伝説のマンガ家つげ義春の息子・正助さんと矢部太郎による、ちょっと変わったお父さんについての初対談が、「芸術新潮」9月号に掲載される。矢部太郎が、 絵本作家の父との思い出をテーマとする『ぼくのお父さん』を描くにあたって読み返したのが、 つげ義春の私小説的マンガ『無能の人』。 つげ家の父子と矢部家の父子は、 実は似ているちょっと変わった「絵描き」のお父さんを持つ二人が、 ぞんぶんに語り合った。
発売2ヶ月も経たずして10万部を突破したマンガ『ぼくのお父さん』。 矢部太郎が、 絵本作家である父・やべみつのりとの子供時代の思い出を、 独特のほっこりしたタッチで描いたものだ。 この作品に取りかかるにあたって、 矢部が参考のために読み返したのが、 つげ義春の『無能の人』だったという。 そこに描かれているマンガ家の家族の在り方や父と子の関係が、 自分の子供の頃に近いように思われ、 同作に登場する息子が成長してマンガを描いたら……という気持ちも、 念頭にあったとのこと。
そんな矢部からのたってのリクエストで、 敬愛するつげ義春の一人息子・つげ正助さんとの初対談が、 『無能の人』の舞台である東京都調布市で実現。 ちょっと変わったお父さんのいる家族の思い出を語り合った。
ともに父が会社勤めでなかった二人は、 子供時代に「ウチのお父さんはなんで家にいるんだろう」と思ったという話題から、 初対面にして意気投合。 両家とも裕福ではなく、 「他の家は車があるのに、 ウチはなんでないの」という共通の不満を持っていたこともわかった。 他にも、 なんでもスケッチする矢部の父のエピソード、 つげ家の遅すぎるカラーテレビ導入のてんまつや家族旅行のこぼれ話、 さらにはすべて実話と誤解されがちな『無能の人』の具体的な虚実にまで、 話ははずんだ。
対談を終えた二人は、 『無能の人』に描かれた多摩川に移動して写真撮影。 対談はそのツーショットとともに、 「芸術新潮」9月号に掲載される。
撮影:筒口直弘(芸術新潮)