『闇鍋音楽祭2013』
2013年3月16日(土)Shangri-La
ゲスト:浦朋恵&ザ・ロッキン・バリトーンズ
2013年3月17日(日)Shangri-La
ゲスト:ROJO REGALO
16日“浦朋恵&ザ・ロッキン・バリトーンズ”17日“ROJO REGALO”を迎え行われた大阪2days公演最速ライヴ・レポート!
3月17日、大阪・梅田、シャングリラ。『闇鍋音楽祭』2日目。1日目は、浦朋恵&ザ・ロッキン・バリトーンズをゲストに迎えていたのにも関わらず、仕事に追われて行けなかったので、リベンジの2日目。
実は17日だけは、何が何でも行きたかったし、行かなければならなかった。震災・原発事故から丸2年。何人かの仲間とともに2012年初頭にTwit No Nukes大阪を立ち上げて以来、反原発デモや関電本店前抗議や、他団体のデモやイベントも含め、最も深く私たちの反原発運動にコミットしてきてくれた二つのバンド、ソウル・フラワー・ユニオンとROJO REGALOが共演する記念すべき夜だったから。
まず、ROJO REGALOから開演。南米コロンビアの、レゲエにも通じる伝統音楽「クンビア」を主体としたルンバやファンクやレゲエが織り交ぜられたリズム・メロディに、ボーカル・キョンキョンが愛と反骨に満ちた歌をハスキーな声で絡ませて飛び出してくるグルーヴは凄まじい。フロアの後方で踊りながら眺めていると、お客さんの3分の2ほどはおそらく初めて聴くのだろう、しばらく乗り切れていない空気が漂っていたものの、徐々に前に人の波が広がり、終盤にはリズムと同期しながらみんな笑顔で踊っていた。
ROJO REGALOのたたき出すリズムは、クンビアのもっさり感、柔らかな色彩を保ちながら、パンクのようなキレがあり、その底にとことん前向きな力がある。キョンキョンさんの産休後の初ライブで、実に5ヶ月ぶりだったというのだけれど、そんなブランクなど全く感じられない完成度。すばらしい。大歓声に包まれながら、いったん幕。
第2幕。いよいよ魂花組合。幕が開く前の楽器の音だけでフロアの客の発する熱気が明らかに上昇して(そしてしっかり自分も熱っぽくなって)いくのが、毎度ながらおもしろい。
感傷的なことを公に書くのは憚られるのだけれど、私はソウル・フラワー・ユニオンのライブでは必ず1曲は泣かされることになっている。今までそれは「平和に生きる権利」であったり「満月の夕」だったが、この日は違った。
「街頭から鬨(とき)の声、気高い人垣の波」という歌詞が響き始めてすぐ、この1年くらいに出会った人や別れた人、苦しみのなかでも楽しかったこと…いくつもの記憶と共に、涙が溢れてきて曲が終わるまで止まらなかった。この歌が僕の深部に育ってきている何かをゆさぶったのだと思う。
2011年3月11日は、日本という国に生きる人にとって、また、おそらく世界の人々にとっても、とてつもなく大きな転換点になった。私や他のTNN大阪のメンバーはもちろん、ソウル・フラワー・ユニオンの中川さんもその例外ではなかったと思う。震災の悲惨さ、そして原発事故とその余波の凄まじさ。そして、状況をなんとか変革しようという気持ちに突き動かされ始めた人々の波。
前述の「街頭から〜」で始まる新曲「世界はお前を待っている」は、福島第一原発事故の後、反原発デモ・抗議行動に参加する中で培われたイメージから生まれたという。ソロアルバムに入っているアコースティックバージョンは、ギターのソロから始まり、歌の進展とともに徐々に他のギターやパーカッションの音が加わっていく。人の波がどんどん膨れ上がるとともに熱気を帯びていく光景が広がる。まさにこれは、デモの歌なのだ。
Twit No Nukes大阪(以下「TNN大阪」)は、東日本大震災と原発事故の後、原発を無くしたいと心から願いながらも、既存のデモのスタイルに違和感を抱いていた、私を含む関西の20〜30代の男女が、自分たちでシングル・イシュー型(※)のデモを企画しようと生み出した個人の寄り合いである。2012年を通して、不定期の街頭デモと、金曜の関西電力本店前の抗議行動を主催してきた。
