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トップインタビュー仲野茂BAND - 頭脳警察のPANTAが遺した歌詞を形にする奔走の果てに生まれた『に』という至宝的作品の真髄

頭脳警察のPANTAが遺した歌詞を形にする奔走の果てに生まれた『に』という至宝的作品の真髄

2026.03.04

 仲野茂(vo|ex.亜無亜危異)、下山淳(gt|ex.THE ROOSTERZ)、梶浦雅弘(ds|ex.THE MODS)、岡本雅彦(ba|ex.アンジー)、竹内理恵(sax, fl|頭脳警察)という日本のロック史にその名を刻む巧者たちが集結した仲野茂BANDが、セカンドアルバム『に』を2026年2月21日に発売した。2023年、肺がん闘病中だったPANTA(頭脳警察)が逝去する2週間前に仲野茂へ託した絶筆となる6篇の詞、新たに発見された1篇の詞に対してメンバーと伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)が作曲して完成させた7曲、バンドによる純粋な新曲2曲を織り交ぜた、完全なオリジナル作品という点では初のフルアルバムとなる。
 本稿は前回に引き続き、仲野茂がパーソナリティを務める『Radio JAG』で筆者が行なった『に』の公開インタビュー(vol.145)をまとめたものである。今回は仲野、梶浦、岡本、竹内という下山を除くメンバーが勢揃いし、最期まで稀代のロック屋として現役を貫いたPANTAの遺稿を形にする重責を担いながらも手探りのなか共同作業に打ち込めた各人の喜びが伝わる内容となっている。2023年7月の始動からわずか3年弱でこれだけ高水準の作品を生み出せたことはバンドの快調さの表れであり、本作『に』は、円熟はしても決して完熟はしない、固定化された完成形のさらにその先を探求し続けるバンドの姿勢が如実に反映された傑作と言えるだろう。PANTAの加勢を得て渾身のオリジナルアルバムを完成させ、真の意味でスタートラインに立った新生・仲野茂BANDのお楽しみはこれからだ。(Interview:椎名宗之)

どんなリズムで叩けば茂BANDっぽくなるか? と梶浦が引っ張ってくれた

──前回のインタビューでは茂さんと岡本さんにいろいろと伺ったので、今回はまず梶浦さんとこんぶさん(竹内理恵)から話を聞かせてください。梶浦さんは十代の頃、頭脳警察から影響を受けたりは?

梶浦:俺は申し訳ないけど、茂と一緒にバンドをやるまでは頭脳警察をずっと通ってこなかった。福岡の友人である渡辺圭一が立ち上げた『Bassic Rock Fes.』で俺が茂のサポートを頼まれたんだけど、そのときのライブが茂のソロユニット中心の選曲でね。茂の歌声が俺の心に凄く響いて、それ以降、茂と共演する機会が増えて頭脳警察のカバーをやるようになって、そこから真剣に聴くようになった。それまでは「ふざけるんじゃねえよ」(1972年10月に発表された『頭脳警察3』に収録)くらいしか知らなかったけど、いろんな曲を聴くうちにPANTAさんの作風の奥深さを知って、ソングライターとしてもバンドマンとしても凄い人だなと思った。生前に一度はお会いしておきたかったと今は後悔していますね。

──こんぶさんは頭脳警察50周年バンドのメンバーとして参加されて、今も頭脳警察の屋号を守り抜く立場ですね。

竹内:はい。PANTAさんはいらっしゃいませんけど、今でも残ったメンバーと頭脳警察サウンドを追求しているところです。私が茂さんと初めてお会いしたのも、『P-FES』というPANTAさんの応援ライブに茂さんがゲストで来てくださったときで(2022年6月5日、渋谷La.mamaで開催)。茂さんがシャンパンペールを抱えて舞台に上がって、何本もシャンパンが出てくるのが衝撃で(笑)。頭脳警察は日本語ロックの教科書みたいな存在だと感じながら高校時代から聴いていたんですが、私がミュージシャンとなってPANTAさんとご一緒するようになってからは若輩者である私たちの話もちゃんと受け入れてくださるし、世代が離れていても互いに刺激を与え合える稀有な方だという印象を持ちましたし、本当にお世話になりっぱなしでした。

──梶浦さんもこんぶさんも、PANTAさんが遺した歌詞を元にアルバムを完成させることにやはりプレッシャーを感じていましたか。

梶浦:もちろん感じました。日本のロックの礎を築いた巨人の遺作に携わるなんて初めてのことだったし。ある程度までできていた曲を再現するのではなく、こうであってほしかったであろうものを想像しながら作り上げるのは大変なことですよ。それが正解か否かわからないまま進めていくわけだから。でもプレッシャーよりも、せっかく与えられた機会を楽しもうという気持ちのほうが大きかったかもしれない。

竹内:私もあまりプレッシャーは感じてなくて、それはきっとPANTAさんの音楽に対するオープンな姿勢を感じていたからだと思います。この茂BANDも凄くオープンにやらせてくださるので、私はただ楽しみながら自由に、作曲家の意向を大切に演奏すればいいのかなとレコーディングに臨みました。プロデューサーでもある岡本さんに「こんなフレーズはどうですか?」「この音色はどうでしょう?」と随時伺いつつ。

──レゲエ調の「泣かせてくれよ」のサックスは、岡本さんから「もうちょっと田舎っぽく」というリクエストがあったそうですね(笑)。

岡本:そう、ちょっと都会すぎたので(笑)。

竹内:そう言われましても私は都会出身ですから(笑)。でも岡本さんがそうおっしゃるということは何かポイントがあるんだなと思って、何のことだろうと考えた末に「ああ、ここか!」という要所が一つあって、音数や音の選び方の部分で岡本さんの求める田舎っぽさを掴めたんです。

