crowzet(加藤慎一 from フジファブリック)がワンマンライブ『WALK IN crowzet vol.2』を10月5日に新宿LOFTで開催する。
加藤慎一は中学生の頃、ビリー・シーン(MR.BIG)に憧れてベースを手に取り、地元の石川県でCHEETA(中ノ森BAND)らとともに活動。上京後、つるの剛士率いるバンド、太陽の衝動のベーシストを約3年間務めた。時を同じくして、知人の紹介で志村正彦らと出会った加藤。フジファブリックのメンバーとなった彼は、2004年にメジャーデビューを果たした。
2025年2月、フジファブリックは活動を休止。加藤は4月に新プロジェクト・crowzetをスタートさせ、6月に初ライブ『WALK IN crowzet vol.1』を開催した。Rooftopでは新宿LOFTワンマンを控えた加藤にインタビュー。crowzetの活動方針、ライブへの意気込みなどを語ってもらった。(Interview:安部孝晴)
開けたらいろいろ入ってるよ
──フジファブリックの活動休止前最後の公演『フジファブリック LIVE at NHKホール』はいかがでしたか?
加藤:いろいろ思うことはありながらも、ちゃんと一つのライブとして成立させないといけないので、まずはお客さんたちにしっかり聴かせようという気持ちで弾いてましたね。
──本公演のあと、crowzetの準備を進めていったんですか?
加藤:はい。具体的に構想が固まったのは4月でした。プロジェクトの名前が決まったのもその頃です。“クローゼットのように、開けたらいろいろ入ってるよ”という思いを込めて名付けました。
──いろいろな編成で、いろいろな楽曲が制作されるということでしょうか?
加藤:そうですね。crowzetでは何をやってもいいので、自由に作ってみようと思ってます。
──クローゼットのスペルは「closet」ですが、あえて「crowzet」にした理由は?
加藤:そのほうが検索しやすいし、カラス(crow)とアルファベットのZ(zet)でグッズとか作れそうなので(笑)。もっとカッコいい由来を用意しておいたほうがいいですかね?
──いやいや、現実的で説得力のある由来だと思いました(笑)。
加藤:よかったです(笑)。
そこに隙間があったから
──リリース前ですが、新曲の音源を聴かせていただきました。レコーディングはサポートメンバーを交えて実施されたんですか?
加藤:今回参加してもらったのは、ボーカルの方だけですね。伴奏トラックは僕が一人で作りました。
──ベースだけでなく、ギターや鍵盤も加藤さんが?
加藤:全部弾きました(笑)。ドラムは打ち込みです。
──そうだったんですか!
加藤:crowzetの最初の1曲なので、まずは自分でやる必要があるかなと思って。
──加藤さんの作曲方法について、詳しく教えてください。
加藤:メロディは、ギターや鍵盤でコードを弾きながら作ります。フジファブリックの3rdアルバム『TEENAGER』の頃からDTMを始めて、コード、リズム、仮歌を重ねたデモを提出するようになって。メンバーの手癖を意識して作ることもありました。金澤ダイスケさんは「俺、こんなふうに弾かないよ」とか言ってましたけどね(笑)。
──ベースを録るタイミングは?
加藤:音をいろいろ重ねたあとです。DTMの場合でも、バンドの場合でも、ほかの楽器のフレーズを聴いたうえで、ベースがどういうアプローチをするべきか考えます。
──フジファブリックの楽曲を聴いていると、要所要所でメロディックなベースラインが耳に飛び込んできますが、それらは最後に入れ込まれたものなんですね。
加藤:たぶんそこに隙間があったから、そういうフレーズで埋めたんだと思います(笑)。
──作詞に関してはいかがでしょうか?
加藤:趣味の読書でインプットされた語彙が、歌詞に生かされてますね。作詞を始めた頃は3日に1冊くらいのペースで小説を読んでいて、知らない言葉があったら読み飛ばさず、意味を調べるようにしてました。
──加藤さんは怪談師としても活躍していますが、作詞と怪談に相互作用などはありますか?
加藤:どうなんですかね? 作詞と怪談、一旦文字に起こして構成を整えるという点においては似てるのかな。つながりがないようであるし、あるようでない(笑)。基本的に僕の軸は音楽にあって、怪談は癒しみたいなものです。
──crowzetの作詞作曲は、今後も加藤さんが手がけていく?
