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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】bloodthirsty butchers('99年2月号)- 走られたらいいだろうし。歩いてるんだけど、走ってる。

走られたらいいだろうし。歩いてるんだけど、走ってる。

1999.02.13

あたりまえに、必要以上に汚れるだろうし。それを拭いきれるような器用な性格ではないし

──歌詞は曲ができた後で考えるそうですね

吉村:だいたいそうですね。まあ曲を作ってるときには浮かんでるんだけど。そういうのはあんまり変わんないから、最後まで。まあ最後にどんづまりになってやるんだけど、書いては捨て、書いては捨て。こういこう、ああいこうっていうのは、そこからもうすべて形容詞というか。本当に言ってることはひとつしかないような気がして、自分でも歌詞をみてて。同じじゃないかって。

──ひとつのこと?

吉村:ひとつのことっていうか、うん、テーマは無題っていうか。もちろんタイトルはあるんだけど、そこからひっぱっていくと結局、無題に近いんじゃないかな。俺の独り言というか。

──そういえば前作『kokorono』は、曲名が2月、3月、4月というぐあいに12月までつけられてて、無題に近いものなのかなって

吉村:ただ単に斬新に考えて、いろいろコンセプトを考えないと自分で組み立てられないし、でも、かといってテーマなんてないっていうか、つまり無題で。でもロックだったら、コンセプトがあったほうがいいだろうと。結局、1時、2時、3時でも同じだろうけど、1年で12曲にしようと。

──ブッチャーズの歌って、すごく虚しさとか諦めとかがありつつも、それをなんとかしなくちゃいけないし、続けなければいけないという…

吉村:だから、ポジティブとかネガティブとか言いかえるじゃないですか。とりあえずは、ネガティブもポジティブのためにあるというか。それがないとポジティブもありえないと思うし。時間も進んでるように自分も進んでるというか。

──今作では、『ハシル』という曲にそういう面が出てますね。ブッチャーズの今の姿というか

吉村:一つ考えるとすれば、答えが出るのは、走られたらいいだろうし。歩いてるんだけど、走ってる。自分では進んでるってこと。

──あと2曲目の『ファウスト』についてですが、非常に興味深いタイトルですね

吉村:これは手塚治虫のトリビュートアルバムの企画に参加した時、何にしようか考えてて、俺だったら『ファウスト』かなと。それで(ゲーテの)『ファウスト』を初めて読んで。

──悪魔とかそういうものについても考えたりしたんですか

吉村:自分が悪だって感じ。善ではないし、うん。悪い人。

──人間そのものが?

吉村:誰がどうのこうのじゃなくて、自分が。悪のほうが好きだというか。

──一旦自分を悪だと認めて、それでどうするかだと思うんですけど

吉村:逆に言えば、ダメなことはないというか。人は人を裁けないというか、そういうことを考えてて。よく漫画に出て来るような、小さな悪魔と天使が自分の頭の上にでてきて、戦ってるというか、一方的にいじめてるというか。

──『襟がゆれてる』の歌詞に「流れるように僕は汚れた」とありますが

吉村:あたりまえに、必要以上に汚れるだろうし。それを拭いきれるような器用な性格ではないし、そのままでもいいやって、隠す必要もないし。正しいことは何もないし、悪いことも何もない。判断する言葉がイメージするところで、間違って伝わることもあるだろうけど、音楽とかだと、いいようにも悪いようにもとれるから。

──ブッチャーズの音楽って、正しいか間違ってるかじゃなくて、純粋さに向かっているんじゃないでしょうか。

吉村:作ってる音楽がたまたまそういうところだったんじゃないですか。3人だけが音を出してひとつのものを作って、それを聴いた人が感じたものが、たまたまそこだったというか。でもそれはそれで、そう思ってくれて、すごい嬉しいです。

 

bloodthirsty butchers are:

吉村秀樹(vo.G)、射守矢雄(B)、小松正宏(Dr)

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