「茂、もう一度ちゃんと歌詞を書いてみろよ」とPANTAに言われた気がした
──頭脳警察50周年バンドでは、サックスに関してPANTAさんからどんな指示があったんですか。
竹内:「こういうニュアンスで」と言われるときにミュージシャンの名前が挙がるくらいで、具体的な指示はそんなになかったですね。ただ、ここぞというときに思いきり激しく吹くとPANTAさんが嬉しそうに笑うんです。その笑顔を引き出そうと若手メンバーでこぞって競い合っていました。
──こんぶさんがあの数年間でPANTAさんから学べたのはどんなことですか。
竹内:カルチャーに対する好奇心とリスペクトの深さですね。どれだけ体調を崩されても変わることなく最新の音楽やアニメ、ゲームや小説を貪欲に吸収されていたし、自分もそうありたいなと思わせる魅力がありました。もちろんPANTAさんの声やギター・プレイの素晴らしさは言うまでもないことですが、一人の人間として最新の文化に対して好奇心を抱き続ける姿勢には感銘を受けましたね。
──茂さんへ託された歌詞の中で、とりわけPANTAさんらしいとこんぶさんが感じたものは?
竹内:どれもPANTAさんらしいですけど、「太陽」は茂さんに向けた感じがよく出ていると思います。「太陽になれ 太陽であれ」という歌詞は茂さんに宛てた手紙のようにも思えて。あと、「泣くんじゃねぇ」は茂さんが唄う姿を想像しながら書かれている気がしましたね。
──梶浦さんはPANTAさんの遺稿6篇を読んでどう感じましたか。
梶浦:全般的にPANTAさんが目指した世界というか、同じような境遇の人間に向けて「そんなことは気にするな! 立ち上がれ!」と前へ一歩踏み出すことを促す歌が多いよね。ご自身の病気のこともあったから「俺のことで悲しむんじゃねぇよ! お前はまだやることがいっぱいあるだろ?!」という茂へのメッセージがテーマとしてあるように感じた。
──大切な人が今はもうここにいないという拭いきれぬ喪失感を描いた歌詞が多いし、「穴の開きまくりアナーキー」で「どうすんだい 人生はまだ続く」という歌詞を余命幾許もないPANTAさんが書いたことの重みをつい考えてしまうんですよね。
梶浦:「人生はまだ続く」と信じたい気持ちもあっただろうし、「人生がまだ続く」誰かに思いを託したかったのかもしれないし、そこは複雑に絡み合っているんだろうし。俺が凄いなと思ったのは「月夜のブルース」で、野良猫に拾ったビスケットをあげたという歌詞なのに、あんなにロックっぽい歌になるのはまさにPANTAさんならではだなと思って。
仲野:それはやっぱり「あとで食おうとおもったのによ」っていう一行が効いてるんだよ。あんなに正直な歌詞は俺には書けないし、どう考えてもPANTAにしか書けない。
梶浦:凄いよね。その正直さがリアルなんだよ。
仲野:そう、そのリアルさがロックなんだよね。
岡本:僕が高校のときに読んだインタビューでPANTAさんが言ってましたもんね。「必殺の一行があれば後は何でもいいんだ」って。
仲野:俺は「あとで食おうとおもったのによ」が必殺の一行だと思ったけど、下山が必殺の一行と思ったのは最後のサビの「人生わからねえもんだろう」なんだよ。俺は譜割りが難しいからそこを削ろうと思ったのに、下山は「絶対に入れろ!」と捨てずに拾おうとするわけ。一つネタばらしをするとさ、「月夜のブルース」は俺がちょっとだけ歌詞を変えたんだよ。「おまえに会いさえしなければ」の「おまえに」を「おまえを」に変えて「おまえを愛さえしなければ」にした。「に」を「を」に変えただけで「会い」が「愛」に変わったわけ。
梶浦:あそこはよくできてるよ。素晴らしい。
仲野:岡本ちゃんはPANTAの歌詞に実直でありたいってことで「泣かせてくれよ」を作曲してくれたけど、俺は「月夜のブルース」に関しては少し変えたかった。マネージャーの田原さん(マーラーズパーラーの田原章雄)と相談しつつ、ちょっと変えてもPANTAなら怒らないと思ったし。「に」を「を」に変えただけでニュアンスが変わって、最後の花を摘んでくる場面まで物語の辻褄が合う気がしたから。だからPANTAの歌詞が俺に力を与えてくれたっていうか、「穴の開きまくりアナーキー」じゃないけどさ、「どうすんだい? どうなんだい? 茂、お前はこの歌詞をどうすんだい? どう唄うんだい?」ってPANTAに問いただされてる気持ちになった。「茂、もう一度ちゃんと歌詞を書いてみろよ。歌詞を作る楽しさをまた味わってみろよ」と言われる気もしてさ。それでずっと悩んだ挙句、岡本ちゃんとは真逆で俺はPANTAの歌詞を自分なりに変えてみたわけ。
──「太陽」と「奇妙な圧力」の作詞クレジットにはPANTAさんだけでなく茂さんのお名前もありますが、これは「月夜のブルース」のように言葉を補ったというわけですか。
岡本:PANTAさんとの共作といった感じですね。
仲野:「奇妙な圧力」に関して言うと、最初のタイトルがまさに「奇妙な果実」で、歌詞もそれっぽい感じがあった。でも俺が今さらビリー・ホリデイを唄っても様にならないし、半分以上の歌詞を自分で書くことにした。「世の中うごめく変な気がある」以降の後半の歌詞は全部俺。
──そうだったんですか。全編PANTAさんによる作詞と聞いても納得してしまうクオリティですね。
仲野:俺がどれだけPANTAから影響を受けたと思ってるんだよ?! 今までPANTAの歌詞をめっちゃパクってきたんだからさ(笑)。
梶浦:それが一番のネタばらしだよ(笑)。
















