“潔さ”が今回のレコーディングのテーマの一つ
──それにしても、「奇妙な圧力」のようにリズムセクションと本来のギタリストが不参加の曲でもちゃんと茂BANDらしさを醸し出せてしまうのが驚異にして脅威ですね。
梶浦:あれは、茂が持ってきた弾き語りの曲をそのまま活かそうと判断した下山さんが凄いんです。アコギでじゃかじゃかと自由に弾いてるし、ちょっと遠藤ミチロウさんに近いんですよ。歌と一緒にギターがうねってるから、どこが小節の頭でどこが区切りなのかもわからない(笑)。俺がそれをどう構築しよう? と一生懸命考えてたときに下山さんが一言、「このままでいいんじゃない?」って。「こんなギターは誰にも弾けないから」という下山さんのプロデューサーならではの潔さが凄かった。多分、下山さんの頭の中ではTOSHIさんのパーカッションが一緒に鳴る感じが最初から見えていたんでしょうね。
──TOSHIさんのあの鬼気迫るパーカッションは筆舌に尽くし難いものがありますね。
梶浦:凄いですよ。あの歌とストロークに合わせていくこと自体がまず凄い。
岡本:頭脳警察時代からPANTAさんと二人で凄まじい存在感を発揮していたんでしょうね。
仲野:PANTAのギターと歌に合わせてTOSHIがとにかく叩きまくってね。
竹内:「腐った卵」(1990年11月に発表された『頭脳警察7』に収録)なんて、もはやギターすらありませんからね。
──TOSHIさんのパーカッションとドラム、PANTAさんのボーカルだけですもんね。
竹内:TOSHIさんのパーカッションはああやって音楽性を豊かに広げてくれるんですよね。
岡本:「奇妙な圧力」のレコーディングも凄く大変じゃないかと思ったら、意外とすんなり終えられて。
竹内:息を吸うかのように自然体で臨まれたんでしょうね。
仲野:TOSHIに関しては2テイクくらいでOKだったし、あのソリッドで剥き出しのパーカッションはやっぱり凄いよ。TOSHIはTOSHIで潔さがある。
梶浦:今回のレコーディングは潔さっていうのがテーマの一つとしてあったね。
仲野:そうだね。
──潔いジャッジをくだせるのはみなさんが百戦錬磨の巧者だからなのでは?
梶浦:今回、俺が経験できて良かったと思うのは、潔く自分らしさを出すしかない録り方だったことなんです。その場でフレーズを作っていきなり録るなんてことはやったことがなかったし、それは自分にとってかなりのプレッシャーだった。いつもはプリプロをやって、曲の仕上がりに合わせて自分なりにドラムを組み立てて試行錯誤するんだけど、実際のレコーディングで一発でキメられるだけの練習期間が普通ならある。それが今回は全くない状態の中、何となくの概要が少しだけできた曲、イントロやエンディングが決まってない曲、それ以前にサビすらも決まってない曲をみんなで構築していくとなると、ドラミングに関しても潔くするしかない。小難しいことを一切考えず、自分の中で「これならいける」と勢いですぐに録れるものを選択するしかない。でもその緊張感みたいなものがバンド全体の良い相乗効果になったし、こういう潔さ勝負のレコーディングもありだなと思いましたね。
──しかもメンバー全員が手探りの中、誰よりも先に音を録る重圧がありますよね。
梶浦:そう、ドラマーってかわいそうなんですよ。後で曲の仕上がりを聴いて、「こうなるんやったら最初から言っといてくれよ!」っていつも思う(笑)。今回は特に思った。
──茂さん作詞、下山さん作曲の「金科玉条」と「Fury」は完成形がまるでわからない状態でドラムとベースを先に録ったと聞きました。梶浦さんがもう福岡へ帰らないといけないということで。
仲野:その梶浦の感想を聞きたいよ(笑)。
梶浦:この完成図が下山さんには見えとったんや! と驚いた。でもね、自分が叩いた曲の完成形を福岡の自分の店(VIVA LA SILVA)でこんなにニヤニヤしながら聴いたのは初めて(笑)。
──時間のない中で当てに行くように録るというのは至難の業だったんじゃないですか?
岡本:時間がないというより、あまりヒントをくださらなかったんです。
──ライブ中に白い仮面を着用するあのお方が(笑)。
岡本:おかしな譜面を渡されて、「これで」って(笑)。
梶浦:俺は譜面を見ないし、何を叩いても下山さんは「いいんじゃない?」「いいと思うよ」みたいなことしか言わない。その中で「ちょっとだけ暴れてよ」と言われてやってみたことが「金科玉条」の混沌とした部分につながったのかなと。だからホントにその場のセッションで作っていったけど、後でちゃんと音を合わせられるように計算し尽くされている。その采配も凄いと思う。スタジオではヒントの欠片しか言ってくれないけど、自分たちのいいところを最大限引き出してくれるから。
仲野:まあ、「金科玉条」と「Fury」は河口湖の合宿でしっかりと作っておくべき曲だったよね。
岡本:レコーディングの現場でいきなり録るのは贅沢と言いますか(笑)。
仲野:「Fury」は平歌が8小節同じリフで来るわけよ。だからちょっと悩んで、「ウォーウォ!」ってヤケクソで叫ぶしかなかった。唄い手としては二度目の「ウォーウォ!」をメロウにしたかったんだけど、「平歌でメロウになりすぎるとメロディがサビと当たっちゃうから、もっとメロがなくていいよ」なんて下山が言うわけ。おいおい、完成形が見えてんだったら最初から言えよ! って思ったね(笑)。
















