度見返しても胸が詰まる思いのする作品である。同じく映像化されたライブで言えば、わずか数カ月前の『CASE OF BOØWY』、すべてが吹っ切れた後の『LAST GIGS』で見られる余裕や笑みが曲を追うごとに消え失せていく。間奏で布袋が「ジングルベル」を即興で奏でる「BLUE VACATION」、氷室がそばに駆け寄ってスライディングしても毅然とベースを弾く松井が印象的な「ハイウェイに乗る前に」、ブレイク部分で氷室にマイクを向けられた布袋が素っ頓狂に唄ってはぐらかす「IMAGE DOWN」、高橋のスティック投げが炸裂する「NO. NEW YORK」など、思わず笑みがこぼれるシーンもあるが、総じて張り詰めた緊張感が場内を包み込んでいる。
言うまでもなくそれは、言うも言わぬも氷室に委ねられていた解散宣言という時限爆弾のタイマーがすでに作動していたからに他ならない。だから真の意味でのフェアウェル・ソング「CLOUDY HEART」は、本来のイントロに入る前に爪弾かれる布袋の悲壮感溢れるギター・パートからして重い。前後の『CASE OF BOØWY』と『LAST GIGS』で披露されたバージョンと聴き比べても、その重さは歴然としている。
だが、この5カ月前に6thシングル『MARIONETTE』が、3カ月前に6thアルバム『PSYCHOPATH』がそれぞれオリコン初登場1位を獲得し、名実ともにピークを迎えていたバンドのアンサンブルの妙と一体感はやはり伊達ではない。つい忘れがちだが、この日のライブは『PSYCHOPATH』のリリースに伴うツアー(『ROCK'N ROLL REVIEW DR.FEELMAN'S PSYCOPATHIC HEARTS CLUB BAND TOUR』)の最終日である。布袋が複数のエフェクトを効かせて万華鏡のように煌びやかなギターを奏で、フュージョン的なアプローチを試みる「PSYCHOPATH」などはオリジナル音源とは趣が異なる素晴らしいテイクで、活動の末期でもなおバンドとして進化していこうとする貪欲さと強い意志を感じるのだ。
《本編》 LIAR GIRL ANGEL PASSED CHILDREN BLUE VACATION ハイウェイに乗る前に GIGOLO & GIGOLET PSYCHOPATH CLOUDY HEART MARIONETTE わがままジュリエット LONGER THAN FOREVER 季節が君だけを変える WORKING MAN B・BLUE RENDEZ-VOUS HONKY TONKY CRAZY PLASTIC BOMB BEAT SWEET IMAGE DOWN NO. NEW YORK 《アンコール》 MEMORY ONLY YOU DREAMIN'