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──アルバム全編を通じて言えることですが、こんぶさんの奏でる管楽器の音色が楽曲の表情をより豊かにしていますね。下山(淳)さん作曲の「だろ」は粗暴さや怒気を強めるのに猛り狂うサックスが不可欠だし、同じく下山さん作曲の「月夜のブルース」は野良猫との追憶や喪失感を際立たせる上でフルートの柔らかい旋律が大事なアクセントになっていますし。その辺りは共同プロデューサーを務めた下山さん、岡本さんと意見交換しながら進めていった感じですか。

竹内:「ここにこんな音があるといいな」といったことを伺いつつ、その中身はわりと自由にやらせていただきました。特に譜面があったわけでもないので、「ここはギターをなぞってもらえると嬉しいかな」とかちょっとずつエッセンスをもらいながらフレーズを決めていきました。

──かなりいろんな楽器を使っていますよね。

竹内:そうですね。ソプラノサックス、テナーサックス、バリトンサックス、フルートと使い分けて。

── 一方の梶浦さんですが、「穴の開きまくりアナーキー」は梶浦さんの叩くマーチングドラムによってアイリッシュトラッド調の方向性が決まったそうですね。

梶浦:あの歌詞を読んでみたら応援歌っぽいなと感じて、そしたらサッカー場で大歓声が沸き起こるような風景が頭に浮かんだので、どう音を組み立てればいいかなと考えてね。

──「穴の開きまくりアナーキー」と同じく茂さん作曲の「太陽」も応援歌っぽい曲調ですね。

梶浦:励ましの歌という意味ではね。「泣くんじゃねぇ」にもそういうニュアンスがあると思うけど。PANTAさんの詞が茂のキャラクターとマッチしたところもあるよね。しょぼくれてないで立ち上がれよ! いいからやれよ! みたいな、聴き手を励ますようなところが茂の歌にはあるでしょう。

仲野:今回は「どんなリズムで叩けば茂BANDっぽくなるか?」って部分で梶浦が引っ張ってくれたのは大きかった。「普通じゃない何か」みたいなのが梶浦のテーマとしてあって、それが「穴の開きまくりアナーキー」のイギリスのサッカー場でフーリガンが大合唱するみたいな曲調につながったり、「太陽」の応援歌的リズムにつながったり、面白い化学変化を起こしてくれた。そのイメージの近さや共感できる部分っていうのは同世代ならではのものだと思う。こんぶちゃんは凄く若いけど、俺はどうしても同世代のメンバーを揃えたくなっちゃう。PANTAはプロデュース能力も高いから、こんぶちゃんや(澤)竜次みたいな若いメンバーと一緒にバンドをやれるけど、俺は曲のイメージやビート感を共有する上で同世代っていうのがやっぱり大事でさ。それは亜無亜危異の頃からバンドがずっと同級生だったからだろうね。

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仲野茂BAND『に』

発売日:2026年2月21日(土)
本体価格:¥3,630(税込)
商品番号:BPU-020
レーベル:不二山レコード
発売元:MAHLER'S PARLOR
ディスクユニオン、タワーレコードなど全国のCDショップ、Amazonオンラインショップにて販売

【収録曲】
1. 穴の開きまくりアナーキー(作詞:PANTA|作曲:仲野茂)
2. だろ(作詞:PANTA|作曲:下山淳)
3. 泣くんじゃねぇ(作詞:PANTA|作曲:伊藤雄和)
4. 太陽(作詞:PANTA・仲野茂|作曲:仲野茂)
5. 泣かせてくれよ(作詞:PANTA|作曲:岡本雅彦)
6. 奇妙な圧力(作詞:PANTA・仲野茂|作曲:仲野茂)
7. 金科玉条(作詞:仲野茂|作曲:下山淳)
8. 月夜のブルース(作詞:PANTA|作曲:下山淳)
9. Fury(作詞:仲野茂|作曲:下山淳)

【仲野茂BAND】
仲野茂(Vo)/ 下山淳(Gt)/ 岡本雅彦(Ba)/ 梶浦雅弘(Dr)/ 竹内理恵(Sax/Fl)
【ゲスト】
石塚俊明(頭脳警察)/ おおくぼけい(頭脳警察|アーバンギャルド)/ うつみようこ
【ジャケット題字】
三代目魚武濱田成夫

LIVE INFOライブ情報

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GOLD SOUNDZ
【日程】2026年3月13日(金)
時間】開場19:00 / 開演19:30
【料金】前売¥5,000 / 当日¥5,500(共にドリンク代別)
イープラスにてチケット発売中
【会場・問い合わせ】新宿red cloth 03-3202-5320
 

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ROCK the ROCK!!
【日程】2026年3月28日(土)
【時間】開場18:00 / 開演18:30
【料金】前売¥4,000 / 当日¥4,500(共にドリンク代別)
ぴあローソンイープラスにてチケット発売中
【会場・問い合わせ】名古屋・池下CLUB UPSET 052-763-5439
 

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仲野茂BAND ワンマンライブ 2026『一新』
【出演】仲野茂BAND
【日程】2026年4月5日(日)
【時間】開場18:00 / 開演18:30
【料金】前売¥5,000 / 当日¥5,500(共にドリンク代別)
ローソンチケットにてチケット発売中(Lコード:72999)
【会場・問い合わせ】渋谷La.mama 03-3464-0801
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