この1年あまり、中川さんが被災地に応援ライブに行ってはソロアルバムを仕込みつつ、頻繁に参加されてきたのが、私たちTNN大阪をはじめとする各地のシングル・イシュースタイルのデモ、そして毎週金曜開催で続けてきた東京・首相官邸前あるいは大阪・関西電力本店前の抗議行動だった。私はデモでシュプレヒコールの伴奏となる打楽器によるリズムセクション(+ペースメーカー)を担当してきた。たしか5月のTNN大阪のデモ中、御堂筋を南下して難波の高島屋付近にさしかかったとき、背後から「今、ドラム隊のリズム最高やで〜」と言う声がするので振り返ると、iPhoneのボイスメモで録音している中川さんが笑顔で歩いていた。「実はな…」とアコースティックのソロアルバムへのパーカッションでの参加を打診されたのは、それから間もなくのことだった。
中川さんのプライベートスタジオ「魂花神社」に何度かお邪魔し、慣れないクリック音を聴きながらの録音に悪戦苦闘しつつも、2作目のソロアルバム「銀河のほとり、路上の花」には、結局、「世界は〜」他3曲に参加することになった。趣味でパーカッションを続けてきただけのただのオフィスワーカーにとっては望外の展開となったのだった。
ステージの上で光り続けてきた音楽家であり、かつ社会運動の経験も深い彼が、ただ数になりに「原発いらない」と他の参加者と共にコールしながら関電本店前に立ってくれていることによって、社会運動の経験など薄く関電本店前という特殊な場所で抗議した経験など皆無な私たちTNN大阪が得ている勇気、安心感こそ、計り知れない。しかし、そういう私たちがこれまで中川さんから繰り返し聞かされたのは、自分も関電本店前やデモからエネルギーをもらってる、ということだった。どうしても恐縮しがちな私たちに対する配慮もこもった発言だと思うが、「世界は〜」をはじめソロアルバムの曲を聴いていると、これは正直な思いなのだと思う。
そして、中川さんと同様、関電本店前抗議やデモに頻繁に参加しているミュージシャンは何人もいる。前述のROJO REGALOのメンバー、特にドラムス/ギター・PICO中島さんとボーカル・キョンキョンさん、そして、大阪の最高のダブバンド・Soul Fireのギター、ウーチャンさんやGreen Greenのトラックメーカー・Equalizerさんなど、関西在住の偉大なミュージシャンが、ただただ数になるために、地道にしぶとく参加している。最近は、ライブで会っても、どこかで会っても、別れの挨拶は「ほな、またデモで」が定番となってしまった。こんな状況は以前には想像もしなかったけれど、今、まさに草の根で、音楽も一つの強力なツールとなって、人が社会へのコミットと一体となって結びついていってる。新しい共同体の形ができあがりつつある。
ROJO REGALOとTNN大阪の縁は5月5日の稼動中原発ゼロを記念して大阪で開催された反原発デモに遡る。デモ前の集会でのライブでTNN大阪の初期メンバーであるグラフィックデザイナー・瀧野宝子がROJO REGALOサウンドに惚れ込んで以来、様々な反原発関係のイベントでの関わりなどを通して関係を深めてきた。今回の闇鍋音楽祭2日目でのコラボレーションも、瀧野の結びつけによるものだ。
ちなみに瀧野は、最近、自身でデザインし製作したNO NUKESタイツやTシャツの販売に力を入れている。日常のなかでかっこよくセクシーに反原発を訴えること、そしてクールなものを愛する人が集う場であるからこそ、繋がって拡げられる可能性に希望を見出している。NO NUKESタイツは、彼女が始めたプロジェクト"NO NUKES SISTAZ"のサイト http://nonukessistaz.org/girls/ を、ぜひチェックしてほしい。闇鍋音楽祭でも、Rojo Regalo・キョンキョンさんがNo Nukesタイツで登場。たまに東京にも出張販売に行くので、徐々に東京の反原発デモや霞ヶ関での抗議行動でも、NO NUKES SISTAZが絶賛拡大中である。