加藤:しばらくはそのつもりですが、共作とかもやってみたいなと思ってます。誰かがcrowzetに曲を書いてくれたら「いいね」って言っちゃうかもしれない。あまり制限をかけず、面白いものを作っていきたいです。
一緒に音を出すと距離が近付く
──6月には初ライブ『WALK IN crowzet vol.1』が開催されました。
加藤:crowzetのライブでは、流れを自分で作らないといけなくて。ステージの中央に立って、MCもやる。これからまだまだ面白くしていこうと思ってます。何をやってもいいプロジェクトなので、僕がメインボーカルを担当する瞬間もあるし、お楽しみに! という感じです。
──crowzetを始めてから、ベースの音作りに変化はありましたか?
加藤:音作りは……高校生の頃も、フジファブリックに入ってからも、ずっと試行錯誤してまして。まだ正解は見つかってないですね。最近はアンプを持ち込まず、ライブハウスの機材だけで演奏することもあります。“そこにあるものだけでやる”というのも、それはそれで面白い。
──バンドメンバーは公演ごとに替わるんでしょうか?
加藤:そうですね。みんな忙しいので、スケジュールが合う方にお願いしてます。次のライブ『WALK IN crowzet vol.2』には北澤ゆうほさん、ONIGAWARAの竹内サティフォさん、UNCHAINの谷川正憲さん、JINGRANGのオヤイヅカナルさん、HYUKOHのイ・インウさん、ほのんさんが参加してくれる予定です。
──加藤さんと共演歴がない人もいますね。
加藤:昔から知ってる方もいるし、初めてお会いする方もいます。初対面でも、一緒に音を出すと距離が近付くので楽しいです。
──リズム隊の相方となるイ・インウさんは、どんなドラマーですか?
加藤:彼とは去年仲よくなって、ライブを何度か観させていただきました。今回のワンマンのために、韓国からわざわざ来てくれます。
──バンドのグルーヴを生み出す際、ベースとドラムの相性が重要になってくるかと思いますが、フジファブリック時代も含め、さまざまなドラマーと合わせる中で、いつもどのような点に気を配っていますか?
加藤:一つ指針にしてるのは、クリックを聴く位置です。メトロノームの「ピ、ピ、ピ、ピ」という音に対して、ドラマーがどこで叩くのか。それを察知して合わせるようにしてますね。
──いわゆる前ノリ、後ノリのようなフィーリングの傾向をまずは把握すると。
加藤:はい。ドラムの場所を知ったうえで、楽曲が心地よく聴こえるタイミング、ボーカルが歌いやすいタイミングを考えながら弾いてます。その調整が難しいとかは全然なくて。音合わせをするのが毎回楽しみです。
新宿LOFTを噛み締めながら
──10月5日には『WALK IN crowzet vol.2』が、新宿LOFTのオープン50周年を記念したイベント『SHINJUKU LOFT 50TH ANNIVERSARY PRE-EVENT SINCE 1976』の一環として開催されます。
加藤:新宿LOFTは故郷というか、家というか……なんて言ったらいいんですかね(笑)。地元じゃなくて……古巣? いつ行っても安心できる場所です。
──Rooftopの過去記事によると、フジファブリックは2001年11月から2004年10月までの3年間で、新宿LOFTに28回も出演したようです。
加藤:当時は毎月のように出させていただいてましたね。今でも新宿LOFTでライブをすると、帰ってきた! という気持ちになります。昔から変わらず気にかけてくれる樋口寛子さん(フジファブリックの活動初期を支えた新宿LOFTスタッフ)もいて。
──逆に、昔と比べて変わったなと感じる点は?
加藤:間口が広がったところかな。新しい出演者さんを増やして、時代の流れにうまく対応されてるなと思います。変わらない部分と変わる部分、ちゃんと両方ある。
──『WALK IN crowzet vol.2』を新宿LOFTで開催することについて、どんな思いがありますか?
加藤:いつかはcrowzetで新宿LOFTに出たいと考えてたら、こんなに早く実現して、とてもうれしいです。古巣を噛み締めながら演奏しようと思います。新曲も、カバーも、いろいろ盛り込まれてるので、前回のライブを超える爆発力が生まれるんじゃないかな。
──最後に、今後の展望をお聞かせください。
加藤:ツアーを開催して、東京以外の街でもライブがしたいですね。地元にも行きたいな。目標は……石川県観光大使にしましょうか(笑)。あとは、とりあえずたくさん曲を作ってみて、プロジェクトの方向性をちょっとずつ定めていけたらいいかな。新人バンドを発掘して、ベースを弾いたり、プロデュースをしたりするのも楽しそうですね。
──crowzetは基本的に自由なプロジェクトだと思いますが、もし一つだけルールを決めるとしたら?
加藤:うーん……なんだろう……携わってくれる人たちが悪いことをしなければそれでいいかな(笑)。