今の仲野茂BANDは奇跡のバンド
──ぼくが個人的に凄いなと思った歌詞は「穴の開きまくりアナーキー」に出てくる「アジャッパー」なんです。まさか伴淳三郎のギャグがロックの歌詞に当てはまるなんて思わないじゃないですか(笑)。ところが茂BANDの至高のアンサンブルにのせて茂さんが唄った途端に紛うことなきロックになる。それがとても不思議で。
仲野:「アジャッパー」は田原さんですら困惑してたからね(笑)。PANTAも自分で唄う曲では使わない言葉だったと思うよ。
──病床で6篇の歌詞を書き上げただけでも凄いことなのに、「アジャッパー」というまるでロックに似つかわしくない言葉を使っても茂ならうまく唄ってくれるはずだというPANTAさんの慧眼には感嘆しますね。
仲野:そうなんだよ。アルバムの完成を下山以上に見えていたっていうかさ。「だからお前に託したぜ」ってPANTAに言われてる気もしたし、今回はホントに贅沢な思いをさせてもらった。
──仲野茂BANDのメンバーを手繰り寄せたのも、もっといえば“不完全復活”した亜無亜危異をあのタイミングで休止させたのも宇宙の彼方からPANTAさんが手ぐすねを引いた結果なのではないかと思わず勘繰りたくなるんです。『に』のような素晴らしいアルバムを聴くと余計にそんなことを感じてしまうんですよね。
仲野:俺は運命論者じゃないけど、人と人のつながりや巡り合わせっていうのは時空を超えた何かによって引き寄せられてる気はするね。もっと単純なことを言えばさ、こんぶちゃんも梶浦も下山も岡本ちゃんも俺もPANTAのことが大好きなんだよ。それに尽きる。手前味噌だけど、みんなPANTAのことが大好きだからこそこんなにいいアルバムを作れたんだと思う。
──歌詞も素晴らしい出来なのですが、バンドのアンサンブルの妙が存分に楽しめることもちゃんと言い添えておきたいですね。歌を立てつつ各パートの個性が際立っている理想のバランスだと思いますし。
仲野:さっきも言ったようにこんぶちゃんの腕とセンスは見事だし、岡本ちゃんのベースラインはどの曲も格好いいし、あとやっぱり下山のテンポ感が最高なんだよね。「Fury」と「金科玉条」は遅くもなく速くもないテンポが絶妙だし、「金科玉条」の途中でカオスなブリッジを入れてくるセンスも凄い。梶原の跳ねるドラムも俺には新鮮で、今の茂BANDでは重要なポイントなんだよ。
梶浦:跳ねてるか跳ねてないかは自分じゃわからないけど、自分のドラムのテーマとしていつもあるのはいくら落ち着いてもリズム感を落とさないこと。歳と共に落ち着かなきゃいけないし、若い頃のように疾走ばかりしてちゃいけない。だけどそこで落ち着いたリズムではなく、落ち着いてもスピード感を落とさない。落ち着きながらも疾走感を維持するのが大事なところで、それが俺の永遠のテーマなんだよね。死ぬまで体得することはできないかもしれないけど。
仲野:歌もそうだよ。歳をとるとどんどん後ろへ行ってかったるくなる。後ろで唄っていいのは原田芳雄だけだから(笑)。
岡本:僕の場合はちょっと違って、ホントは落ち着きたいけど落ち着けてないって感じですね。
仲野:それが岡本ちゃんのベースのいいところなんだよ。もっと落ち着きのないベーシストがいるからね、奈良さん(サンハウス、シーナ&ロケッツの奈良敏博)みたいに(笑)。まあ、前の茂BANDを野島健太郎と一緒にやったのは、奈良さんが入ってくれるのが条件だったからなんだけどさ。俺にとってNo.1ベーシストはずっと奈良さんだったけど、この『に』を作れたことで岡本ちゃんが抜いて第一位になった。
──それはたとえば「泣くんじゃねぇ」のベースラインを聴けば、この記事を読む方も納得すると思います。
梶浦:凄いよね。「泣くんじゃねぇ」は録る前にライブでやっていた曲だけど、レコーディングしたときに一番良くなった。さらに言えばレコーディングした後のライブでもっと格好良くなった。あんな経験は初めてで不思議だったね。普通はあのライブ感の良さがアルバムになるとなぜ出せないんだろう? みたいな感じでこじんまりとするものなんだけど、つまりは試行錯誤の末に無駄なものを削ぎ落とせたからなんだろうね。
仲野:そこはみんなの経験値の高さの賜物だろうね。若い頃はレコーディングに120%の実力を出したいけど、ホントは80%くらいで充分なんだよ。残りの20%を若い時期は取っておけないけど、今はその余裕があるっていうかさ。
梶浦:今回は時間がないことが功を奏した部分もあって、事前に構築したものを細部にわたって再現する時間はなかったけど80%の力で最大限のベストを尽くすことができた。ヘンにこねくり回す時間がなかったぶん、それぞれが思う曲の一発目のイメージをどんどん出し合って、それをうまく一体化できたところがある。
仲野:PANTAからいい歌詞をもらった以上、ヘタなものは作れねぇぞ! ってところでバンドがまとまったよね。
──実のところ、PANTAさんが彼岸から此岸へ向けてこのアルバムをプロデュースしていたのかもしれませんね。
仲野:いいこと言うね。俺もPANTAに言われてる気がしたよ。「どうだ茂、レコーディングは楽しいだろ?」ってさ。今の茂BANDは奇跡のバンドなんだよ。みんな現役で残ってて、こうして刺激的なバンドをやれて、こんなにいいアルバムを作れてさ。
──PANTAさんがこの『に』を聴いたら、どんなことを言うと思いますか。
仲野:「なあ茂、3作目はどうするんだ?」って言うんじゃないかな。PANTAは常に次の作品のことを考える人だと思うから。さっきこんぶちゃんも言ってたように、音楽に対する好奇心が人一倍強い人だったしさ。
竹内:これもやりたい、あれもやりたいって意欲がいつ何時でもある方でしたからね。
仲野:「次のアルバムはお前らで作るしかないぞ!」って言われそうだね。だから仲野茂BANDはまだこれからだよ。『に』を通じて頭脳警察の凄さを改めて世に知らしめたいし、それが俺たちなりのPANTAへの恩返しって気持ちもある。まあとにかく面白いバンドだよ。メンバーみんなカテゴライズされたくないと思ってるから何でもできるし、まだまだやるよ。PANTAの歌詞の通り、「人生はまだ続く」んだからさ。
