話を3月17日の夜に戻そう。
ROJO REGALOメンバーとソウル・フラワー・ユニオンとの感動的なセッションの後、最後のアンコール曲「海行かば」の前になんと私の名前がもう一人のゲストとして呼ばれ、3月30日にTNN大阪が主催する難波の反原発デモの告知をかねて、ステージに引っぱり上げてくれた。ROJO REGALOがステージに残してくれたコンガ1本を借りて「海行かば 山行かば 踊るかばね」で叩きまくり、「再稼動反対」と関電本店前・デモさながらにしっかりコールまでしてしまった。名もないアマチュアミュージシャンがソウル・フラワー・ユニオンと共演など恐悦至極… いや、しかしこれは、中川さんからTNN大阪への全面的支持表明であり、かつ、これからも頑張れや!という発破なのだ。かなり前から既にそうなのだけど、これで決定的に、退くに退けない状況に追い込まれてしまった。一夜の興奮から醒めて焦り始めているTNN大阪クルーは私だけではあるまい…。
ソウル・フラワー・ユニオンのライブは、一回一回が、有機的に草の根でつながる人々、共同体にとっての祝祭なのだ。そしてまた、そこに加わるに相応しいゲストが呼ばれ、そのゲストを観に来た人も、当然、その祭の一員になる。そしてみんなで最高の夜が創られる。
今週末は、いよいよ東京・渋谷のO-WESTで「『闇鍋音楽祭』。23日のゲストはバンドトモフスキー、24日のゲストはTHEイナズマ戦隊!!!
断言します。
これ、見逃したら一生の損失!
皆様、万難を排し、参加されたし!!!
Live Report by nuho from Twit No Nukes大阪
Blog: http://twitnonukesosaka.blog.fc2.com/blog-entry-58.html
Photo by ハラダ カズヨシ(reveller’s on the earth)
※シングル・イシュー:ある一つのテーマにおいて志・主張を共有できる個々人が、自らの社会的背景や帰属などはさておいて共闘する形。対局に、既存の政党・組織主導のデモによく見られるマルチ・イシュー型(色々なテーマをごった煮状につめこんでまとめて集団の意思・主張として押し出す形)がある。
Live Info.
ソウル・フラワー・ユニオン【闇鍋音楽祭2013】
2013年3月23日(土) 渋谷 O-WEST ゲスト;バンドトモフスキー
2013年3月24日(日) 渋谷 O-WEST ゲスト;THEイナズマ戦隊
両日とも 開場18:00 開演19:00
料金;前売4200円/当日4,700円 (税込・ドリンク別・整理番号付)
キッズチケット前売2,100円/当日2,300円 (税込・ドリンク別)
※中学生以下は入場無料。(保護者同伴にてご入場ください)
※キッズチケットは高校生の方が対象となります。
(学生証をご持参ください。ご入場順につきましては、一般チケットの整理番号をお持ちの方の後になります。一般チケットをお持ちの方と同伴の場合はご一緒にご入場できます。)
※付き添いが必要な障がい者の方に限り、介護の方1名は入場無料とさせていただきます。
(障がい者手帳を必ずご持参下さい。)
発売取扱;
電子チケットぴあ tel.0570-02-9999 (Pコード;188-936)
ローソンチケット tel.0570-084-003 (Lコード;73782)
SOGO TOKYO WEB SITE
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問;SOGO tel.03-3405-9999